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言葉を遮る様に大きな声を出したが、そんな自分に気づくと声のトーンを元に戻す。
「誰も疑問に思わないのか?イメージしただけで燃えるものが無いのに火が生まれ、どんな気温でも氷ができ、腕力が無くとも大地が爆ぜる……これを疑問に思わないのか!」
「それは、魔法だから……」
一度は平静さを取り戻したが再び上がっていくボルテージを今度は止める気が起こらない。
「そうだ、魔法だ!学校で、いや現在この世界で神秘の賜物とされる魔法だ!皆魔法というものを神格化している、人知の及ばぬ超常現象だと信じ込んでいる!しかし!」
思わず身を乗り出す。
「魔法というものがこの世界に物質的な影響、電気を流したり風を吹かせたりすることが出来るのであれば、それは魔力というエネルギーを原動力として物質に影響を与える法則だ!魔法により生じた火は何も無い所に火を生むのではなく魔法により集められた物質が燃焼しているんだ!火の魔法には火をおこさせるための回路が、氷の魔法には水を集めエントロピーを下げるための回路が、電流を流す回路が、地に作用する回路が、物質に関与する回路がある!物質に回路を刻むマジックアイテムがその一例ではないか!魔法を使う魔術師がこんなことにも気がつかないとは!」
一息に喋ると自らを落ち着かせる為に呼吸を整える。
「俺のこの考えは理解されることが無かった。かつて学校というのは理論を教えるところだと思っていた。図書館ですら理論の書かれた本を余計なものとしてここへ押し込んだ……だから俺はここにいる。評価もされなかった偉人の知識を得るために、古の魔法から法則、回路を学ぶべく」
「それが、貴方のここにいる理由」
「そう、その通りだ……悪い、途中で熱くなってしまった」
思い返せば興奮してずいぶんと恥ずかしい姿を初対面の人間に見せてしまった。
「ちょっと怖かった、言ってることも良くわからなかったし。あと少し気持ち悪かった」
「……」
自覚しているがやはり直球に言われるとすこしばかり傷つく。
「でも、わかった」
リリアが僅かに表情を緩める。その姿はさっきまでとのギャップのせいかとても魅力的に見えた。
「一つ、貴方は私のことを否定しなかった。解った振りもしなかったし同情もしなかった」
「それはそうだ。君の問題は君自身の物だ、君以上の理解者はいないだろうさ」
偽りは無い、断言できる。
「ん。二つ、貴方が嘘をつかずに本心を語ってくれたこと」
「……俺が嘘をついていない保障はどこにも無いぞ」
「子供みたいだった」
「ぬ?」
「さっきボクに今ここにいる理由を語っていた貴方。初めはもっと怖い人かと思ったのに」
「……なんか君に言われると釈然とせんな」
どう見ても子供のようにしか見えないリリアに言われると、流石に少し面白くない。
「む、ボクも好きで小さくは無い」
「そうか、俺は可愛らしくていいと思うが」
女性は背が高ければ綺麗、低ければ可愛らしいと捉えることができ男に比べれば便利だともう。それに不機嫌そうな顔も目つきの悪さもそれが普通だと分かればそれはそれで可愛いものだ。
「!?~」
「ん?どうした?」
「……なんでもない。」
「いや、顔が赤い。大丈夫か?」
リリアの頬に手を伸ばす。
「やっぱり熱いな、大丈夫か?」
「~~~!?」
リリアは顔を赤くさせながら一歩下がる。
「ち、ちょっと疲れただけ、問題ない」
「そうか?そういえば立ちっぱなしだったからな。少し座ろうか」
床に胡坐をかいて座るとそれに倣いリリアも体育座りでちょこんと横に座る。




