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キリギリスの鼻歌

手放せないもの


 いつの間にか、あなたで涙を拭うのが癖になってしまった

 ごめんなさい、メンドクサイよね、でもどうしようもないの

 あなたに優しく柔らかく抱かれていると、

 自然と涙が止まらなくなるの

 ごめんなさい、キタナイね、ちゃんと分かってるの

 涙を流すときだけ頼るだなんて

 情けないとは自分でも思ってるの


 けど聞いて

 あなたに顔をうずめている時だけは

 素直な私でいられるの


 他の誰にも涙は見せない

 他の誰にも弱音は吐かない


 だからもう少しだけ


 もう少しだけ泣き顔を隠させて

そう言って彼女は顔を被っていたティッシュを小さく丸め、

毅然とした表情で挑むのでした

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