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チャイムの音が鳴りようやく退屈な授業から開放される。
「うーむ、授業というのは実に退屈だ。そう思わんかグレイ?」
腕を組みながら話しかけてきた前席に苦笑いを浮かべ返す。
「お前はずっと弁当食っているだけだっただろ」
「何?あれは間食だ!弁当はまだだぞ失敬な、1限から弁当を食うやつがいるか!」
目の前にいる。あの量を間食とは普通言わないだろう。
「……相変わらずお前の食生活は面白いな」
「ふっ、そう褒めるな」
褒めてなどいないのだが……こいつに突っ込みが効かないのはすでに分かっている、古い付き合いだ。まったくもって面白いやつではある、傍から観察する分には。
「ふはははは!次は3年になって初めての実習、腹ごなしはすんだし腕が鳴る!」
「ああ、自分としてはあまり好きじゃないんだがな。ここの実習は」
「ふははははは!よいではないか実習!女子の体操服姿が拝めるしな。実習万歳!学校とは素晴らしいものだ!」
「……まあそこは否定しないが」
否定はしない。自分も男である。しかしながらサッカ、お前の大声で周囲からの視線が痛い。
視線から逃れるようにそそくさと移動することにする。
魔法実習室、これは部屋の内壁に極めて丈夫かつ安定性の高い金属を隙間無く貼り付け、さらには防音、振動を吸収するクッション材をふんだんに使い建造された施設であり部屋の中で魔法が使っても外部に被害がでないように設計されている。
「では出席番号順に前へ来て下さーい、カードを配りまーす」
実習担当であり担任でもある少々間延びした声が部屋に響く。
グレイも他の生徒に習い列に並ぶ。
「今日は基礎魔法の復習を行いまーす」
カードを配りながら授業の説明をする。
「え~、これまで君たちが習ってきた基礎魔法をおさらいしてみたいと思いまーす、今日は今学期初めての授業ですのでウォーミングアップのようなものですねー。それではまずは火の魔法から始めましょう、それでは皆さんカードを見てくださーい」
カードには丸い火の玉を描いた絵と呪文が記されていた。