14.アリアの秘密①
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肩の痛みは消え、私は暖かな気配にくるまれそのまま眠りにつきました。
眠っていてもラウラ様の言った言葉が頭の中で繰り返されます。
『他人に迷惑ばかりかけて楽しいですか?』
迷惑をかけるつもりなんてなかった。
聞くのが怖くてただ笑って流してただけだった。
本当はルーチェ国にきてからずっと怖かった。
ここに来て殿下とラウラ様に会って感じた違和感の正体に私は気づいている。
だって殿下は物語のヒーローでラウラ様は主人公の支えの1人として登場していた。
教会で2人が会話していることはほとんどなかった。
でもそれは人がいるから会話は控えてるだけだと考えた。
だって2人の関係が壊れたのが私のせいだと思いたくなかったから。
『振り回されるこちらはいい迷惑なんです。』
サラやリゲルは私の為にルーチェ国まで来てくれた。
レオ様だって教会での仕事があるのにルーチェ国まで来させてしまった。
ジークもレイヴィン様が行くと言わなければ来ることなどなかった。
レイヴィン様だってきっと迷惑だと思ってる。
だからきっと振り回した結果の報いが今の状況なんだろう。
ならば私は受け入れてこのまま永久の眠りにつけば全て解決になるはず・・・。
<え~?レイヴィン様は迷惑だと思ってないと思うけどなぁ>
突然聞いた事のない少女の声が聞こえてきました。
重い瞼をあけて、辺りを見渡しますが辺りは一面真っ白で何処にも隠れる場所がないのに声の主は見当たりません。
<だって何時も言葉数が少ない人が
『アリアの声が戻るまで私はどこまでも君の側にいると約束しよう』
って言ったんだよ?
迷惑だったらここまで来ないよー>
でもあれは責任を感じてるだけで・・・。
<あ~もう!!
他人に迷惑かけてる?
人は1人で生きていけないのだから迷惑かけるの当然じゃない。
振り回されて迷惑?
そう思うなら付き合わなければいいだけでしょ。
自分のやりたいことをしていずれはその報いは自分に返ってくるのよ。
細かいこと気にしてたら生きてなんていられないわ>
・・・。
強引と言うのか何と言うのかすごい考えです。
<どんなことをしてもレイヴィンを助けたいと思ったのは貴女でしょう?>
そうです。
『例え自己満足と言われようとレイヴィン様には幸せにいてほしい』
そう思ったのは私です。
でもそれで他の人の関係まで壊してしまったのなら・・・。
<だったらその気持ちを大切にしたらいいじゃない。
それに本当に必要ならどんなに邪魔されようと惹かれあうもんでしょ?
他人が邪魔して壊れる関係ならそれまでって事よ>
それはそれですごい言い分な気もしますが・・・。
<あのねぇ。
何もかもハッピーエンドにしたいって我儘だってわかってる?
それにね、ここは物語の世界と似ているけど違う世界だよ>
えっ?
少女の言葉に私は驚いてもう一度辺りを見渡しますが、誰もいません。
今更ですが、ここはどこで少女は誰なんでしょう?
それに私言葉を口にしていないのに会話が成り立ってました。
一体どうなっているのかしら。
<うん。今更だけど答えてあげる。
ここはアリア・ヴィーゼの心の中。
私のことは後で説明するから今はスルーしてね。
そして会話が成り立ってるのはここが私の領域であるからよ>
・・・。
意味が分かりません。
<おいおい説明するよ。
んで、貴女は物語の世界と似てると思ってるみたいだけど、似てるけど違うんだな。
特にヴィーゼ家の家族構成が全く違う>
え?
でも、物語にはヴィーゼ家の家族構成は詳しく書かれていなかったし何故違うと言えるのでしょうか。
<だって、ティルフはレイヴィンと2歳しか違わない筈なのに4歳も離れてるし、
レイヴィンはセシリアと同い年のはずなのに違うし。
そして極めつけはここよ!!
ヴィーゼ家の3番目は死産だった。
その事がショックで物語ではヴィーゼ夫人は亡くなっている。
だから4番目を物語では存在していない。
そしてスティール侯爵兄妹は物語には登場していない。
生徒会はレイヴィン1人でやってたのよ。
他にもいろいろ違うところはあるけどね>
お母様が亡くなっている?
クリスはいなかった?
私はあまりのことに混乱中です。
<はっきり言うと、あなたは転生者ではないわ。
7歳の時に貴女が見たのは私の記憶の一部。
そして私は貴女の前世ではないわ。
私はね貴女に呼ばれたの。
『死にたくない』と言う貴女の強い気持ちに私は引き寄せられたのよ。
それで、貴女を生かすために私は貴女と共に生きる事にしたのよ。
ところが、いざ貴女の中に入ったらもう1つ意識が入って来たの。
それがあの男が目覚めさせたかったアンと言う意識。
その意識も弱っていたから私はアンをくるんで貴女の中で眠ることにしたのよ>
そこで声は途絶え、目の前がぽうっと明るくなったと思ったら見たことのない服をきた少女がいました。
「私の名前は沙希。貴女が前世だと思ってた記憶の持ち主よ」