23.決着
アン視点のお話です
11/6:誤字修正
「放しなさい裏切り者!!」
「放すわけないでしょ」
「アンを吸収したばかりか寝返るなんて!!」
「最初にアンを奪おうとしたキラに言われたくないセリフだね」
「私達は姉妹だからいいのよ!!兄が妹に手を出すなんて」
「誤解を招く言い方やめてくれない?姉妹だからいいって理由ないからね」
「ありますわ!!」
部屋に現れるなりキラとナイの子供じみた口喧嘩の相変わらずの様子に溜息をつきながら隣を見ると2人ともひきつった顔をしていた。
「公爵様、束縛の腕輪の強度を上げる事は可能ですの?」
公爵はハッとしたように宝玉を握りしめると、キラから悲鳴が上がり、キラは苦しげな表情をしながらも周囲を見て、公爵に目を止めた。
「どうして邪魔をする!!何故お前達は復讐すらもしないの!!
叔父様も叔母様も殺されたのにその真実は隠された!!
父様も責任を取って消えたのに母様も従弟も何も言わなかった!!
だから私が無念を晴らそうとしたのに何故止めたの」
「当事者でもない我々が何に復讐をするというのかね?
我々がするべき事は何時までも復讐にとらわれた者を止める事だけだ」
公爵の言葉にキラは憎悪の目で公爵に詰め寄ろうとするが、公爵は更に束縛を強めてキラは地面に蹲っていった。
「キラ、闇に帰ろう?もうここはいるべき場所じゃないだろ?」
「いやよいやよいやよ。このままじゃ私の心は物足りないままじゃない!!
私の存在意義は全てに復讐をすることなのよ?!
苦しめて苦しめて全てを壊してそれでようやく私に生きる意味があるのに!!」
何故キラにこれほどの復讐心が宿ってしまったのだろう。
私達の元の魔女が呪矢をつくり、人々を魅了させたり死に追いやったりしていくのを精霊達が悲しんでこの大陸から消えたと言うのが今でも言い伝えられている。
でも、実際は違う。
妻子のある男に光の精霊とその契約者が恋をしてしまった。
男を諦める事が出来なかった精霊と契約者は男を攫っていってしまった。
妻は姉とその夫であり契約精霊である闇の精霊に協力してもらい夫をみつけたが、夫は心を壊され人形のようになっていた。
妻はなんとか夫を取り戻したが心が戻る術がないとわかると、夫と共に命を絶ってしまったのだ。
夫の心を壊したのは禁忌とされている術で、使ったのは光の精霊だった。
全てを見届けた闇の精霊はこの大陸にいる精霊達に真実をつげ、光の精霊を封印しそのまま姿を消した。
精霊の掟で精霊が禁忌を犯したらその地から去らねばならない。
精霊達は名残として宝玉を残していった。
ただ、精霊との間に生まれた子はこの掟に従う事はなくこの大陸に残る者が多かった。
闇の精霊の妻は自分の子と妹の子を育てていたが、精霊達がいなくなった理由が何故か自分達であると伝えられていた。
光の精霊の契約者は身分ある者だったらしく真実をまげて伝えたのだ。
3人は隠れるように暮らしていたが、闇の精霊の子である娘は納得がいかず、叔母が研究していた呪の本を完成させて、復讐に走った。
闇の精霊の妻と甥は娘を止める為に手を尽くしたが、娘は自分の分身を作って消えてしまった。
闇の精霊の妻は甥にいずれよみがえる娘を止めてくれと頼んで亡くなった。
そして闇の精霊の娘こそがアンたちの元となる魔女で、従弟にあたる子供が公爵の先祖となるのだ。
私達が分身として生まれた時は、記憶はほとんど私が引き受けていたからキラは知らなかったはずなのに記憶が残っていたのだろうか。
そう考えていると突然ナイまで苦しみはじめ膝をついた。
何が起こったのかと見つめているとその場に突然見知らぬ男と侯爵の息子が現れた、
男を見た瞬間に私は気づいてしまった。
この男は16年前に私が襲われたときに奪われた力を持っていると。
てっきりキラに吸収されていたと思ったのだが違ったようだ。
闇に帰るならあの男からも力を奪わないといけない。
それは元の持ち主である私の役目になる。
だけどそれをやってしまったらこの体にかかる負担は相当だ。
下手したらアリアが目覚めるのに困難になる可能性だってある。
男は公爵の息子を人質にとり、キラの束縛を解かせた。
このままではキラの思い通りになってしまう。
どうすれば・・・。
『アン、聞こえる?』
『沙希?』
不意にこの体の中にいる沙希からの声に驚いた。
『貴女の考えがこちらまでダダ漏れよ?貴女でも動揺するのね。
でね?私達の結論。アリアはレイヴィンを助ける為なら何も気にするなって。
私も賛成かな。ここで逃げたら女がすたる!!』
『なっ』
『女は度胸!!可能性があるなら突っ走れ!!』
楽しそうに言う沙希に迷いはないようだ。
ならば2人の気持ちに私は答えるべきなのだろう。
『負担を気にする余裕なんてなくなるから後で何が起きても知らないわよ。
それでも後悔はしないのね?』
『はい。最後の最後まで2人にはお世話になります』
