第34話 月曜
月曜日の朝。
いつもよりも果てしなく思い足取りで教室に着いた。
瑠璃のことを倉本先生に聞こうかとも思ったが、抜け出したのは秘密なら、藪蛇になりそうで黙っているしかなかった。
本当は防衛省の人なら瑠璃が生きているのを知っていたはずなので、問い詰めたい。
だが、蒼介は先生を問い詰める気力が無かった。
……由香里怒ってるかな。
というか、ルカと同じ顔の瑠璃のことどう思ったかな。
告白されてすぐに見覚えがある様な無い様な女の子とのデートを目撃されたのだ。
誠意がないというか……。
でも、別に付き合ってるわけでも無いし……。蒼介の由香里に対する気持ちはもうハッキリしてるから、早く言わなくちゃいけないと思っているが、
色々気まずい。
だめかな?このまま友達でいて欲しいとか。
教室には既に由香里が来ていた。
目が合う。
しかし、フイ……と由香里はすぐに目を逸らして、友人たちとの会話に戻る。
……あぁああああ
内心かなり落ち込みながら、自席に向かう。
「おはよー!辛気臭い顔だね!」
モモはニッコニコだ。
表情に出てしまっているのか……だとしても人が落ち込んでるのを見て何が面白いんだこの宇宙人2号。
「おはよう。星名もおはよう」
「蒼介おはよう」
ルカはいつも通りに見える。
その変わりのなさに何となくホッとする。
どうしようどうしようと思いつつ、放課後になった。
雪人が声を掛けてくる。
「なあ、藤野と何かあったか?
……振ったのか?」
後半は声を潜めてくれた。
「いや、なんというか……」
雪人に言うのは憚られるが、しかし、言わないのは、ちゃんと自分の気持ちを表明してくれた友人への誠実さに欠ける行為だろう。
「なんか今後について考えてみて欲しい的なこと言われたんだけどさ……。
タイミング良く?悪く?……こっちに引っ越してくる前の幼馴染みの女子に再会して、二人で話してるところを由香里にバッチリ見られたというか……」
「……なるほどな。
もしかして、その幼馴染みと昔付き合ってたとか?」
ぎくり……雪人はなかなか鋭い。
「小学校低学年の頃の話だから付き合ってるとかはねぇよ。
ただ……まあ、親同士も仲良かったし、ニコイチって感じでいつも一緒だったからさ。
まあ…………昔は好きだったんだけど」
雪人がふーんと面白そうな顔をする。
「初恋ってやつか」
「まあな……」
そんなヒソヒソ話に無粋に割って入ってくるやつがいた。
「ねえねえ!それ瑠璃ちゃんの話でしょ!今日ねー、瑠璃ちゃんも勉強会来たいって言ってたよ。
だから良いよって言って場所教えといたから!」
「はあ!?」
モモの良く通る大きな声は確実に教室の隅から隅まで響いた。
「そっか、あの子瑠璃って言うんだ?」
由香里がいつの間にか背後に立っていた。
ひぃ……!?ホラーの演出!!
「紹介してよ。あたしもぜひ会ってみたいな」
由香里の笑顔が怖くて何も言えずに、蒼介はコクコクと無言で頷いた。




