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美雪とミューキー  作者: よしなし つづる
所長と美雪
23/26

オールドネット2

 あれから10日。

店主には顔を覚えてもらったようで、カウンターに顔を出すとすぐに預けたタブレットが用意された。


「バッテリー交換、オールドネット対応改造、接続設定は全て済み」

タブレットをクルッと回して、早口で説明を続けた。


「起動は、このボタンを長押し。終了は、ここだ。説明書はタブレットで読めるように、ここに登録してある。オールドネットはこのアイコンをタップし、パスワードを入力すれば使える。このアプリを開いてキーワードを入力するだけ。しめて12万。以上だ」

そう言うと、タブレットとパスワードが書かれた紙切れをポンっと目の前に置いた。


 支払いを済ませ、徒歩で真っ直ぐアパートに帰り、そのままベッドに腰を降ろすと新たに手に入れたオモチャを取り出した。

バッテリー残量が15%しかなかったが、お試しで使う分には問題無い。


 早速、教わったようにアプリを開いて絵を描いてみた。

昔、爺さんが使っていたと思しきお絵かきソフト ——当時はアプリと呼んだらしい—— をタップすると、真っ白なキャンバスが表示され、左端に描画ツールのアイコンが縦に並んでいる。

初見でも、どれが何の機能なのか、ひと目で分かる作りなのは好感が持てる。

早速、『筆』をタップして選択し、キャンバスを指でなぞってみる。

ツルツルの強化ガラスを指でなぞると、多少のタイムラグはあるが思った以上にスムーズに線が引かれていく。

描画ツールの種類は豊富で、単なる線だけではなく油彩や水彩を模した効果が出せるものあるし、描画エフェクトも面白いのだが、指の下のどの辺りに線が引かれているのかがよく分からずスクリブル ——落書き—— にしか使えないような気もする。

 慣れれば問題無く使えるようになるのかもしれないし、データをVプロに移行出来ればそれなりに実用性が見出せるかもしれない。

だが、Vプロのライセンス保持者なら、無理にそこまでする必要は無いだろう。

それでも、ベッドに寝転がりながら使える疑似Vプロは、これはこれでお遊びにちょうど良いかもしれない。


「Vプロはライセンス、高けぇし絵の具が無くても描けるんだから俺にはちょうどいいのか」


 ひとしきり落書きを楽しんでから、オールドネットに接続して検索も試してみた。

さぞや古代の遺物みたいな情報しか出て来ないんだろうと思っていたのだが、意外や意外。

今のニュースも普通に配信されており、文字と写真情報だけでなく動画も見られるようになっている。

近隣の情報を検索してみたら、歩いて行けるパン屋の新商品記事まであった。


 俺はオールドネットが今でも機能しているとは知らなかったし、ニュースもGATEネットで配信されるものが全てだと思っていた。

12万の出費は少し痛かったが、レトロなお絵かきソフトと新たな情報ツールが増えたと思えば、すぐに元が取れそうし、店主が言うようにけっこう楽しいかもしれない。


 そういえば店主が「画家ならエゴサしてみろ」と言っていた。

エゴサとは、昔の流行語で自分の名前で検索することだという。


 早速"坂崎翔画"と入力して検索ボタンをタップすると、数秒後に表示された検索結果は予想外だった。

1000件以上の検索結果が表示される事態に直面し、検索キーワードの入力ミスを疑ってしまった。

 俺は鳴かず飛ばずの無名作家だし、1件もヒット無しだったとしても納得しただろう。

2度見直したが検索ワードに入力した名前は間違っていなかったので記事タイトルを上から眺めたが、全く身に覚えのない話題ばかりだし、サムネイル画像も見たことが無い作品ばかりだった。

日付順でソートすると、最新の記事ですら50年以上も前だと分かった。

 昔、同名の作家がいたことは初耳だったため、好奇心から記事を開いてみると、この坂崎翔画氏も同じく心象風景を得意とする画家だったという。

顔写真も全くの見ず知らずではあったが、それでも坂崎翔画大先輩だ。

好奇心と親近感から記事をいくつか開いて見たが、ほとんどが展示情報と美術館のヒストリーばかりだった。

面白い発見は、大先輩も同じ新大宮市で活躍していたという事実だけだった。


 研究所はどうだろうか?

"タチバナ波動物理研究所"で検索してみると、当然のごとく大量の情報で画面が埋め尽くされた。

研究所の沿革、歴史、進行中のプロジェクトやニュースリリースに混ざって、個人発信のネタ記事が大量に溢れている。

この中から目的の情報を見つけ出すのは困難を極めるに違いない。

 同様に、GATE技術を検索してみると、当然のごとく技術資料が山ほど出てくる。

試しにいくつか開いてみたが、所長から聞いた説明ほど分かり易いものは見つからなかった。


 では、橘所長についてはどうだろうか?

これまでの経歴や華々しい成果が大量に出て来る一方で、個人相手とは到底思えないほどに大量のバッシング記事が出て来た。

中にはテロで家族を無くしたのを、さも当然の報いのように書いたものなどもあって見るに堪えない。


 何気なくタップして開いた記事は、テロの顛末を書いた記事だった。

所長から聞いた話しとほぼ同じ内容のようだが、冒頭を読み始めたタイミングで画面中央に点滅する赤いバッテリーマークが表示された。

右上角を見るとバッテリー残量が5%まで下がっていた。


続きはまた後日、満充電後だ。


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