第16.5話〈導きの光〉
「待ちくたびれたぞマッテオ」
アントーニオが丘の上に現れた。
白い霧のような合間から両手を広げている金髪の男は、目を蘭々と輝かせて光につつまれていた。
奴の目的はマッテオの堕落。
少なくとも、夕都はそのように認識している。
ふと、霧の向こうに無数の影が見えた。
白や黒、赤の民族衣装を着た老若男女が取り囲んでいたのだ。
彼らはカトリック、ヒンドゥーの信徒であろう。
各々の思惑で集まったようだ。
皆一様に距離を取り、様子を見守っている。
夕都は朝火と一緒に、アントーニオの後方にたたずみ、マッテオをねめつけた。
静寂はマッテオが翼をはためかせる音で破られ、霧が晴れていく。
宙に浮かぶ教会を背に、ミカエルの化身が光をおびて舞う。
やがて地上の教会が共鳴を始め、一筋の光が皆をつなぐ。
夕都は己の力と、流れるレイラインの力を繋げて、マッテオの力の制御を試みた。
朝火が唇をかみしめて切っ先を振り上げる。夕都はその背中に片手を押しあてて、力をそそいだ。
ほどなくして、朝火は目を見開いて刀を振りかざすと、切っ先から一筋の閃光が走る。光はマッテオに勢いよくぶつかるが、奴は微動だにしない。
夕都は、手を二度打ち鳴らして、まわりのレイラインの力を己に集め始めた。
どこからともなく、鈴のような音が鳴り響く。
夕都のスサノオの力、龍脈の力と、レイラインの力が呼応しているのだ。
脳内に多種多様な言語で語りかける人々の声がする。
皆、一様にマッテオを止めろと叫んでいるのは理解できた。
――わかってる!
「朝火!」
「夕都!」
二人の心に呼応するように、二振りの刀はしっかりと手に握られた。
はばたくマッテオは苦渋と怒りに満ちた目を見開く。
二人は切っ先を擦り合わせ、光の渦を巻き起こす。清らかな無音と空間が一瞬ひろがり、閃光が放たれた。
声にならない叫びが、聖域を包み込んでいく。
「お、おお……」
「く……ルーナさま」
意識を取り戻したアールシュは、うめくミーレス声をききながら、光あふれる世界に歓喜した。




