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第17話 空き教室での話

 倉本先生は甘めの缶コーヒーを一口飲んでから続けた。


「青木は百々瀬が星名と同じ星から来ていることは聞いているな?

 百々瀬は星名とは、同郷ではあっても、別の団体に所属しているらしい。

 そちらの団体は……まあ、地球の処遇について、ほしなの団体よりも、やや積極的立場を取ろうとしているようだが、先ずは地球人類についてよく知りたいとの申し出で、日本国政府の方で協力することになった。

 そして、私……というより、お前達のクラスになるなをご所望だったって訳だな」


 倉本先生もクールな人なのに困惑が隠せないようだ。


「しかし、コイツ危険ですよ!なんで政府は協力なんか……」


「科学力が違う。対抗手段がない。おもねり従うしかないんだよ。

 それに、協力すれば、彼女達以外の星から来た奴らを一掃してくれると言ってくれた。

 一応、格下の我々と交渉らしきものをしてくれるというだけでどれだけ有難いか……。

 これまでの星名の協力が別格過ぎただけで、我々は異星人に対して何かを要求できる立場には本来ないんだ」


 地球人の技術力の無さで、攻撃して来てる訳ではない宇宙人のゴリ押しには、基本従うスタンスなようだ。


「もしかしなくても俺が面倒見る感じっすか?」


 蒼介はゲンナリした顔で確認する。


「……頼むぞ」


「はーい!せんせー!科学技術ヨワヨワで我々に言い諾々と従うしかない地球人類様のせんせー!小テスト無かったことにしてくださーい!」


 モモが元気いっぱい手をビシッと上げて、居残り補習を免れようとしている。


「あー……お前は普通に赤点だったな。

 居残りはしていけ。青木はケアレスミスがあったが、それなりの点数だったな。

 でも、せっかくだから百々瀬に付き合って残ってくれ。

 星名は満点だ。よくやった」


「私も居残りする」


「ああ、したければしていけ」


 蒼介の意見が聞かれることなく何故か居残りさせられる流れになってる。


「意義あり!」


「ダメだ。青木には拒否権は無い」


「モモちゃん補習いやですー!」


「周囲に溶け込みたければ勉強も頑張れ」


 倉本先生はにべも無い。


「ちょっと待ってよ!

 そっちのルカちゃんは絶対私より周囲に溶け込めて無いよ。勉強だけできてもダメじゃない」


 モモの言うことはもっともだ。

 というか、ルカが勉強できるとは思わなかった。言葉はたどたどしいのにどういう訳だ。

 いや、そもそも、モモはどうやって現在の姿をしている?


「あのさ……百々瀬って人間食ったの?」


 ルカの例を考えれば、そう言うことになる。


「私はある地球人類の血を数回に分けて飲ませてもらって学習したの。

 こっそりね。

 時間はかかるけど、そんな噛み付かなくても血とかだけでも情報は結構取得できるよ。

 ルカちゃんは怪我して緊急性が高くて大変だったって聞いてるけど、

 一応、銀河系でも温厚と名高いルルハルカル人は滅多に未成年は殺さないよ。

 よほどの理由がない限りはね。

 言語もそれで取得したよ。ルカちゃんが言葉とか下手くそなのは、情報取得時に一人で急いでたからかもね」


「じゃあ……じゃあ、瑠璃は別に死んだりする必要が……」


 その時、倉本先生の携帯電話が鳴った。

 こちらに許諾を得るようなことは勿論せずに、サッと出て、一言二言、はい……はい……と答えてすぐに通話を切った。


「悪い、ちょっと人と会うから今日は解散だ。

 ……いや、補習で今日は再集合だな。

 パンは後は好きに食べてて良いから。机と椅子だけ元通りにしてくれれば良いからな」


 倉本先生は去っていった。

 短時間で大した話は聞けなかった。


 メロンパンの表面を指で摘んで丁寧に剥がしながら食べているルカを眺めながら、蒼介は物思いに耽る。

 本当は瑠璃は死ぬ必要無かったんじゃ無いのか?

 

 

 

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