最終話〈夕都と朝火〉
夕都と朝火。
二人が放つ力は蒼い焔の刃となり、世界に異変をもたらせた。
それは、一部の精霊人を実体化させ、また、輪廻の渦に巻き込まれた数多の魂を救い出す事となる。
夕都は朝火に凭れながら、涙を流した。
「夕都、何を泣く?」
「俺はあまりにも身勝手だ。これでお前は、俺の為に理不尽な転生を繰り返さずに済む。喜ばしい事なのに……俺は、お前と離れたくない……」
光の渦の中、朝火の優しい眼差しが夕都を包み込む。
ふいに抱きしめられて、熱く告げられた。
「俺は、俺の意志で、お前の盾となり刃となると決意した。だから、必ず来世もその先も傍に在る」
「あ、朝火」
「帰ろう」
「……ああ」
夕都は朝火と額を擦り合わせて、頬を緩める。朝火の唇も綻んで、笑いあった。
アントーニオとマッテオ、アールシュは姿を消し、二人はミーレスによりルーナや、貴一達と合流し、無事に日本へと帰国する事が叶った。
「ただいまあ〜」
「キュウン」
「こんゆう!」
「夕飯できてるぞ」
「サンキュー!」
夕都は秋葉原にて、朝火と愛犬と暮らしながら、龍主としての責務を果たす忙しい毎日を過ごしていた。
そして、明日は中国に父親を迎えに行く日である。
夕都はソファに腰を下ろすと、貴一からかかってきた電話に応答しつつ、膝にのるこんゆうの相手をした。
『だいぶ落ちつきました。明日は茉乃さんと一緒にお見送りします』
「ありがとう。とにかく落ち着いて良かった」
通話を終えると、朝火が隣に座ってきた。こんゆうが尻尾を振って、朝火の頬を舐める。
夕都は軽く明日の予定を朝火と話して、窓から差し込む夕日に目を向けた。
「俺、これから、繋がりのある奴らをまとめなきゃいけないけど、できるかな」
「お前にしかできないし、俺も神無殻も全力で支える」
「うん。まずは国内からだけど、頼むぞ朝火」
「ああ」
夕都は、うすく微笑む朝火を見つめて口角を上げる。
古から繋がる魂――うろ覚えではあるが、幾度も生を共にした。
その瞳は、想いだけで奇跡を起こせるのだと、信じさせてくれる。
夕都は手を伸ばし、朝火の掌を握りしめた。握り返す朝火の掌はやけに熱くて、夕都は頬に一筋の涙を流したのだった。
〈焔の龍刃・完〉




