移動屋台のおでん屋の親父です、物騒な客も来ます、でも客だからおでんを煮込みます
今日も親父はおでん屋の移動屋台を開いている。
いろんな客が来るが中には物騒な客もいる。
「さあて、ひと暴れする前の腹ごしらえだ!!」
「ボズンうるさいぞ、静かに食え」
「何だよバイダン、細かい事気にすんなよ」
「ボズン、バイダンは夜だから近所迷惑にならないようにしろと言っているのですよ」
「何だよ、そうならそうと言えよ」
「酒は静かに飲みたいだけだ」
「お前達ほどほどにしとけよ、これから大暴れするんだからな、シェン、計画はどうなってる?」
「うん、予定通り順調だよ、皆配置についているからいつでも準備OKだよ」
「わかった、食事が終わったらすぐに行くぞ」
『了解』
(何か物騒な話してるな)
近くにいるから客の会話が耳に入って来るため、おでん屋の親父はどうしてもその内容が聞こえてしまう。
(まあ、客だし何も聞かない方が良いな)
何も聞かないように親父はおでんを煮込むのに集中する。
「ところでボス、王城を攻めるのは良いけど、殺す相手は決まってるの?」
「全員だ、王族も貴族も使用人達もそこにいる奴等全員だ」
「本気なの?」
「今更怖気づいたか、ヘイン?」
「いいや、一応確認したかったんだよ、殺しちゃいけない奴もいるかもしれないと思って」
(王城攻め込んで王族貴族殺すって、こいつらヤバいんじゃないのか?)
そう思いながらも親父はおでんを煮込む手を止めない。
「殺しちゃいけない奴なんていないさ、あいつらは殺しても問題ない連中なんだからな」
(そうなのか? そういえばこの国の王族や貴族達の良い噂聞かないな、使用人達も自分達が偉いとか言って俺達みたいな平民をバカにしてるし)
おでんを煮込みながら親父は話を聞いていた。
「この国の王族貴族達は腐っています、目障りだから消すんです、それに仕えているからと言って偉そうにしている使用人達も同罪です」
「はっは!! 王族貴族嫌いのリーメイらしいぜ!!」
(悪い王族達を消すって事は、こいつら俺達のような平民からしたら正義の味方なのか?)
思ったより悪い奴等じゃないと思っている親父はおでんを煮込んでいる。
「王族貴族を全滅させるのは良いとしてその後はどうするんだ? 王族貴族がいないこの国を統治する奴がいないぞ?」
「心配無用だバイデン、そこもちゃんと考えてある、シェン」
「うん、どうやら王族の中にまともな奴が一人いるみたいなんだ、ただ身分の低い妾の子だから母親共々別の場所で暮してるんだよね、貴族にもまともな奴がいるしそいつらにその子を支えさせていけば時間は掛かるけど」
「平民達は国を捨てて亡命する選択はしなくて良いって事か」
(それは良かった、王族貴族を皆殺しって言うからどうなるかと思ったが、どうやら俺もこの国を抜けなくて済みそうだ、ていうか王族に隠し子いた事がびっくりだわ、これ俺聞いちゃってるけど良いのか?)
内心驚きながらも親父はおでんを煮込んでいる。
「さて、そろそろ時間だな、親父ここに金を置いて行くぞ」
「はいよ、って、え?」
親父は出された金に驚愕する。
(おいおい、明らかに飲み食いした代よりもらい過ぎだ、おつり足りるか!?)
「つりはいらない、思ったより旨いおでんだったからな、それと親父今日はもう店じまいした方が良い、この後少し騒がしくなるからな、できれば向こうの方へ行くと良い」
ボスと呼ばれていた男は王城とは反対の方角を差す。
そして男達は王城の方へと向かうのだった。
「・・・・・・今日はもう店じまいだな」
不思議と言う通りにした方が良いと感じた親父はそのまま店をたたんで男が言った反対の方に向かって移動するのだった。
読んでいただきありがとうございます。
アニメとかで重要キャラ達がバーとかの店で重要な話をしてる時に近くで聞こえてるはずだと思うキャラの話を書いてたら、おでん屋の親父が何か良いキャラに思えてきました。
第二弾も思いついたから今書いています。