第6話 両親
夕飯はいつもなら残業してる筈の父がいること以外はいつもの通りだった。
が、もちろんそれだけでは終わらなかった。
「蒼介、話がある。美空は自分の部屋に行ってなさい」
父親は意を決して、と言った表情だ。
「はーい」
美空が素直に返事をし、階段を上っていく足音が聞こえ無くなったところで、父親は口を開いた。
「今日な……父さんの会社に政府の、行政の人達が来たんだが……
お前のところにも来たんだろ?
瑠璃ちゃんのこと、父さん達も聞いたよ。
それで、宇宙人の女の子と仲良くしろって言われてるんだろ?
お前はどうしたい?父さん達はお前の味方でいたいと思っている。
お前が嫌な事は嫌だと言っても良いと思う。
どうなんだ?」
「……大丈夫だよ。宇宙人と言っても見た目は……まあ普通だし。
ちょっと風変わりだけど、別に普通のクラスメイトとして接していくつもり」
色々思うところはあった。
嫌だと言っても、多分両親は蒼介を守る力は無い。
両親の事は尊敬していても、完璧で何でもできると思うほどには、もう蒼介も子供じゃ無い。
「……そっか」
父親は明らかにホッとした様子だった。
母親は少し複雑そうな顔を一瞬したが、キッチンに向かい何も言わずに食器を片付け始めた。
「そうだ、今日みたいに遅くなる日は電話の一本もかけろよな、
母さんが心配して……」
父親が遅くなる時は、普通に連絡なんてしないくせに勝手なものだ。
だが、状況が状況だし心配したのは父親もなのだろう……なので、素直に謝る。
「うっかりしてたよ。ごめん」
「いや、まあ、今後気をつけて……」
そう言いつつ、父親はリモコンに手を伸ばし、テレビをつけた。
国営放送のニュースが流れる。
――日本海軍の第6艦隊が攻撃を受け、壊滅的被害……政府関係者は……
「最近多いよな……こう言うニュース」
母親が冷蔵庫から出した冷えたビールを飲みながら、父親はチャンネルを回す。
そう言えば通学中もデモとかやってるのを、よく見かけるようになって来てるな。
戦争反対とか、徴兵反対とか。
日本軍もだけど、アメリカ軍とかもっと頑張ってくれれば良いのに。
と言うか、宇宙人の侵入を許してる段階で、地球人同士争ってる場合じゃないのにな。
「じゃあ、俺風呂入ってくるから」
テレビの音楽番組のゲストの歌手の顔ぶれが古臭いのを確認して、蒼介は興味を失った。
父親にはドンピシャの懐かしい青春メロディーだったらしくて、テレビの画面を眺めている。
画面に先ほど見たニュースのテロップが上の方に表示されている。
――中国政府は関与を否定する声明を出し……周辺ではオーロラが観測されたと言う情報