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第27話 必ず助ける

 ルカの不審な様子は続く。

 勉強会でもどこか元気が無く、蒼介どころか由香里やモモが話しかけても無言のままでじっと固まる様になってしまった。


 由香里と近所のコンビニまで買い出しに行く道すがら、ルカの話になる。


「星名はどうしたんだろうな。

 淡々として何事にも動じないイメージがあったのに」


 蒼介は結構本気で心配になってきている。


「あんた何か酷いことしたんじゃ無いの?」


 由香里が意地悪く言う。まだ、ルカの異変をそこまで大袈裟には考えていない様だ。


「冤罪だ……!」


 蒼介は大袈裟に嘆いて見せる。

 が、由香里に疑いの眼差しで見つめられているのを見ると、半分くらいは本気で疑われている様だ。

 ……俺ってそんなに信用ないか?


「まあ、俺の方でも気に掛けとくけど、由香里の方が女子どうしで通じ合えるところもあるだろうし、気付いた事があったら教えてくれ。


「……やっぱり蒼介って面倒見良いよね」


 由香里が目線を前に向けたままポツリと言う。


「そうか?」


「そうだよ。困った人放って置けないもんね。

 ……そう言うところ、好きだよ」


「え……あ、いや、ありがとう」


 好き、と言う響きに心臓がバクバク鳴ってる。これって由香里には流石に聞こえないよな?

 佐々木達姦しい3人の口々に言っていた言葉を思い出してしまう。


 ――青木君のことが好きだからって


 蒼介は首をブンブン振って記憶から引っ張り出された、その言葉を否定する。


「……何してんの」


 由香里が急に変な挙動をし始めた蒼介に呆れた声を出す。

 ほら、由香里は何でもなさそうだ。

 付き合い長い友達なんだから変に意識してどうする。


「何でも無い。早く帰ろうぜ」


 由香里の背中をバシッと叩く。


「ちょっと……!女叩くなんてサイテー!」


 バシッバシッと由香里が蒼介の二の腕を容赦なくたたいてくる。


「いってぇ!力強いって!男叩くのもサイテーだぞ!」


「うるさい!!」


 バシッバシッ!

 男女差はあれど、同じところ叩き続けるのは流石に卑怯じゃ無いですか?

 と、主張したいが更なる攻撃に晒されそうなので、仕方なく叩かれ続ける。


 何で俺ばっかりこんな目に遭うんだ!

 蒼介の嘆きを聞く者は居ない。


 そして、あくる日。


 教室に入ってすぐにルカの様子を確認する。

 ……ルカがスリッパを履いている。


 そこから連想されるのは

 古典的なイジメ。


 ただ少し俯いているルカ。

 蒼介はルカに近づく前に、教室の様子を確認する。

 ルカの方を見て、笑っている奴らを確認。

 佐々木達、蒼介にこの間話しかけてきた女子三人組だ。


「おはよ蒼介。何でこんな所で突っ立ってるの?」


 後ろから由香里が声をかけて来た。


「ああ、今から喧嘩する。加勢はしなくて良いぞ」


 どうやら蒼介の喧嘩っ早い性質は中学の時から変わっていなかったようだ。


 佐々木達の元に真っ直ぐに向かう。


「お前ら何笑ってるんだよ……」


 蒼介の声は普段より低く沈んでいた。

 佐々木の表情が少し引き攣ったが、すぐに笑顔を取り戻す。先ほどまでの小馬鹿にした笑みではなく、取り繕い平静を装った笑み。

 残り二人も顔を見合わせて同じ様な笑みを浮かべる。


「何のこと?何?あたしら笑ったらダメなの?」


 強がること女は何て名前だったか。


「ちょっと蒼介!何なの?どうしたの?落ち着いて!」


 由香里が止めに入る。

 蒼介は声を潜めつつ由香里に告げる。


「こいつらだ。こいつら星名に嫌がらせしてる」


「えっ!?」


 由香里が驚いて眼を丸くし口元を手で覆う。

 教室はいつの間にか、蒼介達の異様な空気を察してか、静まり返っていた。


「何か証拠はあるの?」


 落ち着かなげに反論してくる。が、


「俺は別に警察でも探偵でも無いから、証拠とか必要としてないんだ。

 お前らだってどうせ碌な理由も理屈も無く、大人しい女子虐めて楽しんでるんだろうが!」


 喋っているうちに興奮して来て、最後は教室中に響く様な怒鳴り声になってしまった。


「蒼介、落ち着いてってば!

 ……恵那、本当なの?どうして?」


 由香里が混乱しつつも、佐々木に問い詰める。

 佐々木は気が強そうな顔に似合わず、怒鳴られた驚きからか、瞳に涙を浮かべ始めた。


「だって……ソイツ青木君をキープしといて……高坂先輩を……振ったり……生意気なことして……お高く止まってて……」


「高坂先輩?」


 聞き覚えのない名前に蒼介が首を傾げると、


「ほら、前生徒会長の……」


 由香里が補足する。この間ルカに告白してた奴か……。

 ふむ、とイケメン前生徒会長の記憶を呼び戻す。

 つまり、モテモテらしきルカに嫉妬して?


 そこで、佐々木がキッと蒼介と由香里を交互に睨みつける。

 やっぱり顔立ちと同じくらいには気が強いのか。


「でも!青木君だって悪いんだよ!ユカリンのことキープしといて!

 星名さんや百々瀬さんと二股してて!

 あたしはユカリンの為に……!」


「ちょっ……ちょっと何の話!?あの、蒼介!違うから……」


 由香里が慌てて止める。


「違くないでしょ!あたしユカリンと同じ中学の子から聞いたし!ユカリンは青木君のこと好きだって!」


 佐々木は止まらなかった。自分の正当性を主張する為に。


「ちが……違うから」


 由香里が蒼介を見る。

 蒼介は何と言って良いかわからなかった。


 由香里が無言で踵を返して教室を飛び出した。


「ちょ、由香里!」


 モモが手を叩いてはしゃぎ出した。


「すごーい!漫画で見たのとおんなじだ!

 ほらほら!追いかけないと!」


 ニッコニコで蒼介の手を取り追いかけようとする。


「いや、お前も来るつもりかよ!」


「だって楽しそうなんだもん!」


 モモは悪びれない。


「くそ!」


 どう考えても由香里をモモのオモチャにするのは良くない。


「僕が行くよ」


 その時、少し離れたところで様子を伺っていたらしい雪人が、蒼介に声をかける。


「蒼介は百々瀬さんと一緒に、星名さんのフォローした方が良いんじゃないかな」


「ああ、頼む」


 確かに、由香里を追いかけて行っても、どんな言葉を掛けるべきか考えが纏まっていない。

 ここは何気にしっかりしてる雪人に任せることにしよう。


 本格的に泣き出した佐々木を木崎と佐藤?が慰めている。

 教室の他の面々はヒソヒソ囁きあっている。

 蒼介は全てを無視して自分の席に戻る。


「星名、上履き無くなったのか?」


 なるべく穏やかな声が出る様に、蒼介は意識した。


「無くなってない。壊れてた。スリッパを貸与された。新しいのは倉本那月が支給してくれる」


 ルカは俯いたまま答える。


「そっか……。困ったり、嫌な事があったら俺にも教えてくれよ。俺たち友達だろ?」


「迷惑かけたくない。蒼介は私のこと嫌だと思っている?」


「思って無いよ。思ってない。嫌なことあったら助けてやるよ。お前だって俺が困ってたら助けてくれるんだろ?」


 ルカが久しぶりに蒼介の眼を真っ直ぐに見つめた。


「助ける。必ず。私は蒼介を助ける」


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