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第38話 三人目のの転校生

 「はじめまして、天野瑠璃です。

 百々瀬さんと星名さんとは親戚で、蒼ちゃん……青木君とは幼馴染みなので、同じクラスになれて心強いです。

 皆さんと早く仲良しになりたいと思っています。

 よろしくお願いします」


 ぺこりと頭を下げる。

 制服は用意が無かったからと前の高校の制服を着ているが、倉本先生達が用意できなかったと言うのは、何となく嘘っぽい気がする。

 サイズはルカと一緒だろうし、替えがあるはずだ。

 おそらく、人気のある聖アンデレ女学院の制服姿をクラスメイト達にお披露目したいのだろうと見当をつける。

 

 そして、クラスが三人目の美少女転校生に大いにどよめく。


 何と言ってもルカと同じ顔だ。

 しかし、髪や目の色、服と、話し方、そして身のこなしが違うと意外と違って見えるからか、親戚と最初に説明されて仕舞えば、不自然に思うまでには至らない様だ。


 「それってアンデレ女学院の制服だよね!めっちゃお嬢様じゃん!うわーかっわいい!ちょっと憧れてたんだよね。ねえねえ、なんでうちに来たの?」

「星名さんと顔そっくりだね!双子みたい!」

「青木と幼馴染みか。あいつ羨まし過ぎる」


 周りに人集りができる。

 モモも転校してきた時は、それなりに卒なくたいおうしていたが、瑠璃はそれ以上だ。

 元々が天性のお姫様気質なのだ。

 なんなら、蒼介が絡まない時の方が、ワガママが少なくなって、ちゃんと周囲と良くやっていけると思われる。


 雪人がそんな様子を苦笑しながら眺めて、コッソリ教えてくれた。


「彼女、アンデレの姫君って呼ばれてたらしいよ。元カノに聞いたけど、教師からも特別扱い受けていたってさ。

 まあ……関係性は早めにハッキリさせとか無いと、後々大変になりそうだから、気をつけろよ」


「ああ……」


 しかし、瑠璃は学校では他のクラスメイト達、男女問わず多くの人に囲まれていて、中々話しかけられず、放課後では、由香里と牽制しあっていて、蒼介が下手な事を言えば火に油を注ぎそうで、怖くて口が出せなかった。

 

 そして、いつの間にか段々とクラスの中心になっていく瑠璃。

 女子には高価なアクセサリーや、化粧品を自分には合わなかったからと碌に使っていないものを渡し、男子にはいつものくるくる変わる愛らしい表情と仕草で魅了していった。


 そして、瑠璃は常に蒼介と一緒にいたがった。

 それを周囲に隠すどころか、蒼介との関係を女子達に相談ているらしかった。

 モモもそれに味方した。


 ルカも一緒にいつも蒼介について来ようとしていたが、周囲の圧力で、隣の席なのに話をすることが減ってきてしまった。


 ルカの表情は変わらなかったが、ルカは今の状況をどう思っているのか、蒼介は気になっていた。


 いつしかルカと由香里に対する風当たりが無視できないほどに強くなる。

 そして、佐々木達がまた蒼介に突っかかった。


「ちょっと、ユカリン!瑠璃に冷たすぎるんじゃ無い!?転校してきたばっかで不安がってるんだから優しくすべきでしょ!」


「べ……別に冷たくなんて……」


 よく口論している由香里はゴニョゴニョと語尾が弱い。


 佐々木はその態度に勝機をみて、畳み掛ける。


「ユカリンは青木君に振られたんでしょ。

 いつまでも自分を振った男に縋るとかカッコ悪ーい!ねぇ?皆んなもそう思うでしょ?」


 仲のいい二人に同意を求めて、うんうんと頷きあう。

 その様子に、結局少し前の騒ぎのことは反省してなかったのかと、蒼介はカッとなった。


「おい!お前ら由香里の味方じゃなかったのかよ!」


 佐々木は強気で言い返してくる。


「でも、青木君は由香里を振ったんでしょ!違うの!?由香里と付き合うの!?」


 クラスメイト達の目線が集まっているのがわかる。


 由香里とは付き合えない。その結論はとおに出ていたのに、ハッキリと由香里に表明したことは無かった。

 瑠璃の出現にバタバタしていて、言い損ねていた。

 ……言い訳をさせて貰うなら、ハッキリと由香里を振れば、瑠璃が調子に乗って由香里に強い態度に出ると思ったから……、

 いや、それも言い訳か。

 それなら、瑠璃も同時に振ってしまえば良いだけの話だ。

 結局、自分の気持ちをハッキリさせずに、嫌な事を避けて、良い気になっていた蒼介のせいだ。

 

「俺はルカが好きだ。

 だから、由香里とも、瑠璃とも付き合えない。……由香里ごめん。瑠璃も、もう小学生だった時の俺達じゃ無いんだよ」


 由香里と、瑠璃の目を見て言う。


 由香里は無言で俯いた。


 そして、瑠璃は、


「ひどい……ひどいよ……蒼ちゃん!

 私を弄んだのね!?」


 瑠璃は大きな瞳に涙をいっぱいに貯めた後、ポロリと一筋零れ落ちてから、踵を返して教室を飛び出す。


 「あーあ、もう!そんなに、ハッキリさっぱり振るとか思わなかったぁ!

 ほら、追いかけた方が良いんじゃない?」


 蒼介が追いかける。ルカと由香里、雪人、そしてモモもくる。


 ルカが蒼介に並走しながら聞いてきた。


「私と蒼介は恋人になったの?」


「ああ!そうだよ!よろしくな!!」


 こんな雑に告白することになるとは思わなかった。

 後でやり直したいけど、今は更なる面倒ごと回避のために瑠璃を捕まえないとだ。

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