表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/41

第39話 瑠璃を追って

「蒼介!放っておけよ!暫くしたら天野の頭も冷えるんじゃ無いのか?」


 雪人が蒼介の隣から声を掛けてくる。

 瑠璃は謎の俊足っぷりだ。

 昔はめちゃくちゃ足遅かったのに。

 宇宙人の治療だけじゃなく、改造手術も絶対受けてるだろこれ!


 段々と距離が離れていっているが、閑散とした場所に移動してきているために、まだ何とか見失いはしない。

 畑や何かの工場だか、倉庫だかのある場所まで来てしまった。

 学校から近い場所だが、普段は用事がある訳もないので、こんな所には来ない。


 ルカは流石の走りを見せている。

 蒼介たちと瑠璃の中間くらいを綺麗なフォームで走っている。

 おそらく蒼介たちに合わせてスピードを出しすぎない様にしてるのだろう。


「そうそう……失恋したら一人で放っておいて欲しい……はず……だから!と言うか……あたし!も!そうして……欲しいんだけど!!」


 後ろから苦しげな由香里の声がする。由香里は運動神経は悪い方じゃ無いとはいえ、宇宙人と宇宙人改造手術疑惑と男子についてくるのは大変で、息が上がっている。


「んんー……それじゃ困るかなー?」


 モモが頬に手をやり、困った困ったと変なアピールをする。

 こちらは地球人女子ではあり得ない余裕を見せている。

 驚くほど早いのに、動きはテケテケと内股で女の子らしさ満点の可愛らしさだ。

 足の速度と上半身のおっとりとした仕草が合ってなくて正直不気味だ。


「よーし!だったら由香里ちゃんが人質になってね!」


 いきなり由香里にガバッと抱きついた。


「え?」


 モモの背中から一対のウィングが制服を突き破って生えた。


 ウィングが七色の光を帯びて、飛び立つ直前……


「行かせるか!!」


 雪人がモモにタックルする様に抱きついた。


「いたあ!」


 由香里は雪人が抱きかかえる様にして守られていたために無事な様だ。

 雪人も無事に見えたが……


「うーん、邪魔するなら……殺さないといけなくなるよう?」


 ももの腕がパカりと開いて、中から銀色の筒。


「……変な時期に三人次々と転校してきたり前々から不審には思っていたが、やっぱり人間じゃ無いのか!?」


 雪人が由香里を庇いつつモモを睨みつける。


「雪人……」


 由香里が雪人の服にギュッとしがみつく。


 モモの腕の中にあった筒が少しずつ光を集め出す。


「やめろ!!」


 蒼介が駆け出すが、間に合わない!


 ――ガンガンガン


 金属同士がぶつかる音が響いた。


 光る筒にルカの手のひらから飛び出した小さな銀色のプレートが突き刺さる。

 

 「うわ!壊れる!壊れた!逃げて!」


 モモが蒼介、と言うよりルカの方を見ながら叫ぶ。


 ルカが蒼介に抱きつき覆い被さる。背中から金属プレートが大量に飛び出して、ルカと蒼介を覆う。

 ルカは胸に蒼介の頭をギュッと抱きかかえた。

 蒼介は膝を降り、ジッと動かずにされるがままだ。


 ガンガンガンガン……!


 金属に金属がぶつかる先ほどよりも高い音が響いた。


 その音はそんなに長く続かず、すぐに止んだ。

 ルカの背中のウィングがすぐさま収納される。

 


「雪人は!?由香里は!?」


 蒼介は、ルカを抱き起こしながら、立ち上がり確認する。


 モモはへたり混んでいた。頬に深い裂傷が刻まれている。

 赤と銀色の液体が制服に伝う。

 腕の銀色の筒がひしゃげて長さが半分になっていた。

 その金属らしき破片があちこちに飛び散っている。

 頬の怪我は酷く見えるが、命に別状はなさそうだ。


 由香里も無事な様だった。よく確認しないとわからないが、無傷の様だ。


 ……雪人は、背中に足に、歪な金属のかけらが刺さっていた。

 モモの腕の兵器の破片だ。

 

 雪人は脂汗をかいている。

 由香里が倒れ伏した雪人に寄り添い、声をかけている。


「しっかりして!そうだ……きゅ……救急車……」


 由香里があたふたと携帯電話を取り出す。

 

「待って。倉本那月に連絡を入れてある。来るからあなたと白石雪人はここで待っていて」


 ルカは由香里から携帯電話を取り上げてしまった。

 ルカが倉本先生に連絡してる姿は見ていないが、宇宙人の超技術で何かしたのだろう。

 

 由香里は頭が回らないのか、携帯電話を奪われても、文句も言わなかった。

 それに、先ほどのルカやモモから出てきた兵器についても聞かなかった。

 今は怪我をして意識が朦朧としている雪人のことで頭がいっぱいなのだろう。


「うー……強硬手段に出るしか無いのか」


 呟きながらモモがだいぶ距離を引き離した瑠璃の逃げた方に走っていく。

 

「くそっ!由香里、雪人のこと頼むからな!」


「う、うん!」


 蒼介は瑠璃を追うことにした。

 ルカももちろんついてくる。


 そして、一際大きな倉庫の前。

 関係者以外立ち入り禁止の看板を無視して入った先に、

 瑠璃とモモ、そしてクウロが待っていた。


 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