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4-10


 何とか全員が落ち着いたところで(サッカのみ爆睡中)ジャミルがランプの周囲に集まるように告げた。

「……さて、それでは今からやらなくてはならないことがある」

「何を?」

「……状況の確認、そして反省会だ」

 きつい口調で言うジャミルに班員の顔に再び緊張が浮かぶ。

「……アリエッタ=コンポール、当時刻はお前が見張りをしていた筈だな。」

「は、はい」

「……だが俺たちはお前の声ではなく悪魔の悲鳴によって敵襲に気がついた。さらに言えばその悪魔に刺さっていたのはグレイの武器だった。これはどういうことだ?」

 刺すような視線がアリエッタに集中する。アリエッタは半泣きになりながら頭を思い切り下げて謝る。

「す、すいませんでした!どうしても眠くなっちゃって、気がついておきたら悪魔が目の前にいて!ひ、ひぐ……」

 その状況を思い出したせいか体を震わせるアリエッタ。

「……つまりお前は任務を放り出して眠りこけていたわけだな」

「は、はい」

 ジャミルが珍しく怒気を露にして捲くし立てる。

「何のための見張りだ!グレイが気づいたからよかったもののお前のせいで全員の命が危険の晒されるところだったんだぞ!任務を舐めているのか!」

 ここぞとばかりに他の班員も叩く。

「チッ、テメエのせいで危なかったんだぞ!」

「……怖かったよねお兄ちゃん」「……うん」

「この低脳が!貴様のせいでこのボクに何かあったらどうするつもりだったんだ!」

「眠いのはわかりますが、任務はしっかり果たすべきですね」

「ごめんなさい!ごめんなさい!」

 涙目で何度も何度も頭を下げ謝るアリエッタだが周りからの視線は冷たい。この場の空気は大分良くないものだった。

パンッ!

 手を叩く音が響き全員の視線が集まる。手を叩いたのはグレイ。

「まあみんな落ち着け、ともかく全員怪我も無く無事だった」

「だがもし誰かが死んでいたら!」

 他人の責任を追及するのは怒っているように見えて実はその陰で自覚も無く楽しんでいるのだ。

「ふん……たら。れば。それは全て仮定の言葉だ。様々な理論の推測としてならば突き詰める価値があるだろうが十分反省をしている者を責め続けるのに用いるのは俺はあまり好まん。現実として俺達は無事であり訓戒は得たが失ったものは無い。確かに居眠りは褒められる行為ではないが、見ろ。彼女はすでに涙を流し反省している、これ以上何を望むんだ?」

アリエッタに罵声をあびせていた班員がばつが悪そうに視線を逸らす。

「そしてジャミル、班長である君にも責任が無い訳でもない」

「……何?」

「今回の事態は予測できていなかった訳ではない。それなのに2年のみに見張りを任せるよう決定をしたのは君だ」

 実際今回本当に悪魔が襲ってくる可能性は低かった筈ではあるしジャミルにそれほど過失は無かったと思う、悪魔が襲ってこなければ。だが実際に起こってしまったことでその中で何かのミスがあればその責任はリーダーにも追及しなければならない。

「待ってください!」

 グレイの言葉にトニーが不満な表情を浮かべて言う。

「先輩は自分たちを信用しないんですか!」

 同調するような鋭い視線が集まってくる。

「ああ」

 そのとおり、迷う事無く断言できる。

「なんで!」

「何故かって?ははっ、当たり前だろう。君たちの人間性がいかに誠実か、優れているかなんてそんなこと知ったことでは無い。そんなことよりも重要なファクターは君たちが今回初陣の2年生であるということだ」

 言ってしまえば当たり前の事だ、そんなに難しい話でもない。

「考えても見ろ。君たちは新兵だ、まだなにも経験が無い新米だ。どんな真面目な者であれ優秀な者であれ初めて行うことを完全に任せられるか?絶対に失敗しないと断言できるのか?俺にはできない。俺自身も初めて行う作業を完璧に、少しのミスもなくできるかと聞かれてYESと答えられる自信なんか無いさ」

「だからといって失敗は!」

「言いたいことはわかる。だが失敗こそが成功の本質だと俺は思う。成功とは失敗しないよう行われて為された成果だ、失敗の無い成功は再びそれを行う際高い失敗のリスクを秘めることとなる。ならば今回はどうかな?2年が失敗してもいいように保険をかけていれば良かったんだ、二人組みにするなり3年が起きているなり、そうすれば2年は経験を積み全員が安全を得ることが出来た」

 全員静まりかえっていたがややあってジャミルが口を開いた。


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