海のある街
「そういや俺、見かけ変えることができるんだよね」
そう言った悪魔は、元カノの姿へと見た目を変えた。ちなみに、今日は海に来ている。白のビキニの上からパレオを巻いていて、お淑やかでとても綺麗だ。
「君さあ、そういうところ、ほんとに悪魔だよな」
ちなみに、肌を出すのを極端に嫌っていた元カノは、どれだけ頼み込んでも、海に行ってくれることはなかった。
「なに?不服?元の姿に戻ろうか?」
「滅相もございません。神様仏様悪魔様。感謝してもしきれません」
見た目が最高に好きだった女が、当時求めた最高の姿をしている、冥土の土産にこれ以上のものはないだろう。
「じゃあ一緒に泳ぎに行こうよ。君がやりたくてできなかったことを、今日は全部やろう」
「悪魔だなあ。支払いが不安になる」
そういえば何も対価を要求されていない。
「まあ、世界が終わるこの状況を知ってしまい、それでも最後まで付き合う、ってのが対価みたいなもんだからね」
「そんなもんか」
「やっぱ普通はもうちょっと取り乱したりするんだよ。そこも運次第でさ」
「ふーん」
俺と悪魔は海の中で泳ぎ、ビーチバレーをし、海の家で焼きそばを買い、海を満喫した。
「せっかくだから悪魔の姿にも戻りなよ。悪魔の君とも、思い出を作っておきたいからさ」
「そうかい?じゃあお言葉に甘えて」
羽根を生やした人間の姿に戻った悪魔と、砂のお城を作ったり、砂風呂をしたりしながら、夜まで遊び、俺たちは、宿へと帰った。
宿へ帰ると、悪魔はまた元カノに姿を変え、館内着の浴衣姿になってくれる。
「あのさあ」
「何かご不満でも?」
悪魔は少し肩を露出させ、上目遣いでコチラを見てくる。湧き出る自分の情動を抑えつけるのに必死だった。
「君に出会えてよかったよ」
俺は彼女を押し倒し、欲望のままに貪り尽くす。彼女は僕の深層意識で望んでた反応を、望んでいたタイミングで返してくれ、その行為は朝まで続いた。