一
落陽中学1年B組、
明坂千里。
今日が入学式で、明日から待望の中学生デビューです!
そんな記念すべき入学式で、わたしは、ひとり、友達ができました。同じクラスの『伊藤えりか』ちゃん。
式の時に席が隣で、わたしが話しかけてみたんだ。
えりちゃんはね、すごく優しくて、すごく良い子なんだよ。
だからね、お母さん。
心配しなくて大丈夫だよ。
おやすみなさい、お母さん。
わたしは、大好きだったお母さんの前で、一日の出来事を話すのが日課だった。
お母さんは、わたしが小学校に上がる前に事故で亡くなった。
もっと早くに救急車が来ていれば、助かったのに…今でもそれは忘れない。
お父さんは、朝早くから夜遅くまで仕事で、常に居ない。
多分最後に顔を見たのは3日ほど前だと思う。
「いけない!早く寝ないと!」
その夜、わたしは一睡もしなかった。
そして迎えた朝。
朝からえりちゃんに「おはよう」って言えてすごく幸せを感じていた。
「千里ちゃんは部活どうするの?」
そうだ!すっかり忘れてた!
「えりちゃんは?」
「わたしはとりあえず、バスケ部に仮入部行ってみようかなって」
「千里ちゃんもよかったら一緒に来ない?」
「え…?いいの?」
「もちろんだよ。帰りに行ってみようね!」
「うん!」
バスケかあ…!楽しみだな。
わたし体力とかないし、それよりバスケやったことないけど、大丈夫かな…?
そんなことを考えているうちに、放課後のチャイムがディレイする。
「千里ちゃ~ん」
「今、行くね!」
……えりちゃんはどうしてバスケ部を選んだんだろう…?
「キミたち一年生?!」
わたしたちの少し上から、高い女の子の声が聴こえる。
声のする方を見ると先輩らしき人が3、4人居た。
「そうです」
ニコッと笑いながら、えりちゃんが答える。
「じゃあ、じゃあ、バスケ部おいで!」
先輩たちは目をきらきらさせながら、わたしたちを誘ってくれた。
「今からバスケ部の仮入部に行こうと思ってたところなんです」
「そうなの?!やったあ!」
わたしのその一言で先輩たちは、すごく嬉しそうにしてくれた。
こんなに良い先輩が居るところにわたしは入部できるんだ。
その日は結局、仮入部しなかったけど優しい先輩に出会えて、すごく嬉しかった。
次の日、わたしとえりちゃんは入部届けを出した。もちろん、バスケ部で。
だから、今から初めての部活。
自己紹介をしたら、わたしを含め、一年生は九人も入部したみたい。
三年生は二人しか居なくて、二年生は六人。わたしたちを誘ってくれたのはどうやら二年生のようだ。
部活は楽しかった。すごく。
毎日が楽しかった。
練習はすごく厳しかった。
それでもわたしは、楽しかった。
そんな時、わたしは、男子バスケ部に素敵な人を見つけた。
名前はわからないけれど、バスケがすごく上手くていつもきらきらしてる人だった。
勇気を出して、話しかけてみた。
「…あの、わたしもバスケ部で…その…バスケ上手いですね」
…あれ?わたし何言ってんだろ…?
こんなこといきなり言われたって困るに決まってるのに…
「そうか?俺なんか全然だよ」
……答えてくれた…困った顔、しないでくれた…
「笠町~!」
「はい!今、行きます!んじゃな」
「…ぁ、うん」
笠町って言うんだ~。
いきなり話しかけたのに嫌な顔、ひとつしないでくれた。
やっぱりかっこいいな~。
最近の部活は、女子は好きな男子の先輩を見つけて、わーきゃーやっているところだったが、わたしは笠町君で頭がいっぱいだった。
それから三年生が引退して、一週間が過ぎようとした、ある日のことだった。
「最近、玲那きてないよね~」
「うん、うん。部活厳しいし、嫌になったんじゃない?」
女バスの間では来なくなった子が一人。
そして、とうとう玲那ちゃんは退部してしまったらしい…
どうしてだろう…?
その答えは、わたしにはすぐにわかった。