09.進む道(11/6:追加修正あり)
投稿が遅くなってしまってすみません。
今回はレイヴィン視点のお話です。
11/6:誤字修正と回想シーンに追加修正しました
アリア達が部屋を出て足音が遠ざかってからルーカスが口を開いた。
「悪い知らせだ。
デストリュ男爵がルーチェ国で頻繁に訪れた屋敷を調査したが、
男爵が大金を払ってまで何をしていたかの手掛かりは何1つなかったよ」
デストリュ男爵を調査するに当たり、ルーチェ国に頻繁に通っているという事で王子の留学を名目にルーカスが調査していると今回、アリアの件で同行するにあたり父から聞いていた。
「ただ1つ不思議なことがあってね。
屋敷内はかなり埃だらけだったんだ。
それなのに足跡は男爵のみで、密会していた場所にだけ複数の足跡があった。
となると相手は闇の宝玉をもっていると仮定できる」
「男爵がどこまで関わっていたのかはわからずじまいですか」
「だな」
ルーカスは溜息をつきながら紅茶を口にした。
「学院もそうとうひどかったのだろう?
できれば俺の在学中に起きてくれれば面白かったのに」
「当事者としては全く面白くありません」
「相変わらず、冷めてるねぇ。
でも、前のお前なら今回の件でわざわざ来ることはないと思うんだけど?
しかもお前が殿下達に活をいれたって聞いてさ世界の終りの前兆かと思ったよ」
ニヤニヤしながら言うルーカスの言葉にこっそりとため息をついた。
ルーカスは優秀な男ではあるが、言動がふざけた感じだから苦手な男である。
苦手と言うより必要最低限の人付き合いしかしてこなかったからというのもある。
物心ついた時から自分の道は既に決まっていてその道を歩くだけだと思っていた。
父親の後を継ぐ為に勉強をし、決められた相手と結婚して家を継いでそれで自分の人生は終わるから後は淡々と過ごしていくだけだった。
ティルフとジークは私の護衛役と執事として幼い頃から共にいることが多かったし、2人は兄のような存在だった。
ティルフとは武術の訓練でよく会うがその時によく会うのが彼の妹達だ。
セシリアは武術よりも薬学に興味があるらしいが、アリアは6歳の頃から訓練を楽しそうにしていた。
アリアは何をするにも笑顔であまりにも自分と違っていて見ていて飽きない存在だった。
そんなアリアが学院に入学するという時にティルフがやたらと学院でうまくやっていけるか心配してたので不思議に思っていた。
いつも笑顔で人懐っこい子の何が心配なのか、確かに木登りや屋根を上ったりなどお転婆すぎるが問題はないはずだとティルフにも言ってみたが、ティルフは複雑な笑顔でこう言った。
「レヴィとアリアは正反対のようで実はそっくりなところが心配だ」
この言葉にどこが似てるのか聞いてもティルフは答えてはくれなかった。
だけどアリアが入学して、遠目から彼女を見ていて気付いたことがある。
アリアは常に笑顔だが何かが違っていた。
でも何に違和感を感じてるのかわからないし、アリアの評価は『いつも笑顔の明るい娘』だった。
1年位たってもこの違和感は消えず、たまたま会ったティルフに聞いた見る事にした。
「はぁ。やっぱりその様子だとアリアは友達すらできていないってことか」
頭をかきながら言うティルフに疑問の視線を送るとティルフは苦笑した。
「アリアの笑顔は武装だよ。あれでかなりの人見知りなんだ」
ティルフの言葉に私は疑問しかなかった。
いつも笑顔で誰とでも打ち解けるアリアが人見知りとはありえない。
「確かにアリアは笑顔で誰とも仲良くなるが線をひくんだよ。
この人は大丈夫だと思ったらとことん甘えるんだけどな。
前に言ったろ?アリアとレイヴィンは似ているって。
2人とも他人とまず線を引いて接する所がそっくりだ。
アリアは苦手な相手から無茶なこと言われてもそれに応えようとするし、
心を許してる相手だとどんな無茶でもしてしまうから心配なんだよ」
さすが兄と言うべきかティルフはアリアの事をよくわかっているようだった。
アリアの違和感の正体は納得できたが、それからも私はアリアを遠くからみてさり気無い笑顔の差を観察する日々となった。
そこでわかったことは1つ、アリアはソフィア嬢には気を許しているという事だ。
他の令嬢に対してと微妙に違うし、弟のクリスに向けるのと同じ笑顔を向けている。
アリアを観察するのが楽しくなって来た頃、この観察をする暇もない位多忙な日が訪れてしまった。
ヴィル達が生徒会室に来なくなり、私とイリヤとで対応に追われる日々になったのだ。
生徒会室に来るように告げてもヴィル達は”わかった”と返事するだけでくることはなかった。
見かねたイリヤの妹のソフィア嬢が臨時としてアリアを含む友人を連れてお手伝いに来てくれた。
本来なら生徒会のお手伝いメンバーだけで十分のはずなのだが、そのお手伝いメンバーさえ5人いるうちの2人のみしか来てくれなかった。
アリア達が出来る仕事は少なかったがそれでもありがたかった。
何故ヴィル達があそこまで1人の女性に入れ込むのか理解はできず、何とかしようにも生徒会の仕事だけで手が回らず、これ以上酷くなるなら学院長に相談するべきか悩んでいた頃、あの事件が起きた。
あの日、親友たちの心変わりに溜息しかなくこのままなら窓から降りて逃げてしまおうかと考えていたらアリアが現れた。
アリアはイリヤが呼んでいるからと彼女らしからぬ強引さでヴィル達が顔を顰めてるのもお構いなしに私の腕を必死に掴むアリアの姿に思わず口元が緩んでしまう。
さっきまでは絶望しか感じなかったのに今は嬉しさでいっぱいだった。
だがその後にまさか襲撃者が現れ、アリアが私を庇って倒れるとは予想もしなかった。
事件から数日後、父から聞いたアリアの怪我の内容に驚きを隠せなかった。
アリアがあの時庇ってなければ私が倒れていた事だろう。
だからこそ私は即座にアリアと共にルーチェ国に行くことを決意した。
父も快諾してくれ、私はまずヴィル達と話し合う事を決めた。
10年近い付き合いなのに初めてお互いの言いたい事を言い合った。
ヴィル達にはかなり驚かれたが、私の決意には賛成をしてくれた。
これで学院の事は心配はいらない。
自分の事を守ってくれたアリアに今度は私ができる事でお返しをする。
それが今の私のするべきことだ。
この気持ちが何なのかはわからないが、今はアリアの声を再び聞くまではどんなこともしてみせる。
「ルーカス様が気にするようなことは何もないはずです」
回想をしながら淡々と答えるがルーカスの顔から笑みが消える事はなかった。
「まぁ。これからをみれば答え分かると思うから楽しみにしてるよ。
ところでそちらが調べた男爵の件で新たなことはわかったかい?」
突然真面目な顔で真面目な話に戻るルーカス様に呆れながらもこちらのもっている情報を話す。
そういえば今までは役割以外で話したことはなかったなと私は思う。
何事も必要最低限の事しかしてこなかったが、これから私の道は決められた道じゃなくてもしかしたら見えない道を歩くことになるかもしれない。
でもそれはそれで楽しくなりそうだと私は思うのだった。
今まで淡々と歩んできた道が色鮮やかになるのではないかと期待をする。