「は」
「ガチャ」
と扉が開く音ではなく、外側の扉のトッテが外れる。
「これが《救いの手》か…」
予想以上のボロさは扉を開ける前に現れた。
小さな町デルドバルの商店街から外れ、魔物の森の目の前に堂々のボロさで立つ平屋建ての小屋。
我らが国ネイルディブランドの領土の端っこ。
盗賊や奴隷屋などから助け、食料を分け与えるというもの達が現れた。
彼、レイモンも義務労働に出かけていた際に村が襲われたのだが、《救いの手》に救われたのこと。
義務労働を終えて2日で帰ってきたら半壊している村を見たときは足腰が震えたなぁ。
村のみんなが丁寧に事情を教えてくれてよかったけど。
レイモンは彼らにお礼を言いに会いに来た。
感謝の気持ちが胸の中を占めているが、強者には怯える癖がレイモンにあった。
しかし、見た目以上にボロい小屋はレイモンの緊張を皆無にした。
「やべえだろ、ボロすぎだろ…」
背中に差した、洋剣一つに古汚ない洋服しか身につけてないレイモンとボロい小屋は瓜二つかの様。
「しかしまぁ…どうやって入ればいいんだ」
ドアを叩いて中から開けて貰うか。
それとも、ドアを蹴り飛ばすか。
ドアを蹴り飛ばすのは第一印象が悪いな…。
ドアを叩いて、呼ぼう。よし。
「すいませんー、誰かいませんか?」
ドアを叩くの同時に、呼びかける。
が、「出てこないなぁ…」
「どうしよう?」
レイモンがドアの前で腕を組み考える。
「どけ」
短い言葉がレイモンの背中を突き刺す。
レイモンは後ろを向くと、高く上げられた大剣が眼科に入る。
とっさに横に肘で飛ばされる。
大剣を振り上げた本人はそれほど力を込めてはいなかったが、【職業】を持たないレイモンにとってはとてつもなく速かった。
ザク。
その音がした瞬間には真っ二つの扉は倒れようとしていた。
「不法者隠匿の罪と国家反逆罪でテメェらは皆殺しだぁ!」
倒れた扉によって引き起こされた土埃の奥に影が見えた。
「おっ、やっぱり誰かいるじゃねぇか」
尻餅をつくレイモンからも薄っすらと見えた。
「俺がディラン・カーサー様だぁ!
よく聞けぇ、おま…」
レイモンは影が動いたのだけは見えた。
大剣をふりかざしていた男は上半身がなくなっていた。
そして、下半身が静かに倒れる。
走馬燈の様に駆け巡る。
生まれてすぐに両親はなくなり、拾われて村の代表として義務労働に毎回いき、盗賊や奴隷屋に追い掛けられまくり、お金を騙しとられて村のみんなに怒られて。
レイモンは涙を流した。
やっぱり運がないなぁ僕、と。