正義の値段 最終話
最後の舞台
私は、新スーパーライダー。かつて、ひもじいヒーロー「ぶどうマン」として、金のために「スーパーライダー」の名を騙り、悪に手を染めた。日本一のヒーロー選手権で、すべてを奪われた私は、ただの正義の番人ではなかった。戦いを通じて、金や名声ではない**「本物の正義」**に目覚めた。しかし、その正義は誰にも理解されず、世間からは再びすべてを奪われた。
絶望の中、私は一つの真実を知った。私がすべてを捧げた「ヒーロー」という存在が、すべてはヒーロー庁が仕組んだ茶番であったことを。私が命を懸けて戦った「日本一のヒーロー選手権」さえも、勝者がすでに決められた、くだらない出来レースにすぎなかったのだ。
ヒーロー庁のショーが全て茶番だと知った私は、一度はヒーローを辞めようとさえ思った。だが、心の奥底で、あの時手に入れた「本物の正義」が燃え盛っていた。このままでは、私が信じた「ヒーロー」が、永遠に汚れたままになってしまう。
私は、再び「新スーパーライダー」として立ち上がった。今度は、金のためではない。腐敗したヒーロー庁、そして「正義」を金で汚す者たちに反逆するために。
私は、ヒーロー庁の屋上で開催されていた日本最大級のヒーローショーの会場に現れた。ステージでは、超人マンが悪魔男と激闘を繰り広げていた。
「どうした、超人マン!その程度のパンチでは、私には届かんぞ!」
悪魔男の言葉通り、超人マンの拳はまるで岩に小石を投げるかのようだ。超人マンは焦り、ステージ上をオロオロと走り回る。
「待てい!」
私が飛び出した。迷わず、渾身のスーパーライダーキックを悪魔男に叩き込んだ!ゴッ!甲高い打撃音が響き、悪人男の装甲が砕け散る。その力に、超人マンは驚き、その場に立ち尽くした。
すると、ステージの陰から、機械のような声が響いた。
「面白いことを言うな、元ぶどうマン。お前のような奴は、もう必要ないはずだ」
クザだ。彼は、ショーの悪役ではなく、ヒーロー庁と結託した本当の黒幕だった。
クザの右腕が変形し、圧縮されたエネルギーが凝縮される。極太のビームが放たれ、超人マンもろともステージを破壊し、観客席に迫る。子供たちの悲鳴が最高潮に達したその時、一陣の風が吹き荒れた。
「やめろ、クザ!」
そこに現れたのは、ナンバーワンヒーロー、ぶどうマン。かつて私が彼を裏切り、頂点に立った元スーパーライダーだ。
「お前のような奴はもう必要ない!」ぶどうマンはそう言い放ち、クザに突進する。しかし、クザの反応はあまりにも速すぎた。
「くだらん」
クザの拳が、ぶどうマンの身体を貫いた!
「ぐわぁ…!」
ぶどうマンは、一瞬にして絶命し、その場に倒れ伏した。鮮血が宙に舞い、観客たちの悲鳴が轟く。
その瞬間、私は叫んだ。「まだ終わらない!」
私は、かつての自分のスーツをまとい、再び新スーパーライダーとして立ち上がった。そして、ぶどうマンに、静かに語りかけた。「お前が示した**『心』**、確かに受け取った。ここからは、俺が引き継ぐ!」
二人のヒーローが、初めて互いの正義を認め合った。
新スーパーライダーは、クザに向かって走り出す。クザがビームを放つが、私はそれを紙一重でかわし、懐に飛び込んだ。渾身の一撃をクザの核心に放つ!ゴッ!強烈な衝撃がクザを貫き、爆発と共に、彼の機械の体が砕け散った。会場は静まり返り、やがて、割れんばかりの拍手と歓声が響き渡った。
さようなら、スーパーライダー
ヒーロー庁の闇は暴かれ、ヒーローショーの茶番も終わりを告げた。私はステージの上に立つ。隣には、傷だらけになりながらも笑顔を見せる元ぶどうマンがいる。私たちは顔を見合わせ、静かに頷いた。
「ショー、お疲れ様でした」
「最高のテレビの収録でしたね」
冗談めかした言葉が、私たちの間で交わされる。私たちはもう、報酬のためでも、名声のためでもない。ただ、子供たちの笑顔のため、そして、自分たちが信じる正義のために戦い続けることを誓った。
ぶどう畑が広がる、山梨県のどこかの山。夕焼け空の下、二つの影が並んで歩いていた。一つは、真新しいスーパーライダーのスーツ。もう一つは、ボロボロだが、どこか誇らしげなぶどうマンのスーツ。
ナレーター:
さようなら、スーパーライダー。
そして、ありがとう、ぶどうマン。
♪ エンディングテーマ曲がフェードアウト ♪
テレビ画面が暗転し、「完」の文字が浮かび上がる