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私の日記

作者: 七瀬涼夏

 ある日、近所で一家殺人事件が起きた。外では赤いランプをクルクル回しながらサイレンを鳴らして、忙しそうに車が走っている。カーテンを開ければ野次馬なのか、人がうじゃうじゃと蛆虫のように次から次に集まってきた。SNSを開けば、トレンドに入っており、その中には万バズしているものもあった。本当に馬鹿馬鹿しい。ドラマやアニメでしか見た事のない黄色いテープは、その野次に呑まれ、外れかけている。それを警官が必死に引き止めて、「離れてください」だの、「撮れねえじゃねえか」だの、後ろから推されて圧迫されているのか、「痛い」と声が聞こえていた。まぁ私には関係ないと思い、カーテンを締めると、その部屋は自分だけの空間へと戻った。


 次の日、テレビをつけると例の事件が取り上げられていた。近所に住む人達のインタビューは知っている顔しかいなくて、これが全国に流されると思うと不思議な気持ちになった。

 せっかく私もインタビューを受けてあげたと言うのに、私のインタビューは取り上げられてなかった。

「この事件、とても大きな事件となっておりますが、どう感じていますか?」

「分からない。どうせ私は生きているのだから、どこの誰が死のうと関係ないと思っているし。」

「そうですか、ではあの一家はどのような御一家だったのか、教えて頂けますか。」

「優しかったと思う。五人家族で、穏やかな家族だったかな。記憶力が悪くて、あまり覚えてない。」

 昨日のインタビューの事を思い出しながら、目の前の丁度よく焦げ目のついたトーストを頬張る。それを食べ終えると、私は今日も茶色いローファーを履いて、学校に向かった。

 学校に着けばすぐに担任に呼ばれ、昨日の事件を聞かれた。

「昨日大丈夫だったか?一ノ瀬さんが無事で本当に良かった。」

「はい、全然大丈夫です。まぁ、元々犯人の的にはならなかったと思います。」

 私がそういえば先生は首を傾げた。

「なんでそう思う。」

「女の勘です。」

 先生は何か言いたげな顔をしていたが、私はスカートを翻し、教室へと戻った。

 昔、まだ私が生まれる前の事だけど、驚く程恐ろしい殺人事件があった。被害者の児童の頭部が校門に置かれていただとか、以前SNSで調べた際、加害者の描いた絵がどうにも正気の人間が描いた絵だとは思えなかった。それ程までも恐ろしかった。興味のある読者諸君は、また、時間があれば調べてみて欲しい。

 教室に戻るといつも通り静かで、一部の女子を除いて、皆自分の席で携帯電話を触っていた。一部の女子はまたいつも通り、私の席に居座って、退いてくれる気配はなかった。

「おはよう。伊藤さん。」

「ん、おはよ、玲奈。」

 声をかければそう返してくれるが、席を返してくれる雰囲気では無かった。仕方がないので私は荷物を机の横に掛け、御手洗に向かった。

 蛇口で手を洗ってふと鏡を見れば醜い誰かが映っていた。なんだ。私か。こんなにもまじまじと見つめるのは久しぶりだ。なんて醜い。隈をなぞる様に自分の目の下を触れば、爪の隙間には何かが詰まっていることに気が付いた。

「なにこれ、汚い。」

 幸い、爪の間を洗えばその汚れは直ぐに落とすことが出来た。

「ほんと、酷い隈。」

 そう呟くと心做しか、少し肩が重たくなった。

 教室に戻るともう既に皆自身の席に座っていた。まだHRが始まるまで数分時間がある。私は鞄の中から一冊の本を取り出し開ける。この人の本は私に夢を見させると言うより、現実を突きつけてくれるような本で、現実主義の私にはとてつもなく刺さった。この作者は様々な物語を書いているが、今私が呼んでいるのは旅日記のようなもので、一日一日が分かりやすく丁寧に書かれていた。風景を想像することは愚か、主人公の気持ちですらも容易に想像することが出来た。私はその人に憧れ、少しずつ毎日日記のようなものをスマートフォンのメモに記している。中身はほとんどない。そもそも、私の生活はそこまで濃いものでもないし、ただ、普通に何事もなく生きていればいいと思っている。

 そういえば、昨日はどんな文章を書いたんだったっけ。そう思い例のメモのアプリを開ける。

 ああ、そうだった。これだ。

「つまらない毎日が、一変しないかとずっと思っていた。もはや自然に一変することはないというのは分かっていた。だから私は自分の手で、変えようと思った。」

 そこで私の書いた文章は終わっていた。今日はどんな一日にしようか。

読んでいただきありがとうございました。

さて、皆様は日記を書いたことがありますでしょうか?私は三日坊主、いや、二日坊主と言ってもいいほど、物事が続かなく、日記を書こうと思い、日記帳を買いましたが、2日で終わってしまいました…。

日記を書き続けていれば、いつか自分の支えになるかもしれませんね。

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