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13.調査

レイヴィン視点のお話です。


11/6:誤字修正

「そろそろかな。【目覚めよ】」


男がそう呟くとアリアの栗毛色の髪が黒く染まっていった。

体を起こして瞼を開ければ瞳の色も黒くなっていた。


「私は目覚めなど望んでいなかったのに何故起こす、ナイよ」


髪と瞳の色が変わり、久しぶりに聞いたアリアの声はアリアの声でありながら別人のように冷たい声音だった。



目の前の出来事を信じたくなかった。

アリアの姿なのにアリアじゃない少女が立っている。

現実を受け止められずにいる間も2人は話し続けていた。


「このタイミングを逃したら、次が何時になるかわからないでしょ。

 キラも着々と準備を進めてるしね」

「私の事は放っておいて問題ないはずよ」

「3人そろってこそだ。それより行くぞ、アン」


男はアリアの姿をした少女の手を取りこの場を去ろうとした時、男の側で倒れていた少女がゆっくりと起き上がった。


「もう目覚めてしまったのかい?弱くても光属性ってことか」

「え?あ・・・」


男の言葉に少女は徐々に顔色が青くなっていった。


「君が術にかかりやすくて助かったよ。

 君のおかげで外に連れ出すことが出来て妹を手に入れる事ができたんだ。

 感謝するよ」


男はガタガタ震えている少女に満面の笑顔を浮かべるとアンと呼ばれた少女の手を取った。


「待て」

「ようやく時が来るぞ?何もかもに決着のつくな・・・」


男が不敵な笑い、私が伸ばした手が届く寸前で姿を消した。

消える寸前、アリアの姿をしたアンと言われた少女の言葉が耳に届いた。

それは小さく多分私にしか聞こえない声量だったが確かにこう言った。


「アリアは眠っているわ」


この言葉が何を指しているのかはわからないが、アリアを諦めるわけにはいかない。

でも、何故こうなってしまったのかが全く分からない。

男が去り、ようやく動きを止められていたジークが私に近寄ってきた。


「当主様に連絡してきます」


そう言うとジークはリゲルとサラを連れて屋敷に戻っていった。


「レオ、聞きたいことがある。今日調べた屋敷にあの男は戻ると思うか?」

「あの屋敷に戻ったとしても我々が行っても見つける事は不可能にちかいかと・・・。

 あの男の言葉を信じるならば宝玉を使ってない精霊としての力ならば、

 宝玉でできる事は全て後手になってしまいます」


真っ青な顔の少女を落ち着かせながら言うレオの答えに悔しくてしかたなかった。

そんな私の肩に手を乗せルーカスはここに来て初めて見る無表情な顔で告げた。


「レヴィ、ここからは君は本来の役目を全うしてほしい。

 レオ、ラウラ嬢を教会に送って今までの事を教会に報告してもらえるか?

 俺は殿下に報告して陛下にも伝える。

 夜には一度戻って各自の報告と言う形にしたいのだが?」


私は頷き、レオも了承してラウラを横抱きにしながら教会へと向かった。

ルーカスが無表情の時は感情を抑える為だという事を私は知っている。

だから私も落ち着けと自分に言い聞かせながらジーク達がいる部屋に向かった。



夜、サロンでそれぞれの情報をまとめることになった。

レオが言うにはラウラ嬢は教会で男に声をかけられてからの記憶が曖昧であるが、自分がアリアを屋敷から連れ出し、今まであえて言わなかった真実を告げてしまった事だけは覚えているとのことだった。

アリアに呪の事をつたえなかったのは絶望を与えたくなかったからだ。

死を受け入れてしまって解呪を拒否してしまう事を恐れたから黙ってたのに、心の隙として使われアリアは奪われてしまった。

王都にも公爵家にも教会にも報告はしたが、当面はこのままの調査の続行とだけだった。


「あの男の言葉を全て信じるべきだとシュテルン公爵家は思っていますか?」

「我が家にはあの事件を起こした女性の子孫が再び同じことを起こすと言う

 予言をもとに今まで調査を続けてきましたが、

 その女性の子孫・・にあたる人物は全く見当たらないままでした。

 だが、あの男の言葉を信じるのなら納得いきます。

 すべてが正しいとは思えませんが、

 分身であるのなら今まで見つからなかった理由になります」


殿下の言葉に私ははっきりと告げる。


「陛下も学院で問題を起こしたのは分身の1人ではないかと考えています。

 今から僕も今回の件の調査に本格的に参加します。

 明日は今日調べた屋敷をもう一度調べます。

 ルーチェ国が本格的に動き始めてしまったら僕達のできる事は少なくなります。

 それまでにできる限りの情報収集に徹します」


元々はデストリュ男爵の調査をする為に殿下の留学を隠れ蓑にしてルーカスが調査していた。

呪矢の件があってからは多少堂々と調査はできるようになったが、今回の件はルーチェ国も傍観してるだけとはいかなくなるし、こちらに好き勝手調査もさせないだろう。

殿下も今迄とまとう空気が全く違っている。


ルーカスと私とレオは殿下の言葉に「御意」と答え部屋を辞した。



◇◆◇◆◇◆◇◆


シュテルン公爵家に公爵とヴィーゼ男爵とマリノスの3人が集まっていた。

ヴィーゼ男爵は一見いつもと全く変わらない様子だが、付き合いが長い2人には無理しているのが手に取るようにわかるが、ここは気づかないふりをすることにしていた。

今後についての話をしていると男爵が不意に剣に手を置きながら周囲を警戒し始めた。

マリノスも公爵の前に立ち辺りを警戒する。


『さすがですわ。陰に紛れこもうとしましたのに気づかれてしまうなんて・・・。

 ごきげんよう、シュテルン公爵、ヴィーゼ男爵』


陰から半透明のアリアの姿をしたアリアじゃない少女の姿に3人は警戒の色を強くした。


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