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第20話 普通の日

 放課後、ルカと倉本先生の家で何故か勉強会をする事になってしまった。

 と言うのを早速朝イチで雪人を見つけた途端に廊下に連れ出して大いに愚痴る。

 

 因みに昨日家に帰ってからも電話で愚痴りまくった上で同じ話を繰り返し聞かせているので、雪人には良い迷惑かも知れないが、蒼介はとにかく儘ならぬ現状を吐き出しまくりたかった。

 勉強会は倉本先生も協賛してしまったので、蒼介には逃げ場が無い。


 「でも、楽しそうじゃ無いか」


 雪人は昨日の電話の時もこんな感じだった。本当にマイペースな奴で羨ましい。


「女ばかりに囲まれて肩身狭いんだよ……」


 しょぼくれる蒼介の姿にケラケラ笑った後、雪人がそれならと、


「じゃあ、僕もお邪魔しようかな。塾のない日とか。面白そうだし」


 そんな流れで雪人もたまに参加する事になった。

 宇宙人達も意外と大人しいし、倉本先生がいるから何とかなるだろうと言う判断である。


「うぅー、どの公式使うかわかんないよー」


「ほら、ここ見て」


 頭を抱えるモモを由香里が横からサポートする。


「公式覚えらんないよー」


「この参考書の方が教科書より解説わかりやすいと思うよ」


 雪人が何冊か本屋で買ったらしい参考書や、塾のテキストを持参してくれたので、それを見せてくれながら教えてくれる。

 二人に任せていれば正直、蒼介の出番は無さそうだ。

 何故か勉強は出来るらしいルカは、何故か勉強会なのにモモに持ち込まれた少女漫画全10巻を熱心に読んでいる。

 実写化もされた泣ける奴だか何だかだ。妹が持ってるけど蒼介は2巻の途中までしか読んでない。

 病気で死ぬんだか死なないんだかするけど、三角関係でナントカカントカ……。

 登場人物の顔と名前が覚えられなくて挫折した。


 倉本先生が学校とは違って、ラフな格好で飲み物を追加でだしてくれた。

 

「程々にしとけよ。夕飯時まで粘られたら何か食べさせないといけなくなるだろう?

 私のプライベートマナーで。

 そろそろお前ら帰れ」


「確かにもうそろそろ帰らないとですね。蒼介、藤野送っていってやれば?

 まだ明るいけど、そろそろ陽も落ちるし」


 雪人が参考書を鞄にしまいながら声を掛けてくる。


「そうだな。バス停の場所とか教えるよ」


「……余計なこと言わないでよ!」


 由香里が雪人に小声で何かの文句を言っている。男子が女子を送るのは確かに全時代的かも知れないが、宇宙人がそこらで人間のフリしてる昨今、警戒しすぎると言うことはあるまい。

 それに由香里も中々目立つ容姿をしているから、防犯的にも自覚した方が良いのに。


「どうせ同じバス乗るんだし、家まで送ってくよ」


「わざわざそこまで……」


 由香里はモゴモゴ言っているが、強くは反論しないし、了承したのだろう。


「良いよ、帰ろう。じゃあ先生、お邪魔しました」


「あいよ……百々瀬も帰れ」


「はーい……ちょっとルカちゃん!漫画返してよ!」


「まだ読み終わっていない」


「私の漫画なの!また持ってくるから!」


「今読みたい」


 ……宇宙人が漫画を奪い合うとか凄いな。宇宙規模で好評いただいてるなんて、きっと作者は知ったら泣いて喜ぶぞ。

 蒼介にはその良さは分からなかったが……もしかしたら、もう少し読み進めれば面白くなるのか?


「じゃあ私も送っていってね!」


 漫画を持ち帰るのは諦めたらしいモモが、蒼介の腕に抱きついてくる。

 わあ……胸が当たる。


「ちょっと!何してんの!」


 由香里がそれを引き剥がしにくるが、モモは離れない。

 ルカは由香里を引っ張っている。

 ……もしかしたら由香里をサポートしてるつもりなのか?邪魔にしかなってないが。


 気がつけば雪人はさっさと一人で帰ってやがる。薄情な奴め。


 宇宙人のいる日々は思いの外普通に過ぎていく。モヤモヤした思いを閉じ込めたままでいれば、穏やかにこのまま過ごせるんじゃないかと錯覚しそうだ。


 


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