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03.不審者

この回も短編を追加変更した内容です。


11/6:誤字修正

「レイヴィン様!!」


私はレイヴィン様の手をひっぱり姿勢を低くさせながら立ち位置を変えて背後にかばった瞬間、左肩に何か衝撃が走りました。

矢は刺さってないようですが、かすったのでしょうか。

肩は熱くなる一方だけど、今は肩の具合を見るよりも近づいてくる男の対応が優先です。


手元に武器はないけども、これでも幼い頃から武術は学んでいます。

倒すのは無理だとしても足止めくらいの時間は稼いで見せましょう!!


「レイヴィン様、鐘を」


私はレイヴィン様に告げると不審者と対峙します。

レイヴィン様に頼んだ鐘と言うのは襲撃があった時に知らせる鐘の事です。

万が一の襲撃時対策として階段脇に鐘と簡易な生徒会役員しか開けることができない武器庫があるのです。

備えあれば憂いなしとはいうけども、今では訓練時にしか使われてない鐘を使う日が来るとは思いませんでしたよ。

この学院ができてから200年近く経っています。

それまでの間にこの学院が襲われたことは1度もないのですが、造りは強固で武器などの対策も万全です。

お父様に聞いたことあるのですが、昔からの名残と言うだけで詳しくは教えてくれなかったのです。

学院だけでなく重要な建物はどれも対襲撃用の設備が整っているらしいです。

らしいというのは噂だけで実際に私が見たことがないからなのです。

ちなみにこの大陸には6つの国があってどの国も襲撃用の対策がされていると随分前にあちこちを旅してる人の護衛をしてる方に聞いたことがあります。

200年以上、この大陸ではどの国でも大きな戦争は起きていないのに何故、襲撃対策は万全なのか疑問に思っても誰も教えてくれないのです。

自分で調べようにもどこから何を調べていいのかわからず、諦めました。

はい、勉強方面は得意でないのです。


レイヴィン様は私の方をちらっと見ましたが、鐘の設置場所に向かいました。

私では武器庫の開放はできないけど、不審者を注意を私に向けさせることはできます。

我がヴィーゼ家はシュテルン家の護衛が優先事項です。

何としてもここを乗り切らなくてはと不審者と対峙し攻撃を躱すけど、肩は燃えてるように熱くて集中が薄れそうです。

だけども鐘が鳴り響いたし、応援もすぐ来てくれるはずです。

私、勉強方面は苦手でも武術と馬術は得意です。

淑女を目指すより、騎士か護衛の職に就きたいと考えているのにお母様からは大反対を受けて叶いそうにありません。

でも今は日頃の成果を見せる時!!

応援が来るまでヴィーゼの名に懸けて耐えて見せましょう!!


不審者の攻撃はスピード重視です。

200年以上前までは使えていた魔法も今では誰も使うことはできません。

でも魔法は存在しないけども呪術は存在するのです。

呪術といっても呪全般と言うわけではなく、宝玉の力を借りてそれぞれの属性にあった力を発揮します。

宝玉と言えど誰もが使えるというわけではありません。

5歳になると教会で宝玉との相性を確認し、既定値より高い子は教会に預けられ神官となり、宝玉を使った術を学ぶことができます。

宝玉は国が管理しているので、個人で使える事はありえないことです。

なので今目の前にいるこの不審者はおそらく呪術は使えないはずです。

私もスピード重視なので、これはお互いのスピードと集中力の勝負と言うところでしょうか。

気合入れて頑張ります!!


それにしても血は流れてないのに何故肩がこんなに熱く動きが鈍くなるのでしょうか。

周囲の情報を見る余裕もなく、避けるのが精一杯で気が付くと背後に壁が迫っています。

体制を変えようとした時に不審者も今迄と違う動きをしてきたので、私はおもいっきりバランスを崩してしまいました。

まずいです。ピンチです。

このままでは避けきれないと思った時、私の横を勢いよく何かが通りすぎました。


「後は任された」


声の主はイリヤ様で助走から不審者に反撃をしかけてました。

イリヤ様は学院でも上位の剣の腕前です。

これでもう大丈夫とほっと息をついた時、ガラスの割れる音が聞こえました。

顔を上げると不審者が窓から外に飛び降りていくところでした。

イリヤ様がそれを見てそばにいた騎士候補たちに指示を出していきます。


その様子を見ながらレイヴィン様の事が気になり、後ろを振り向くとこちらに向かっているのが見えました。

怪我のない姿に安堵しているとレイヴィン様は顔を顰めて私の前に立ちました。


「アリア、自分が何をしたのかわかってるのか」

「も、申し訳ありません。バランスを崩してしまって・・・」


何時になく怖い声に私は反射的に頭を下げました。

何をしたかと言うのはバランスを崩したことでしょう。

イリヤ様がいらっしゃらなかったらレイヴィン様にまで被害がいってたはずです。

まだまだ修行不足です。


「違う」

「え?」


思わず顔を上げるとさらに怖い顔をしてレイヴィン様がこちらを見ています。


「アリアは騎士科ではないだろう?危険な事に手は出すな」

「・・は・い」


涙が出そうです。

これは役に立たないって事でしょうか・・・。


「レイヴィン様、今の状態ではアリアのとった行動は正しいと思いましよ?

 そこは素直に”危険なことは俺にまかせろ”くらいの発言がいいと思います。

 アリア嬢はちょっと頑張りすぎですね。

 制服、あちこち切れてますよ?」

「イリヤ!!」

「何ですか?レイヴィン様は言葉が足りなすぎですよ。

 僕は不審者の追跡の指示をしてきます。

 本当にアルベルト様は何処にいるのでしょうね・・・」


イリヤ様は言いたいことだけ言うと去っていきました。

思わずイリヤ様をみているとレイヴィン様が肩に上着をかけてくれました。


「レイヴィン様?」

「寮までそれを着ているといい。

 アリア、無茶しすぎだが、助かった。ありがとう」


レイヴィン様の言葉に思わず笑顔になります。

”ありがとう”それだけで痛みも吹っ飛んでしまいます。


「こちらこそ上着ありがとうございます」

「今日はもう、寮で休んでいてくれ。無茶はもうするな。

 それと怪我はないか?」

「はい。肩が熱をもっていますが、血はでていないので大丈夫かと思います」


私の言葉にレイヴィン様が肩に触れようとした瞬間、肩に今まで以上の痛みが襲い私は意識を手放してしまいました。


それにしても何故学院内に不審者がいるのでしょう。

学院には生徒の巡回だけでなく本業の警備の人もいるのに、不審者はどこから侵入して目的は何なのでしょうか。

物語には襲撃なんてなかったのに、ここは物語とは似て異なる世界なのでしょうか。

わからないことだらけです。

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