16.再会
レイヴィン様視点です。
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アリアがいなくなってから2日目の朝。
先日の調査で迷いの森の中で見つけた屋敷には目印をつけていたので迷うことなくつくことができたが、その屋敷は静かに炎に包まれていた。
不思議なことに炎は屋敷だけを包み、屋敷が崩れていくと炎は弱まっていった。
「やられたねぇ」
その様子を見ながら呟くルーカスの言葉を聞きながら私は入り口の辺りを見続けた。
炎の中で何かが動いているのが微かにわかる。
その様子に気付いたジークが静かに戦闘態勢に入る。
不意に弱まっていた炎が大きく激しくなり、ボンッと言う爆発音がしたかと思うと炎は消えていて、屋敷があった場所に男女が立っていた。
「おはようございます。随分と早いお越しですね。
生憎と家は処分してしまったので、何もお構いできませんが」
にこやかに言う男には目もくれず私は男の後ろに隠れてる黒いローブをすっぽりかぶり顔が見えない少女に視線を向ける。
こちらに全く目も向けず気配すら消すように佇んでいた。
例えどんな姿になろうと私にとってはアリアはアリアだ。
諦めるわけにはいかないと剣を構える。
「おやおや。家を処分とはどこかにお引越しですかねぇ」
「そろそろ最終幕があがりそうだから準備中ってところかな」
ルーカスがいつもの調子で問いかけ、男も笑顔で答える。
「この屋敷を壊すのはもったいなかったけど、いろいろ残すわけにもいかないでしょ。
それでは我らは旅立つとするよ。
最後の舞台に君達からの拍手があることを願うよ」
「行かせるか!!」
後ろで控えてたリゲルが男に斬りかかった瞬間、アリアがいつの間にか持っていた黒い剣でリゲルの剣を防いだ。
そして一瞬躊躇をしたリゲルの隙を逃さずにリゲルの剣をはじいた。
姿は変わってもアリアの剣の動きはかわらないかった。
やはりアリアはアリアだということなのだろうか。
「我が妹はすっかりたくましくなってしまった。
おとなしくてかわいいアンはどこにいってしまったんだい?」
「知りません」
だが冷たく答える言葉はやはりアリアとは違う。
覚悟しないといけないのだろうか、アリアはもういないのだと・・・。
それとも彼女があの時言った『アリアは眠っているわ』を信じていいのだろうか。
私は剣を構え、アンと名乗る少女に攻撃を仕掛けると驚きの顔を見せながらも少女は攻撃を防いだ。
「アリアは眠っているとはどういう意味だ」
「言葉通りです。
時は充ちました。
すべてに決着がつくのも時間の問題です」
「可能性があるのでしたら諦めるわけにはまいりません」
いつの間にかアリアの隣にまで近づいたサラがアリアが持つ剣の腕を掴もうとした時、見えない壁にサラは弾き飛ばされた。
「邪魔はさせないよ。それじゃまたね」
「なっ、待て」
静止の言葉もむなしく男たちは姿を消してしまった。
結局、何もできなかった悔しさに男たちがいた場所を睨んでいるとジークが近づき、私の手についた血をハンカチでぬぐう。
気付かぬうちに拳を強く握りしめていたようだ。
「『最後の舞台』とは王城でしょうか」
殿下の言葉に全員が殿下を見つめる。
「私は戻って陛下に連絡します。
ルーカスはルーチェ国王へ連絡の準備、レオは教会に連絡をお願いします。
レイヴィン達は念のため、ここでの調査をお願いします」
殿下の指示に全員が御意と答え、それぞれの作業に入った。
「ジーク、父上に連絡を頼む」
私の言葉にジークは諜報時の連絡用の宝玉を取り出した。
リゲルとサラは今回も悔しさをぶつけるように、瓦礫と化した屋敷跡の探索をはじめた。
アリアを助けることができると信じるのは思い上がりだろうか・・・。
例え力が足りないとしても諦めたくはない・・・。
アリアを失う覚悟など絶対にできない。
でももし・・・。
考えがまとまらないまま私も瓦礫の探索を始めた。
結局、瓦礫からは何も見つかることはなかった。
屋敷の中には色々な家財や道具もあったのにその跡すらもみつけることはできなかった。念のために迷いの森の側にある屋敷も調べたらこちらは全く異常はなかった。
ただ、変わったことがあるとすれば迷いの森だろう。
準備しないで入れば迷子になると言われた森は今では準備をしなくても問題がない。
森に違和感を感じたレオが調べたところ感覚を狂わせていた何かがなくなったのではないかという事だった。
時期的に言うとあの屋敷がその仕組みをしていたと考えられる。
迷いの森はかなり昔からこの状態だったということから、もしかするとあの事件があってからずっとここで暮らしていたのではないかというのが今回の調査で分かったことだ。
わかったところで今更と言った感じではあるが・・・。
そして翌日、私とジークだけ一度国に戻ることになった。
特別に移動の宝玉を使わせてもらい、一瞬で王城の術部屋についた。
これからどうなるのかと考えていた時に、ドーンという衝撃音が響いてきた。
何度か衝撃音が続き、警戒する私達の耳に兵士の声が響いた。
「敵襲!!黒づくめの女を先頭に何者かが侵入しました!!」