三
合宿当日。
わたしたち落葉中学バスケ部は長野までバスで向かいました。
わたしはバスの中でも相変わらず一人だったけど、これから仲良くなれると思ったら、全然苦じゃない。
体育館での練習。
「わぁ、広いね」
近くに居た人に思わず言ってしまった。もちろん無視されちゃったけど…
あっ…隣に居たのえりちゃんだったんだ。
フットワークから始めて、パス練習になった。
「誰が明坂とペアやんの?」
…小声の話し声が聞こえる。みんな困ってる。わたしが一人余っちゃったから、困ってる。
「わ、わたし見学します」
「んじゃ、みんな!やろ!」
部長の一言で部員たちが動き出す。
よかった。みんなを困らせずに済んだ。でもパスの練習したかったな。
…わがままはダメだ。みんなと仲良くなりたいし。
一日目の練習が無事に終わり、宿舎に帰った。
部屋は四人部屋でベットが二つ、布団が二枚。
「じゃあ、三人でベット使おっか」
え?わたしは?わたしはどうすればいいの?
…あぁ、布団があった。わたしはこれで十分だもんね?
わたしは、顔を布団で覆う。三人の話し声が聞こえる。あ、おやすみって言うの忘れちゃった。明日は、おはようって言おう。
次の日、結局わたしは、おはようも言えず、ただひたすら山を登っていた。周りのみんなは「大丈夫?」って声を掛け合ってる。わたしもいつかできたらなあ。
「きゃあ!」
えりちゃん?!えりちゃんが転んじゃった。
「大じょーー」
「えり!大丈夫?!」
「大丈夫だよ」
わたしなんかが大丈夫って言える訳ないよね。
あっ…えりちゃん怪我してる。
「これ…よかったら使って」
恐る恐る絆創膏を渡してみる。
「え?あ、ありがとう」
ありがとうって言ってもらえた。えりちゃんと久しぶりに話せた。嬉しいな。
「いらないのに…」
えりちゃんの小さな小さな呟きが、わたしには聞こえてしまった。
わたしがえりちゃんとの絆をもう一度、繋げることができたと思った絆創膏は無惨に捨てられた。
やっぱり無理だよ…
わたしなんかが仲良くなんてなれないよ…
目に涙が溜まるのがわかる。
「あいつ半泣きだよ。えり、やりすぎたんじゃね?」
「そんなことないよ」
「ま、だよね」
わたしを嘲笑う声が聞こえる。わたしって意外と地獄耳なんだな…
仲良くなれると思ってここまで来たのに…
わたしには無理なのかな…?