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第12話 宇宙人モモ

 蒼介が追いかけてきているのは分かっていたが、ルカは無視して走り続ける。


 人間を元に作られたこの体は、通常モードでは人間以上の力は出せない。


 ルカに取り付けられた幾つかの機械は、モード変換を察知すると日本国の権力組織に通知が行くようになっているとの説明を受けている。


 許可の無いモード変換が確認された場合には、ルカの生活の一部に制限が掛けられると言われている。

 その一部の中には、未成年の学習施設である、高校、と言うらしい施設で蒼介と共に過ごす時間も含まれている。


 地球人類を救う為に来たルカが、当の地球人類に多少不当な制限を掛けられている自覚が無いわけではないが、

 蒼介を必要とするルカにとっては、地球人類の権力者の協力は必要不可欠だ。


 瑠ルカの体はすでに地球人類のデータを取り込んでいる為に、地球上に生存し続けるには困難は無いが、社会の一員として過ごそうと思ったら、一人では何も出来ないのだ。

 蒼介と友好な関係を築くためのコミュニケーションの方法に関する有用なアドバイスを受ける等のサポートも得て、今日はついに蒼介と必要物資の入手に共に来るまでに至れた。


 それに、ルカは両親から受け継いだ愛護精神を有しているので、文明的に劣った地球人類の社会的な決まりを、寛容さを持って守ってやろうと考えている。


 単純化した思考を送信する。

 相手は地球上におけるルカと権力者達の窓口である、倉本那月。

 先ほど受けたような情報量は携帯電話の様な機器を使う方が良いが、事前に登録している何種類かなやり取りならば、この身体と繋いでいる通信機を使った方が楽だ。


 ――申請、移動モードアルファ。事前仮申請戦闘モードアルファ。


 返答は直ぐに来た。


 ――許可。


 ルカの脚が速くなる。

 向かうのは地下の倉庫部分。


 そこに居たのは、一見して地球人類のようだった。

 このルカの身体の見た目年齢とそんなに変わらないように見える。

 肩口で揃えられた瑠花より短い髪の毛。

 薄紅色のワンピースの上に白いケープコートを合わせている。

 そして、同じなのは見た目の年齢だけでは無い。

 今の瑠花と同じ銀色の髪に灰色の瞳。

 唇の両端を少し上げて、目を細める表情を作っている。瑠花より上手な笑顔の作り方。


「lhygdiise ila」


 少女が話す母星語は懐かしく、しかし残念ながら発音がイマイチだった。


「下手」


 ルカが端的に指摘する。


「仕方ないよ。地球人類の声帯では発音が難しい音があるんだもん。

 私はモモ。ここで活動するのに使ってる名前ね」


 今度は日本語で答える。


「…………」


 どうやら日本語はルカよりは上手いようだ。


「あなたは私に何か用事があるの?」


 ルカは訊ねる。わざわざ地球人類に分かるように船を目撃させて、こうしてルカのいる所に来たのだ。


「私は調査に来たの。この地球ってところ、聞いていたより良いところみたいね。

 私が気に入ったら、ちゃんと母星に連絡して、もっと私達がそのままの姿で入植出来るように環境変えてって、偉い人たちに進言するつもり」


 その言葉にルカは少しムスッと表情を変えた。


「先住種族への敬意を忘れるべきでは無い。それに、私たちにとって良い環境は、地球人類には良くない。

 地球人類は私たちと違って、身体を作り変えられない。

 みんな死んでしまう」


 ルカにしては饒舌にモモを否定する。

 しかし、モモはその答えを予測していたように揺るぎない自信を笑顔に乗せている。


「だから、ね、そういった考えを変えて行く必要が、そろそろあるんじゃ無いかなって。

 だって、他の文明もここで遊んだりしてるフリしながら、調査進めてるじゃ無い」


「……遊んでるのは本当じゃ無かったの?」


 ルカはマナー違反の観光客を殺しているつもりだったが、どうやら地球を狙う陣営の偵察だったようだ。

 ルカ達よりは文明が進んでいない為に駆除は何とか一人でも出来ていたが、本陣が来たらルカではどうしようも無い。


「他所にとられる前に、私たちでとっちゃおうよ。

 あなたのパートナーさんも死んじゃえば、あなたは自由でしょ?」


「蒼介が死んだら私も死ぬ」


「もー!イマドキそんなの古いってば!どんだけ古臭い考えの親に育てられたの!」


 どうやら親を馬鹿にされたらしいので、ルカが苛立ちを覚えてると……


「おい!星名!……あれ?銀髪?……仲間?」


 蒼介が追いついてしまったようだ。

 場所は……施設内に音声でカジとかチカとか言っていたから、そこから予測したのだろう。


「うーん……あれがパートナーか。よし!殺す!」


 笑顔が可愛い銀髪の少女が笑顔のまま両手を蒼介に伸ばした。

 その両手が肘の先から八方向に広がり中から銀色の筒が露出した。


「いくよー!死ねー!」


 筒が白く眩い光を帯びる。

 

 

 


 

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