第9話 買い物へ
ルカはその後もちょくちょく学校を休むことが多かった。
ニュースで大きな戦争や、争いがあると、もしかしてルカが絡んでいるのかなと思うが、本人は特に何の感慨もなさそうに、しれっと学校に登校して来る。
クラスメイト達も慣れて来ると、ルカに構う奴は次第に減っていった。
話しかけても、まともな返答の出来ないルカを持て余し始めたと言っても良いだろう。
そして、放課後
「ねえ、買い物付き合ってくれない?荷物持ちに」
由香里が買い物に誘って来た。たまにある事だが、念のため釘を刺す。
「財布には何ねーぞ?財布なら他の男をあたれ」
「蒼介のお財布宛にする程貧乏じゃ無いから!良いから行くよ」
「おーい!雪人は?ヒマ?」
雪人の方を見る。
「悪いけど塾あるから」
「夜からだろ?」
「予習しとかないとな。じゃあな、デート頑張れよ」
最後の言葉は由香里の方を見て言った。
「そんなんじゃ無いってば」
由香里が腰に手を当ててぷんぷんと言った様子で怒りを表明する。
しかし、今から予習か……真面目かよ。こんな田舎から東京の有名大学目指すにはそれくらいの気概が無くちゃダメなのかな……。
雪人の成績の評価が悪いのは、
うちの学校は中間期末テストの内容が授業でやったことが反映されたものが多いから居眠りしてる奴には流石に厳しいのが理由だ。
しかし、全国模試的なのはキッチリ点数とって成績上位者だ。
学校の成績の方は気にしていないらしいので、塾の方の勉強に夜遅くまで勤しんでいるっぽい。
だから授業中は寝てばかりいるのだろう。
俺はまだ受験とかは考えたく無いな……。
「よし!行くぞ!」
気を取り直して由香里に声を掛ける。
未来のことは未来の自分に託して、荷物持ちとしての領分を果たすことにした。
「あれ?星名さん、何か用?」
由香里が振り向いてルカに聞く。
「買い物行く」
「……えっと、星名さんもついて来たいって事?」
「ついて来たい」
ルカのキラキラとした灰色の大きな瞳がジーッと由香里の瞳を捉えて離さない。
「う……」
無垢な瞳に由香里が気圧されている。
蒼介も倉本先生からルカの世話を頼まれていたのを思い出すと無碍にしづらい。
「じゃあ……ついて来るか?」
「ついて来る」
ルカがコクリと大きく頷いた。
由香里が大きくため息をついた……付き合わせて悪いな。
バスに乗り込む。
他の席も空いているのに、何故か瑠ルカは多分知らないオジさんっぽい人の隣に座る。
オジさんが急に隣を占拠した銀髪美少女にビビって、鞄を抱きしめて微妙に縮こまっている。なんかすんませんと心の中でオジさんに謝る。
とにかくルカは目立つのでバスの中の人達がそれとなくチラチラ見てるし、隣の席のオジさんもチラ見してるが、ルカは気にも留めずにオジさんの向こう側の窓の外を眺めている。
お前も周囲を気に留めてくれ。
バスが停まったのは、大きめのショッピングセンターだ。
「夏モノの服そろそろ欲しいからね。
……星名さんは何か欲しいものあるの?」
由香里に話を振られて、ルカは間髪入れずに答える。
「青木蒼介」
「ん?何?何で急にフルネームで蒼介の名前呼んだの?」
「まあ良いじゃん。星名も引っ越して来てから、ゆっくり買い物とか出来なかったみたいだし、星名も服買えば良いんじゃ無いか?」
蒼介の言葉に由香里が納得する。
「そっか、ここ来るの初めて?」
「初めて」
「じゃあ案内してあげる!」
女子同士で打ち解けてきて良かった。
あ、そうだ、倉本先生に連絡入れとかないと。
……よし、女子二人の買い物か、長くかかりそうだな。
蒼介は今のうちから覚悟を決めた。