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第14話 由香里と喫茶店で

 ルカはその後、防衛省の方から来たみたいな人達が黒塗りの車でショッピングモールの従業員用の出入り口から回収して行った。


 由香里に携帯からメッセージを送って、外で合流する。


「もう!二人して何なの!」


 由香里はご立腹だ。


「悪いな。星名は一人で先に帰ったよ。で、この後どうする?他行くか?」


 ここは火災という事になっているので、もう今日は買い物どころでは無いだろう。

 新たな宇宙人との邂逅は実に心躍らないイベントだった。

 すぐ殺そうとしてくるし、人類って野蛮みたいなことを言う人もいるけど、宇宙レベルだと、わりあい紳士なのかも知れなかった。

 ……嬉しく無い。歓迎すべきことでは無いな。


「そうなの?……じゃあ、帰るにしてもお茶でもしてからにしない?今日は時間あるし」


 由香里が大きな瞳で見上げてくる。所謂上目遣いだが、顔が良いからドキッとしそうになる。

 慣れてない奴はイチコロだろう。

 たまに見せるこうした女子らしい表情は、出会った頃は苦手だった。

 少しのあざとさの含む表情にかつての死んだ幼馴染みを思い出したからだ。

 瑠璃も大きな瞳で上目遣いで見てくる事が多かった。

 でも、由香里の明け透けな性格は、瑠璃とは似ても似つかなかった為に、苦手意識はいつの間にか無くなっていた。


 今では気の置けない大事な友人だ。

 

「そうだな、俺も暇だし奢ったりはしないけど、それでも良ければお供するよ。奢らないけど」


 蒼介のしつこい割り勘アピールに由香里は頬を膨らませる。


「最初から期待してないから!もう!」


「ほら、フグみたいに膨れてるぞ」


 頬を指でブスッと刺すと、キッと睨みつけてくる。おー怖顔赤くして怒りすぎだろ。


 蒼介は、由香里と親しくなったきっかけを思い返す。こいつは相変わらずだ。


 中学の時から由香里は、上目遣いだけでなく怒ると今みたいに頬を膨らませたり、所謂ブリッ子的なところがある為、他の女子から無視された時期があった。

 

 蒼介はそういうのに鈍感な為、空気を読まずに由香里に普通に接し続けてしまった為に、蒼介も他の女子から悪口を聞こえよがしに言われたりし始めた。

 他の男子は女子の軍団に怯えて由香里を一緒にハブっていたが、蒼介一人が気がつくのが遅かったのだ。

 そして、中学生の時の蒼介は反骨精神が溢れていたので、すれ違い様に悪口を言ってきた女子を追いかけて、もう一度大きな声で言って欲しいと粘着しまくる事で、由香里を無視を主導していた虐めグループの中心女子を泣かせた。

 泣かせた後も更なる反骨精神を発揮して、大きな声でもう一回言って下さーい、なんで言わないんですか?などど教師が駆けつけるまで煽り続けた。

 問題は大きくなって親を呼ばれるまでに至っている。


 そこから、由香里は蒼介によく話しかけてくるようになった。

 もしかしたら、中学時代に同じクラスになりまくったのは、由香里がまた虐められないように教師側で、一応役に立つ蒼介を同じクラスに配置しといたなんて事あるのかな?

 まあ、クラスの数がそんなに多く無かったから偶々かも知れないが、何か評価されてたのなら嬉しいかも知れない。


 なんやかんやで、説明したら親も教師も、やり過ぎるなよ……みたいな反応だったもんな。

 由香里には感謝されたが、由香里の為にやった訳ではなく、単に自分も悪口言われてムカついただけなのだ。

 今ではすっかり蒼介も大人しくなってしまったので、女子相手にそんな事して泣かすのは流石にもう出来ないが……。


 回想終了。


 そして、注文の仕方が複雑で、初心者殺しと言われるチェーン店の喫茶店、スターボトルコーヒーにやって来た。


「よくそんなカロリーの爆弾飲めるな……」


 生クリームがデデンと盛り付けられたコーヒーを名乗っても良いのか分からない謎の飲み物だ。

 一日分のカロリーがこれだけで摂取できたとしてもおかしくは無い。

 クリームの上にシロップも大量にかけられている。これを飲んだ後なら、冬山で遭難してもだいぶ生存率が上がりそうだ。

 ……飲んだ後に冬山登るシチュエーションはよく分からないが、とにかく今日を生き延びるのには良い飲み物だな、うん。

 本日そう言えば生命の危機に瀕した事だし、蒼介も過酷な世の中の生存率を上げる為に、ブレンドコーヒーに砂糖をいつもより多めに入れた。

 

 「男子ってすぐそう言う事言うよねー……いらん事言わなきゃ良いのに。このフレーバー新作だから飲みたかったの。偶に飲むくらい良いでしょ」


「偶にねぇ……」


 結構な頻度でクラスの女子と来ていることは、何となく把握しているが、ストーカーみたいだから言わないでおく。

 同じクラスになった4月ごろは、何となく由香里と他の女子との会話を耳をそばだててたのだ。

 高校では他の女子とも打ち解けているのが、同じクラスになって分かって実にホッとした。

 元々性格明るいし、オシャレだもんな。


「なによ?」


「別に……ほら、ホッペにクリームついてるぞ?」


「え、どこ?」


「そっちじゃ無いって、ほら、動くなよ」


 紙ナプキンで頬をそっと拭ってやる。


「……ありがと」


 由香里が唇を尖らせてソッポを向いて礼を言う。声が小さいぞ。


「うい」


 蒼介も適当に返事する。

 その後は飲み物一杯で元を取れるくらい二人で居座って、どうでも良い話に明け暮れた。

 お陰で宇宙人に命を狙われた事はすっかり気にならなくなった。

 

 

瑠花の地の文での表記を、視認性の観点からルカに遡って変更します。


昨日は更新なくて、今日も遅くなってすみませんでした。水分不足で頭痛で体調が悪かったようです。ポカリ飲みます。

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