世界は魔族に攻められて大変だそうですが、うちの村にはゴキブリしか出なくて平和です
その村は、黒光りする大型の虫に囲まれていた。そして包囲が終わりとうとう
壁を乗り越え中に侵入し、中の生き物を食べつくそうと・・・
プチ・・・
「あーまた、ゴキブリがこんなに来てるよ、やめてほしいよねぇ・・・」
若い男が軽い口調でその黒光りする巨大ゴキブリをつぶしていた。
プチ・プチ・・
「だなぁ・・・ここ最近は毎朝でかなわん、こんな不衛生なものが来ては店も開けんではないか」
コックのような服装をした女性もうんざりするような声で言った。
プチ・プチ・プチ・プチ・・・
「若いもんがそんなのでどうする、早くせんとうちの店の仕込みができん、手を動かせ」
年老いた老婆もその年齢に見合わない素早い動きでつぶしていった。
なお三人とも獲物は、昨日届いた瓦版のわら半紙を丸めた紙の棒だ・・・
なおこの世界では過去に異世界から呼び込まれた勇者が持ち込んだ技術により
毎日瓦版が発行され、2-3日遅れではあるがこの田舎にも届いている。
そして30分ほどで山ほどいた虫の大群もすべて処理された。
倒したのを確認してから村の大きな建物から、老人が一人出てきた。
男は言った
「あ、村長!」
「いつも害虫駆除申し訳ないねぇ・・・あれを見ると気持ち悪くて体が逃げてしまって・・・」
「いえいえ、あれは誰でも気持ち悪いですよ・・・まあ飯屋のばあさんや、お隣のケーキ屋さんのお嬢さんでも
駆除できるくらい弱い虫で数が多いだけですし。」
「そういってくれると助かるよ、あーまたお前さんとこの畑でとれた大根を分けてくれないか、うちのばあさんがあれが好きでのー あれを使った沢庵がないともうだめだとうるさくてのー」
「なら昼にでも届けますねー」
「おい、俺とばあさんは仕込みがあるんで先に店に戻ってるぞ!」
女とばあさんは店のほうに戻っていった。
「あーこの村は平和でいいなー、あのまま勘違いしてたら死んでたし、早く中二病から卒業出来てよかったー」
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あれは三年前のある暑い日のことだった。
俺は、村の中で最強を誇り、王都で行われるという武道大会にでて、名を上げて一旗揚げようと考えていた。
そしてそこで、現実の壁にぶつかった。それは王都の一つ前の宿町だった。
町の門を出たところで、一人の幼女に出会った。
「お兄さん、王都の武道大会にでるんですか」
「ああ、そうだがどうした?王都まで護衛でもしてほしいのか?」
そのときはよくある話だと思ったし、まあ暇だしいいかと思っていた。
幼女は困った顔で言った。
「いえ、僕より弱い人に護衛されても・・・」
「おい、何を冗談言ってるんだ!!」
幼女は真顔だ・・・
「いえ事実なもので・・・」
その時俺は明らかなミスをした。
「そういうなら俺はここに立っているから何でも仕掛けてこい、俺は最強なんだ」
幼女はきょとんとした顔で言った。
「それはよしたほうが・・・」
「さっさとやれ、今なら冗談だったとして流してやるぞ、お前が俺より強い・・・」
その言葉を言い切る前に、幼女の顔色が変わった。そして目のまえに幼女の顔が見えたところまでしか
覚えていない。
つぎに記憶があるのはその幼女に膝枕されて介抱されていたところだ。
結局は、俺は井の中の蛙、幼女にも負けるようなダメ男だったのだ・・・
そして失意のなか俺は村に戻り農夫として一生を過ごすこととした。
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俺は自分の畑に戻り野良仕事を始めていた。
「この大根はいいなー黄金色に光ってる。これは絶対うまいぞー、後で村長さんとこにもっていくのと、飯屋のばあさんのとこに持って行ってやらんと」
