19.襲撃
今回はナイ視点です
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城の正門を派手にぶち破りキラが単独で乗り込んできた。
門を破るまでは背後にたくさんの黒尽くめの者達がいたが、城内に入ったのはキラ1人だった。
黒尽くめの者達は散ってどこかに行ったように普通の人なら見えただろう。
情報通り周囲を派手に破壊しながら地下への侵入へ気付くのを遅らせ、1人でも多くの有能な者達を魅力させようと術を展開させるのがキラの目的なのだろう。
でもね、キラ。甘いよ。
君の下僕に俺の配下が潜んでいたという事に気付かなかった時点で君の野望はとうに潰えてたんだ。
それに先ほどの黒尽くめの大半は幻で実際に地下に向かったのは10人にも満たないことも知っている。
3人で平穏に暮らしてた日々は俺にとっても楽しかった。
キラ、君が力に拘らなければ俺も自分の欲望のままに動きはしなかった。
アンは今もキラと俺の心に気付いていない。
力を使う事の出来ないアンにはきっと俺達の気持ちを理解することはないだろう。
でも力はなくてもアンにも望みはあるから今回の件で力を貸してくれた。
不本意だとにこりとも笑顔をみせてくれることはなかったが、仕方のないことだ。
こんな形ではなく昔のようにいたかったが、これは逃れようのない道だったのだろう。
ならば悔いなく、悪人は悪人らしく派手に散るのみだ。
静かに闇に混じりながら待っていると足音が不意に近くで止まった。
キラはまっすぐ進んでくるがようやく周囲の異変に気付いたようだ。
この辺りは人払いされているから誰も来ない。
あー。今日でようやくすべてに決着がつけられる。
さぁ、キラ。派手に殺りあおうじゃないか。
「下僕達とも連絡が取れないなんて・・・。まさか気づかれている?」
「作戦は筒抜けだったから策を練るのは簡単だったよ?」
キラの呟きに俺が笑顔で答えるとキラは身構えながらこちらを睨んできた。
「久しぶりだねキラ」
「ナイ・・・」
歯ぎしりが聞こえそうな形相でこちらを見るキラ。
これからの展開を考えると楽しくて仕方ない。
「あの怪我ではまだ動けない筈なのに何故ですの!!」
「ねぇキラ?純粋に闇の精霊の力を受け継いだ僕と宝玉を使わないと術も使えない君が対等だと本気で思ってたのかい?
あの程度の怪我にそう長い時をかける必要なんてないよ」
「なっ?!」
「君がいなくなってしばらくして俺はすでに君を見つけてたんだよ?
君の下僕の中には僕の配下も忍ばせていたんだけど気づかなかったみたいだね」
「なんですって!!」
「学院で呪矢を放ったのは僕の配下だよ。
君が作った矢じゃなくて俺の作った矢を放ってもらったんだ」
「通りで効果が違いすぎると思いましたわ」
「まさか気づきもしないとは思わなかったな」
キラの顔は悔しそうに歪んでいる。
キラは俺が動けないと思って色々油断しすぎていたからこそ配下の事をよく見もしなかったのだろう。
「貴方の目的は何ですの?」
「君が知識を使いまくりたいと思ったように俺も願ってたんだ。
闇に溶けて眠りにつきたいなって」
「愚かな!!せっかくの力を眠らすなんて」
「本来の闇の精霊としての力は”安らぎ”だよ?君が異質なんだ。
君があの屋敷を出なければ俺もあのままでいようと思ってたんだけどね。
こうなればお互いの望みをかけようじゃないか」
俺の言葉にキラは高笑いをする。
目的の為ならば手段を選ばないのは俺もキラも同じだろう。
「ねぇ?アンはもう貴方の中ですの?」
「さぁ?どう思う?」
攻撃を仕掛けながら問うキラに俺は躱しながら答える。
16年前にキラにやられたのは下僕が多かったのとこちらの力を半減していたからだ。
だが今は力も半減していなければ下僕もいないキラに脅威はない。
妹達とは口喧嘩はしても力での喧嘩はしたことなど16年前までなかった。
でも、遅かれ早かれこの結果は変わりようがなかったのだろう。
それにしても平穏を望んでいたアンは何故今回はあっさり俺の提案を飲んでくれたのだろうか。
分身として生まれたのに結局お互いの心は判らず仕舞いだな。
そう考えながら俺はキラの攻撃を躱していく。
キラは武術や宝玉をつかって攻撃をしかけてくるが、俺には届かない。
焦りが徐々に出てくるキラの攻撃中に俺はキラの腕を掴み拘束の腕輪をその手にかける。
「なっ!!何故これが?!」
「借りたんだよ」
「まさかナイ、宿敵に寝返りましたの?」
「寝返ってなんかいないし。ただ取引をしただけだよ」
「それを裏切りって言うのですわ」
「目的の為ならどんな手段でも選ばないよ」
鬼のような形相のキラに僕は笑顔で近づき、キラの両手を掴む。
「【転移】」
そう呟くと2人の姿は消えて周りの景色も揺らぎ、さっきまでいなかった場所に人の姿が現れた。
◇◆◇◆◇◆◇◆
「神官長殿、この場の清めをお任せしてもよろしいですか」
ヴィーゼ男爵が隣に立っている白髪交じりの男性に声をかけた。
「ええ。思いのほか結界が歪んでおりませんので問題はありません」
「私は地下の件が片付き次第、公爵家に向かいます」
「その後の報告も始末も私の方でしておきますよ」
「お手数をおかけします。では」
男爵が静かに地下へ向かっていくのを見ながら神官長は近くにいる者達に指示を出し始めた。




