第3話 村
もう日も落ちてきた。
空も赤く染まっている。
老人の後を追い、歩いていると集落のようなものが見えてきた。
ここがさっき言っていた村だろう。
ここ一帯は木が伐採され、少し開けた場所になっていた。
木造の家が立ち並び、やっと出会えた人工物に安心感を覚えた。
「こっちじゃ」
指さした方には、この村では一番大きそうな建物があった。
村長が住む家なのだろうか。
軋む戸を押すと、そこには年季の入った家具が並んでいた。
「お、お邪魔します」
「そこら辺に適当に座っておくれ」
「は、はい」
言われたとおりに木製の椅子に腰を掛ける。
少しすると、老人がお茶を淹れてくれた。
麦茶のようなものだろうか。温かい。
安心する味だ。
「まだ、名前すら言ってなかったのぉ。わしの名前はブランコじゃ。
この村で狩りをして生活しておる。お主に会ったのもそのためじゃ。
お前さんは名前をなんという?」
「僕の名前は、橘薫です」
「あまり聞かん名じゃの、それもそうか」
まず聞かなければいけないことは何だ。
あまりに何も知らなすぎる。
「僕はこれからどうしていけば?」
「そうじゃのぉ...]
立派に蓄えたひげを触りながらブランコさんはそう言った。
少しばかりの間があった後、口を開いてこう言った。
「まずは王都に向かってはどうじゃ。そこならお主の身に起きたことがなにかわかるやも知らん」
「ここからどのくらいなのでしょうか」
「南に向かって進めば一ヶ月もかからんじゃろう」
そこに行けばなにかわかるのだろうか。
「じゃが、もう少しこの村でゆっくりしていきなさい。」
「なぜでしょうか」
「この村を南にすこし進むと草原地帯に出るのじゃがのぉ。最近魔物が活発になって行商人を襲っていると聞いたのじゃ」
魔物か。
この世界を知らない僕みたいなやつじゃイチコロだろうな。
「それにお主はこの世界のことを何も知らないようじゃからなぁ。この世界についてはわしのほうから教えるとしよう」
よかったどうやらこの世界について教えてもらえるようだ。
こんな不審な人間にここまでしてくれるなんて。
かたじけない。この恩はいつか返すとしよう。
「それとな、この村には定期的に商人が出入りしているのだよ。次に来るのはえーっと...」
ブランコさんは人差し指で机をたたきながら思案している。
「おそらく1ヶ月後くらいじゃろう。それまではこの村でゆっくりしていきなさい」
「あ、ありがとうございます」
僕は座ったまま深々とお辞儀をした。
「もう外も暗くなってきたじゃろう。今日はもう休むのがいいじゃろう。この話の続きはまた明日としよう」
初めての場所で緊張していたのだろうか。
安心感で急に眠気が。
ふぁぁ。
眠い眠い。
そこにあったソファに横たわる。
ろくに飯も食ってないけど今日はもう寝よう。
おやすみなさい。