もくもくと野良仕事をしてると腐れ縁の幼女がやってきた。
そうあの村に戻るきっかけをくれた幼女だ。
いつも通り幼女は勇者ごっこを始めた。
「勇者さん、そろそろ村を出ません?」
「その遊び楽しいか?毎日言われても困るし、俺は勇者ではないただの農夫だ」
「そんなことはないです。僕が見る限りあなたは勇者なのです。」
「そんなことを言われてもなぁ・・・、だってほら例えば」
男は、木の棒を構え幼女に向き合った。そしてその次の瞬間
記憶が飛び、また幼女に膝枕で介抱されていた。
「ほら、幼女にも勝てないというか、勝てる見込みのないやつが勇者なわけがない」
幼女は真剣な表情で
「僕は・・・・なので勝てなくて当然なのです。」
困った顔で男は言った。
「そんなこと言われてもなあ・・・」
コックの姿をした女性が畑付近にきていった。
「おいそこで幼女とままごとやってる不審人物」
男は言い返した。
「おれは不審人物ではない!!」
「幼女に膝枕されててもか?」
男は困った顔で言い返せないでいると、幼女は震えて男の陰に隠れた。
「いいかげん幼女趣味をやめて俺の男にならんか」
「いや、あんたは美人なんだけどちょっとなぁ・・・それでなんだ」
「いつも害虫駆除をがんばってるお前に差し入れだ、はちみつたっぷりのタルトだ」
「あーそれは助かる。お前んとこのケーキはどれも絶品だが、はちみつのタルトが別格だからなぁ・・・」
「そうだろう、うちの家で飼ってる可愛い蜂たちが普段のはちみつと違って月に一度しかだしてくれない、特上品を使った逸品だぞ、食べたら飛ぶぞ」
「おまえの食べたら飛ぶはガチだからなぁ・・・ありがとう、後で食べさせてもらうよ。」
「礼はいいから毎日うちの店に顔を出せ、となりなんだぞ!!」
「わかったわかった、出来るだけ行くから。」
「聞いたぞ、朝昼晩三回来るんだぞ!!」
「いや、毎食お菓子は・・・・」
「何を言ってる。どこぞの王族はパンがなければケーキを食べればいいといったというぞ、つまりケーキはパンの代わりになれる。」
「いやそれは違うような・・・まあできるだけ顔を出すよ。」
「絶対だぞ、絶対来いよ!!」
コック姿の女性が去っていった。
そして去っていくと、幼女も男の影から出てきた、そして
「明日こそはちゃんとわかってもらうんですからねー」
といって小走りで消えていった。
まあこの村は幼女が出歩いても平気な平和な村だからなぁ・・・
「おーい今日の瓦版を持ってきたぞー、といっても2-3日前のものだし、これが最後だがな」
村人が男に瓦版を持ってきた。
「最後ということは・・・・」
「そうだ、王都が落ちた。魔族にすりつぶされたらしい。細かいことはこの最後の瓦版に書いているが王族は王女を除き玉砕覚悟で兵を率い国民が一人でも逃げるまでの時間を稼ぐとのことだ」
「そうか・・・それ近隣の都市や村は?」
「この時点では、うちの領都はまだ無事らしい、まあ無事じゃなきゃこれもとどかないから当たり前だがな」
「近隣の村は?」
「近隣の村は無事だが、領都より先は、カマキリ型の大型魔族や蜘蛛型、アリ型でいっぱいで死の大地と化してるらしい」
「「・・・」」
男は言った。
「この村に虫が押し寄せてきてるのも魔族から逃げてきてるのかもな」
「そうだな、あれは気持ちわるいだけで気持ち悪くならないおまえたちで処理できているからいいが、魔族がきたら・・・」
「まあその時はその時で考えるしかないか、いまはゴキブリだけで平和なんだからそれを享受しよう」
「だな、まあまた瓦版が届くようなら届けてやるよ、じゃあな」
村人は去っていった。
そして翌朝になり。そしていつも通りゴキブリを駆除して日常に戻った。
俺の村はゴキブリが出るくらいで他に比べれば平和である。
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二足歩行をするカブトムシ型の魔族が言った。
