12.目覚め
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「それにしても何でアンは目覚めないんだ?」
男は私の肩を見ながらぶつぶつと呟いています。
男に捕まれた私の肩は、あの日のように燃えるように熱くなってきました。
「こうなったら強引に起こすしかないんでね。苦痛が伴うぞ?」
男はニヤニヤしながらそういうと肩が増々熱くなりますが、声の出ないわたしは悲鳴もです、額から汗がこぼれるだけです。
体も動かないしこのままではまずいと思っていると遠くから名前を呼ぶ声が聞こえてきました。
「おやおやナイト様は随分早い到着で」
男の言葉に視線を上げるとレイヴィン様達がこちらに向かってくるのが見えます。
「お嬢様を放せ!!」
リゲルが剣を構えながら突進してきますが、男のナイフが私の首にあたるのを見て足を止めます。
「それ以上近づかないでくれるかな?」
「貴様・・・。目的はなんだ」
「彼女の中に眠っている妹を起こしたいんだよね」
「「「「「「は?」」」」」」
男の言葉に全員が疑問の声を上げる。
言っている意味が分からないと言う視線を送ると男は楽しそうに話し出した。
男はナイフを私の首から肩の上に置きますが、冷たいはずのナイフは私にとってとても熱く感じます。
男は私の様子を気にもせずに話し出しました。
「昔々ある女が自分の野望の達成直前で叶う事が出来なくなりました。
女は達成させるために自分の分身を作って託すことにしました。
その女は闇の精霊と人間のハーフだったので、
闇の精霊としての力、自分が得た知識、人間としての記憶。
この3つに分けていずれ1つにして目的を果たそうとしました。
ところが、女も予想しなかった事態が起きた。
それぞれの自我をもった3体は統合することを嫌がった。
だけど、知識の力を持つ個体は野望を達成させるためにどうしても統合したかった。
そこでまず、人間としての記憶しかない弱い個体を取り込むことにした、
それを阻止したかった俺はなんとか魂だけは奪い返すことが出来た。
だが、奪ったのはいいものの魂だけの状態ではいずれ消滅してしまうと思った俺は、
妹の魂をたまたま近くで死にかけていた赤ん坊にいれた。
これで魂は体になじみいずれ妹として復活するはずたった。
なのに5年経っても10年経っても妹は復活しなかった。
不思議に思った俺は妹の魂を入れた体を探した。
それがこの体だとつきとめたが、妹の魂は何故かかすかしか感じられない。
あの時確かに赤子の魂は死にかけていたのに。
原因は不明だが、俺はこの体の魂を弱らせて妹の魂を表に出させることにしたのさ」
男の言葉にレイヴィン様達の顔色が強張っていくのが分かりますが、私はどんどん酷くなる肩の熱さに男の言葉はほとんど頭に入っていませんでした。
死にかけ赤ん坊と言う言葉に、両親から私は生まれた時に中々泣かず、死産かと誰もが諦めかけた時に泣き出したと聞いた頃があります。
それのことを言っているのでしょうか。
あー本当に意識が途絶えてしまいそうなくらい肩が熱いです。
「闇の精霊と人のハーフの女性というのはまさか・・・」
「そう。この大陸を全て支配しようとした女だよ?」
レオ様の言葉に男は笑顔で答えます。
「ではその肩の呪は・・・」
「あんたらの推測通り、死の刻印と復活の刻印を改良して混ぜ合わせた物さ」
「では、その呪が完成したらアリアは・・・」
「消えるね」
レイヴィン様がその一言で動き、リゲルとジークもこちらに向かおうとしましたが。
「【動くな】」
男の言葉に全員の動きが止まります。
「これは人が多いと効果の時間が短いんだよね・・・。
もうすぐで呪が完成するからさ。
そこで妹が目覚める瞬間を立ち会ってよ
まー適合するかわからずに魂をいれちゃったからこの体もすぐに壊れるかもだけどね」
「目の前で完成などさせるか!!」
笑顔で言う男にレイヴィン様が剣を構えてこちらに向かってきましたが、男は私を抱えたまま後方に飛びます。
「キラの術も効かなかったが、俺の呪まで効かないとはな・・・」
「キラ?」
「学院で魅了を振りまいてた女だな。あれがもう一人の妹だ」
「貴様は何故こうも情報を話す?」
「教えても君達ができる事ってあまりないでしょ?」
男の言葉にレイヴィン様は顔を顰めましたが、それでも私を取り返そうと男に仕掛けてきます。
ですが、私は既に意識を手放していました。