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第19話 放課後の約束

そして放課後


「蒼介!この間は火事のせいで中途半端に買い物終わっちゃったから、今度こそとことん付き合ってよ。

 まさか、補習があるなんて事は無いでしょ?」


 由香里が満面の笑みで誘ってくれたが、


「そのまさかだ」


「え!?ウッソ!!そんな難しく無かったでしょ?」


「……お前ら何騒いでるんだ?」


 雪人がのんびり近づいてくる。

 こいつは授業中たっぷり寝てたからか、放課後には眠気が冴えて少し顔がキリッとしてくる。


「ちょっと雪人聞いてよ!蒼介のやつ補習だって!」


「声デカいぞ。勘弁してくれ……」


 蒼介が声を潜めて抗議する。

 由香里の声が良く通るせいで、他のクラスメイトの目線も集めてしまった。


「でも、今回の小テストかなり簡単だったぞ?何か調査でも悪いのか?」


 雪人は蒼介の大体の成績を知ってるので、割と本気で心配してくれている。

 蒼介はため息をつきつつ、携帯電話を弄ってるモモの銀色の後頭部を目線でジトっと見ながらボヤく。


「俺は付き合いで残るんだよ……察してくれ」


 由香里の眉が吊り上がった。


「それちょっと酷く無い?先生に一度文句言った方が良いよ。

 私も一緒に抗議するよ?」


 由香里は何やかんや情に厚いところがある。蒼介のために怒ってくれるのはありがたいが、やれ人類の存亡だ、政府がどうだと大人の事情が絡む案件のために、あまり関わってほしく無い。


「いや、まあ俺も面倒見るって約束した手前、そこまで直ぐに放り出したく無いからさ。

 それに俺の勉強にもなるかも知れないから普通に受けるよ」


 由香里はムムっと唇を尖らせ暫く押しだまったが、予想していない事を言い出した。


「じゃあ、私も残るから!」


「え……お前は必要ないだろ?」


 宇宙人絡みだから本当にやめて欲しい。巻き込まれるのは蒼介だけで十分だ。


「補習は別に誰が受けても良いはずでしょ。私も基礎の復習になるだろうし」


 由香里は自分の席にどっかり座って肩肘ついてテコでも動かない意思を見せる。


 まあ……宇宙人だなんてバレたりしないだろうし、言っても聞かなさそうだから諦めるか……


 蒼介は諦めの早い男だった。


「他には誰が受けるんだろうな」


 雪人が他人事のように楽しそうに聞いてくる。


「星名も付き合いで受けるよ」


 横の席を見る。

 ルカが蒼介の目線に気がついて見つめ返して来たので、サッと目を逸らす。


「クラスの美人に囲まれてハーレムじゃ無いか。どれが好みだ?」


 雪人がニヤニヤと意地悪く笑いながら揶揄ってくる。


「俺の好みは明るくて優しくて家庭的な子だ。……該当者いるか?」


 少なくとも宇宙人二名は絶対該当しない。由香里は……偏見だが料理とか苦手そう。


「僕も塾が無かったら参加したかったな。……じゃあな頑張れよ」


 雪人が片手を上げながら立ち去るのを蒼介は羨ましげに見送るしか無い。

 倉本先生が来た。

 

 補習の内容は簡単だが、意外と為になった。

 モモが思っていたより頭が悪いのが判明した。そして、ようやく帰れると立ち上がったその時、モモがくるりと背後を向き、


「ねえねえ、宿題手伝って!」


 両手を合わせて小首を傾げるポーズ付きで、蒼介にニッコリ笑いかけた。


「は?」


「だって私の現在の学力じゃ宿題わかんないんだもん!手伝ってよ!」


 帰りかけていた倉本先生が蒼介に一言だけ残して去る。


「面倒見てやれ」


「ちょっと先生!酷いと思いますよ!」


 由香里がここぞとばかり抗議の声を上げた。ありがたいが、ややこしくなりそうなので場を宥める為に蒼介は依頼を了承する。


「いいから、いいから。俺やるから」


「やったー!これからずっとよろしくね!」


 モモが両手をあげてぴょんぴょん飛び跳ねた。


「毎日!?今日だけならいざ知らず……んなもんやってやれっかよ!」


「百瀬さん!流石にズウズウしいと思うんだけど!?」


 由香里が頑張って蒼介の味方をしてくれている。因みにルカはボンヤリこちらのやり取りを眺めている。


「えー……由香里ちゃん厳しい。そう言う女の子って男の人から嫌われるよ」


 モモの言葉に由香里は口を噤んだ。


「いや、俺そこまで頭良く無いし……自分のやるだけで手一杯で……」


「じゃあ、由香里ちゃんも教えてくれれば良いじゃん!」


 名案だとばかりにモモは胸を張って偉そうに言ってくる。コイツ本当に偉そうだな。


「え、私と蒼介で教えるって事?」


 由香里がきょとんとしながら聞き返す。


「そう!」


「いや、流石に由香里の迷惑考えろよな……」


 由香里をそんなにガッツリ宇宙人達に関わらせたく無い。


「んー……私、蒼介もやるならやってあげても良いよ」


 由香里が制服のスカーフを弄りながら呟く。

 

「え、いや、やめといた方が……」


 蒼介は何とか考え直させようとしたが、


「じゃあ決まりね!よろしくね由香里ちゃん!私のことはモモって呼んで良いから!」


「……よろしくね、モモ」


「……うん!」


 モモが由香里の両手をとってニッコリと笑った。至近距離の無邪気な笑顔に、由香里も照れてはにかんだ。


 どうやら蒼介の意見は聞いてもらえそうに無い。

 

 

 

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