「まだ魔王さまは見つからないのか?もうこの世界にいるはずだぞ!!」
同じく二足歩行をするバッタ型の魔族が答えた。
「こちらとしても斥候としても戦力としても最強のゴキブリ族を専属で割り当ててるのですが」
「それで結果は?」
「・・・味方を食料として増殖を繰り返すだけで・・・・」
「どのくらいだ・・・?」
「昨晩は王都殲滅後の残党狩りに追加投入する予定の蜘蛛型、カマキリ型の複数編成の1個師団を・・・・」
「ダメではないか、制御はできんのか?」
「一度目的を与えたら、そのためには手段を択ばず確実に遂行するというのがゴキブリ族の特徴で・・・」
「今まではそんな問題が出るとは聞いてことがないぞ」
「おそらくここまで長期にわたる問題を与えたことがなかったのかと」
「これでは人間からの被害より奴らからの被害が大きすぎる、止めれんのか?」
「奴らを止めれるのは魔王さまだけかと・・・」
「逆に殲滅は?」
「キルレートがゴキブリ型1に対してカマキリ型1000ですので、今の全兵力でも危ういです。」
「われら上級が出てもむりか?」
「その場合でもやつらが10体いれば危ういかと・・・」
「そういえば、奴らは一晩で20倍に増殖するというではないか、そいつらは一体」
「わかりません。本来なら大陸を埋め尽くしてもおかしくないのですが・・・」
「奴らは、長時間および高く飛べんのだろう、トンボ型などを投入して監視はできんのか」
「奴らが森で夜な夜な他の魔族を餌に増えているのと王国方面に増えた個体をまとめて投入しているのは確認できたのですが
どこに投入しているのか監視させに行ったトンボ型は一体も帰ってこず・・・・」
「「・・・」」
長い沈黙が訪れた。
「どうしてこうなった!!」
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天界では今日も会議が行われていた。
最上位神
「勇者を動かすことはできんのか」
「だめですね、完全に折れてしまって・・・」
「その辺の話をさせるために戦神を再度送ったのだぞ・・・」
呆れた顔で一人の神が言う
「戦神にそんなことができると思うのか?そもそもなんで幼体固定で送り込むことにしたんだ!」
「いや、奴のミスであるので、その罰を兼ねて・・・」
「だからそれがそもそものミスだろ、増長しないようにってへし折るにしてもやり方があっただろう!!」
「いや幼女にやられたらへし折れるかなと」
「へし折りすぎだ!! それもお前の判断だけで戦神を送り込んで事後報告だろ、お前が責任をとれよ」
「いや、そういわれても・・・」
「戦神は権能の問題もあり、挑まれたら手加減もできん、今回の魔神との抗争のルールの関係で神であることもあかせんし、
勇者以外に干渉もできんでは、無理ではないか」
「・・・」
「さらに一度に送り込めるのは一人だけで連絡不能ではもう何もできないではないか、もう人属は全滅寸前だぞどうするんだ!!」
「「・・・」」
長い沈黙が訪れた。
「どうしてこうなった!!」
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そのころ魔界でも会議が同じように行われていた。
魔神長
「魔王はまだ覚醒せんのか!!」
魔神参謀
「ダメですね、堕落して覚醒するどころか・・・というか甘みで堕落させるという計画を最初に実行したのが、そもそものミスでは?」
「いや甘みこそ至高の堕落への道だろう!!」
「百歩譲ってそうだとしても、もっと方法がなかったんですか!!」
「いやそういわれても・・」
「今や魔王は至高の甘みを目指すパティシエになって堕落のだの字すらないですよ」
「・・・」
「あとわれら側で唯一干渉できる、蜂魔族の長も、魔王の元で甘みに落ちて至高のはちみつを作る始末ですよ!」