『最後は派手に綺麗にいきましょう!!』
アリアも沙希を通して言葉を伝えてくれて、沙希はこんな時でも元気にふるまっている。
ならば私がすることは・・・・。
<公爵、あの男は私が相手します。その隙にもう一度束縛の指輪を使って下さい>
私は念話で一方的に伝えるとキラの様子を見る。
キラは高笑いをしながら話し続けているが、キラは私に気付いてないことが話から理解した。
それ以前にも細かいミスが多いなとは思ってたけど、どうやら力の使い過ぎで判断力が低下しているようだ。
術の知識を受け継いだと言っても力に関してはナイには適わないのだから当然の結果なのかもしれない。
私は未だに苦しそうにしているナイに視線を向ける。
苦しそうにしながらもナイは私の視線の意味に気付いたようで小さく頷いた。
私は男がレイヴィンからナイフをずらした一瞬に近寄りその胸に闇のナイフを刺し、力を奪っていく。
元々が私の力なので今まで抑えてた力む含めて私の力がこの体を支配していき、沙希の気配が徐々に消えていくのを感じる。
男は抵抗しようとするが動けずに力を奪い取られその場に崩れ落ちた。
ここからは時間勝負と思っているとレイヴィンから視線を感じるが、しばらく見た後視線を逸らした。
その様子を見ていたキラが苦しそうにしながら初めて私の方を向いた。
「何故アンが・・・。消えたのではなかったの?」
「私は初めからここに居ました。
キラ、貴女は私の気配に気付けないくらい弱っていたのですね。
だからこそ力に溺れ、周りが見えていなかった・・・。
姉さん、叔父様も叔母様も復讐なんて願ってないのよ。
私達はもう闇に帰りましょう?」
「嫌よ。そんなの嫌よ」
蹲りながらも私を睨みつけるキラにナイが静かに近寄りその胸にナイフを刺した。
「帰ろう、キラ。もう俺達も限界なのは気づいてるんだろう」
「だから嫌なのよ。放してよ!!は・・・な・・・・し・・・・て」
徐々に声が小さくなり、キラの体は粉々になっていき、力がナイの中に入っていった。
「アン、最後は君だよ」
ナイは私にナイフを向けながら告げました。
「ええ。約束は果たしましょう」
「アリア!!」
私が歩き出すとナイはナイフをおろし、こちらを静かに見つめていた。
あと少しと言うところでレイヴィンが私の腕を必死に掴んできた。
アリアは沙希の記憶を見る前からもレイヴィンに懐いていた。
無表情なこの男のどこがいいのだろうかと私は思うのだが、沙希もレイヴィンの事は気に入っていた。
最後だからと私は思い切って聞いてみることにした。
「余計なお世話かもしれませんが、貴方はアリアの事をどうおもってるんですか?」
「は?」
私の言葉にレイヴィンの表情が驚きで固まっていた。
この男でも驚くことはあるのかと思わず思ってしまう。
何しろ滅多に表情が変わることのない男で、あの事件以降ようやく表情が動くようになったと思っている。
「何故、アリアは貴方の為なら頑張れるのか私には理解できません。
でも約束は約束ですから・・・」
私はレイヴィンの解答を待たずにそう呟くとアリアの体から自分の力のみを抜き、本来の姿に近い形をとるが、力は奪ったとはいえ完全ではないので子供の姿になってしまう。
私が出たことにより倒れたアリアの体をレイヴィンが受け止めた。
私が抜けたことによりアリアの髪も元の色に戻っているのを確認してほっとしたようにレイヴィンがアリアの名を呼ぶ。
「アリア?」
「予定外に力を使ってしまったのでしばらくは起きないでしょう」
顔色は悪いが呼吸はしっかりしているのを確認して言うとレイヴィンはこちらを驚いたように見つめた。
私はキラから落ちた腕輪を拾い、公爵に近づいた。
「公爵、協力ありがとうございました。
予定と違ってしまいましたが約束通りアリアの体をお返し致します」
「アリアは目覚めるかい?」
「本人の了承は得ましたが、闇の力を使ってしまいましたので浄化をお勧め致します。
後は前にも言いましたが、本人次第ですわ」
腕輪を公爵に渡し、優雅にお辞儀をするとナイの前に立ち顔を見上げた。
「ナイ、約束通り帰りましょうか」
「最後なんだから兄さんってよんでくれない?
キラにはさっき姉さんって呼んだのに」
不貞腐れたようにいうナイの言葉に私は思わず苦笑してしまう。
「最後位は素直になりましょうか。
兄さん、16年前助けてくれてありがとう。
これからはずっと一緒に眠りにつきましょう?」
その言葉にナイは泣き笑いのような顔すると改めて私に刃を向け、静かに刃を下ろす間際に私はレイヴィンを見て脅すように声をかけた
「アリアを泣かせたら呪に行くわよ?それでは皆様、ごきげんよう」
私の言葉に頷く姿を見ながら私はナイの中に溶け込んでいった。
これで私達は闇に帰れるわ。
これからを願うとするならばアリアと沙希の歩む道が穏やかでありますように・・・。




