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「……確かにグレイの言うとおりだ、俺にも甘さがあった。全員に謝罪する、すまなかった。」
班員達ももうアリエッタを責める気は無くなったようだ。
「フン、このことはコンポール家にあとで正式に抗議してやる。このボクを危険に陥れたことを後悔するんだな」
空気を読めない例外はいるが。
「テメーは何もやってなかっただろこのモヤシキノコ!」
「な、何を!もともと貴様らが全力を持ってボクの為に一晩中警戒をするのは当たり前だろう!」
「……もういい、反省会はこれで終わりだ。明日も早い、寝るぞ」
ジャミルはアリエッタの方を向く。
「……罰として朝までしっかりと見張りをすることを命じる、何かあれば直ぐ大声で知らせろ」
アリエッタの顔が明るくなる。
「は、はい!」
「……グレイ、異論は?」
「無いさ、もう失敗を繰り返すことはないだろう。むしろ前よりも信頼できる」
ベッドへ行こうと立ち上がったグレイにハシントが駆け寄る。その目には以前のような挑発的な意志が感じられない。
「先輩!さっきはマジで助かったっス。気が触れたかとか言ってすいませんでした!ありがとうございました!」
「それは気にしていない、だが何があっても戦いの中で硬直しないことだ。止まれば敵のいい的となる」
「これから気をつけます!ありがとうございました!」
「ああ」
感謝の言葉を述べるハシントを見てアリエッタも慌てて駆け寄ってくる。
「す、すいません!助けていただいたのにお礼も言っていませんでした!ありがとうございました!そ、それに」
顔を真っ赤にしてついさっき履き替えた下着とスカートをもじもじとさせる。
「……よ、汚してしまってごめんなさい」
あの状態で誰かに抱きつけば、多少なりともその対象にもついてしまうのは必然であった。
「ははっ、問題ないよ。もう気にするな」
別に謝られる程のことではない。今回の事で周囲からは尊敬の眼で見られるようになった、少し気恥ずかしい。
「それにむしろ役得だったな」
可愛い女の子に抱きつかれることに不満のある男はほぼいない。そして恥ずかしがる顔もまた悪くない。多少ついたものはあるが、まあ可愛い女子のものならば歓迎だ。男のならば即刻燃やすだろうが。
「ふえ!?」「「「「!?」」」」
迷い無く言うグレイにアリエッタは固まり、周囲の尊敬の視線は即座に奇怪なものを見る視線へと変っていく。
「ん?どうしたんだ?……まあいい、寝る」
奇妙な視線を受けながらも再びベッドへと歩いていく。。
「……わざわざ全員の緊張をほぐす為に、すまないな」
ジャミルが周囲に聞こえないように話しかけてきた。
「何のことだ?」
「……自分を貶めてまで班の為に尽くすとは」
「ん?いや、本当に何のことだ?」
何を言っているのか皆目見当が付かないが。
「……まさか本心か?」
「何がだ?」
「……いや、もういい……。今日は助かった。ゆっくり休んでくれ」
「ああ、そっちも良い夜を」
ジャミルの話はよく分からなかったがまあいい。ベッドに入るとさすがに疲れていたのかすぐに意識が消えていった。
「……ライン」
「ほいさ」
ジャミルは見る。協調性もなくただ喚きたてるリードを、これだけの騒ぎの中ずっと鼾をかき眠り続けるサッカを、そしてグレイを。
「……魔法学部の奴等はよく分からん」
「同感だぜ」