「いや、最強の蜂魔族軍団なら・・・・と・・・」
「確かに一体一体が最上級魔族なみで、長にいたれば魔王以外は勝てないほどですけど、強いだけでは意味が・・・」
「「・・・」」
長い沈黙が訪れた。
「どうしてこうなった!!」
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彼らのいる村を含む領地を治める領館でも同じころに会議が行われていた
辺境伯
「現状の戦線は?」
参謀
「現在壊滅した王都方面から侵攻してくる魔族が押してきており、領都手前のこの村まで前線は押されております。」
「そうか、それで正直なところどのくらい持つ?」
「なぜか押し寄せるとはいえ、王都を壊滅させたときほどの大軍団ではなく、散発的なので維持だけなら何とか・・・」
「わかった、それで唯一残された希望である王女の行方は?」
「護衛をしていた近衛騎士を街道で発見し、確認したところ逃がすことには成功したがその後は不明とのことです。」
「その近衛騎士は?」
「その時点で両足と片手を失っており、その後・・・」
「・・・王女は生きている可能性が高いのだな?」
「はい、可能性はまだあります。」
「王女の愛で勇者が覚醒したというおとぎ話に頼りたくなどないができるだけの兵力を割り当てよ」
「はい、戦線維持に必要なものを除きできるだけ投入します。」
「そして勇者は今どこに?」
「今も最前線で魔族を刈っております。」
「彼が最後の希望だ、彼さえ覚醒すれば、何とかなる。ほかの部隊への補給を止めてでも彼らを優先しろ」
「はい、ただ、王城方面への補給が不要になったので、不幸中の幸いというべきか食料だけはふんだんにありますのでその点だけが救いです。」
「あの異常な生産量を誇る村か・・・あの村は大丈夫なのか?」
「はい、なぜかあの村には魔族が現れず、害虫程度しか出ないようで・・・」
「理由はわからんではすまん、あそこをやられたら、もう食料供給が追い付かん、念のため調査に誰かを送らせろ!!」
「はい、調査の為、1個小隊を割り当てます。」
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それと同じころ、勇者といわれたものがいるパーティが必死に魔族と戦っていた。
「すまん回復魔法を頼む!!回復の間30秒だけでいい抑えてくれ」
「「承知」」
勇者といわれたものは少し下がり、大きな盾を持った戦士がその穴を埋め、僧侶による回復を待った。
戦士は叫んだ
「まだか!!もう持たん」
もう金属の盾すら削れ穴が開きそうだ。
「待たせた!!任せろ」
そういうと戦士とポジションを入れ替え、戦いを続け辛くも魔族を倒した。
その戦闘後、勇者といわれたものは言った。
「俺は、いつまで勇者を詐称すればいいんだ?」
仲間は言った。
「本物の勇者が現れてくれるまでだろう、それか死ぬまでだな。それが士気向上のためとはいえ、勇者を名乗ってしまった責任だろうな」
「確かにな・・・本当に早く勇者が現れて覚醒してほしい、それで断罪を・・・」
「断罪されることなんてないさ、実際にお前は頑張ってる、勇者の代役をやってるんだ胸を張れ!!」
「そうだな、さて次の魔族を狩りに行くぞ!!」
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このあと、村には偽勇者がきたり、王女がやってきたり、戦線を破られ落とされた領都奪還の拠点に
すべく辺境伯が来たりと色々ありましたが、この村は平和です。
おまけ
勇者の育てた野菜は・・・です。なお沢庵に加工することで大根はエリクサーにW
おまけ2
飯屋のばあさんは、この世界で初めてゴキブリを通算1万匹をその手で滅ぼしたので
ゴキブリ系全般に無敵になるゴキブリスレイヤーの称号を獲得しています。
なお本人の自覚はゼロです。




