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ガラガラガラと車輪の音が鳴る、整備された石畳の道であっても馬車は多少なり揺れるものだ。見渡す限りの平原、ちらほらと木は立っているがなかなか単調な景色が続く。
出発前にジャミルは暫く考えたが結局次のように馬車の人員を振り分けた。
馬車A 御者ジャモル、他にハシント、アリエッタ、グレイ、リード
馬車B 御者ロッジ、他にトニー、サダリア、マルカ、サッカ
斥候 ライン
馬車Aではリードに対し喧嘩を吹っかけないような人員をあてているのが見て解る。隊列としては斥候役のラインが先頭に立ち次いで馬車B、殿を馬車Aが務める。
馬車Bでは和気藹々として会話が弾んでいた。
「マルカちゃんは本当にお兄さんにそっくりねぇ」
「えへへ、昔からよく言われるのー、小さいころは髪型も同じだったからよく間違われたの」
「ふはははは!今でも鬘をかぶったら解らないのではないか?」
「えへ、そーかなー」
「しかし双子で騎士学部というのも珍しいですね」
「確かにねえ、二人とも騎士としての適正があるなんて偶然にしても出来すぎね」
「うちはお父さんも騎士なの。だからかなぁ?」
「ふーむ、確かに親が騎士や魔術師だとその子供も適正を持ちやすいとは聞いたことがあるな」
「へえ、さすが魔法学部ね。そんな授業もするのね」
「ふはははは!まあ殆ど授業は聞いていないがな!」
「ええ!?サッカ先輩はテストどうしてるんですか?」
「おお!グレイに頼めば出そうなところを大体教えてくれるからな!」
「グレイさんとは仲がよろしいんですね!」
「ふはははは!そうだな!何か気が合う、というよりも何かが上手く噛み合ってる感じだな」
「うーん、確かにサッカさんとグレイさんは雰囲気がちがいますよねー。」
トニーの言葉にサッカは表情を少し歪める。
「ふん、あいつは何考えているのか正直よくわからん時がある……だが約束は破らんし身内には真摯で信頼が置ける奴だ」
「ふふっ」
「どうしましたサダリア先輩?」
「いいわね男って、女同士だったら悪口に聞こえちゃいそうなところよ」
「うん、何かカッコいいねー。でも2人とも似ているトコがあるよー」
そう言うマルカに訝しげな顔を向ける。
「ぬうう?どこがだ?」
「とても魔術師に見えないとこ!」
「ぷっ」「ふふっ」「ぬおっ!?」
元気よく言い放つマルカにトニーとサダリアは思わず吹きサッカはいかにも心外だ、という表情を浮かべる。
「ふふふっ、た、確かに二人とも」
「ぷっ、普通どう見ても騎士部か一般兵科の戦士にしか見えませんね。」
「な~~~に~~~~?見ろ!この漆黒のローブを!見ろ!そこに置いてある我が杖を!どこからどう見ても立派な魔術師ではないか!グレイは魔術師に見えないかもしれんがな!」
サッカが大げさともいえる身振り手振りで抗議のアピールをする。
「え?先輩、これどう見ても杖じゃなくてハンマーですが。ってうわっ重!なんて物振り回すんですか先輩は!?」
「それが我が杖なのだああああああああああああ!」
「えええええ!?」
「ふふふっ」「あはははは」
笑い声が絶えない座席を御者席のロッジが恨めしげな目で見る。
「うう、いいなあ楽しそうで。マルカ、もう少ししたら代わってよ!」
「え~しょうがないなあお兄ちゃんは」
「……しかしあっちの馬車はどうかしらねえ?」
「ああ、なんかあのリードって人がいますしハシントは同じクラスですがいつもムスっとした奴ですし」
「フン、グレイもあまり自分から話す方ではないな」
「班長もちょっと怖い人だよねー」
「アリエッタちゃんは大丈夫かしら……」
「「「……」」」
サダリアの言葉に沈黙する馬車Bのメンバーであった。




