~夏休みの幽玄物語~
初めてですが少量ながら書いてみました。
続きを期待しくれる人がいれば書きたいと思います。知って頂けるきっかけになれたらと思います!
―いつからだろう。こうなってしまったのは―
より明確になったのは高校に入ってからだ。歳を取るにつれ、
疑惑が確信に変わった。
「天野く〜ん、帰ろ〜?ってさっきから何してるの?」
「あぁごめん。なんでもない」
「またなにか見えてるの…?脅かさないでよ、、」
「一ノ瀬、肩に…」
「イヤァァァァァァ」
こいつは幼なじみの一ノ瀬。幼稚園からの同級生で唯一俺の秘密を知ってる友達だ。こいつが言った通り俺は幽霊が見えてしまう。どうやら俺は他の人よりも霊感が強いみたいだ。
「まぁ、でもお前が思ってるほど怖い見た目じゃないぞ?」
「おばけは何でも怖いの!!」
「あはは、まぁだよな」
荷物を一通りまとめ、帰る支度をする。気付けばもう外は茜色に染まっていた。
「ねえ、天野くん、幽霊ってどんな見た目なの?」
「結構いろんなのがいるぞ?さっき見えたのはなんか、こう、スライムみたいな、、」
「えぇ!?何それ絶対可愛い!見てみたい!」
そんな会話をしてる内にもう辺りは暗くなっていた。この時間帯は時間の流れが早く感じる。遅くなる前に俺達は学校を出た。
「じゃあ私はそこだから、帰ったら夏休み計画話そ!電話する!」
「うん分かった。気を付けてね」
一ノ瀬の家の近くまで来て俺達は別れた。俺の家はあと数十分って所だ。一ノ瀬が言ってたが、幽霊はそんなうじゃうじゃいる訳では無い。一日に一体見るか見ないか、まぁ墓地の前など明らかにいる見たいな場所は実際本当にいる。
そろそろ着くくらいか、などと考えながら緩く歩いていた。
「ばぁっ!」
曲がり角からいきなり人が飛び出してきた。
「うわぁっ!、、一ノ瀬!?」
「びっくりしたでしょ?怖いの我慢して隠れてたの!お化けとか怖がらないからびっくりした顔新鮮〜♪」
俺を感情ない奴とでも思ってんのかこいつは。そんなの誰でもビビるわ。
「びっくりするよそりゃ、んでなんでここに?」
「もう少しまだ話してたくて、 ほら!まだそこまで遅い時間じゃないし?天野くんが良ければ、」
別に大した用事も無いので俺は一ノ瀬と神社の中の公園で話す事にした。
「なんかごめんね、さっきバイバイしたばっかなのに、」
と漫画でよくある てへぺろ 見たいな仕草をする。
全く呑気なやつだ。
「でも、夜に1人でここに居たのは凄いな、お前本当に一ノ瀬か?」
冗談混じりでそんな会話をしていた。一ノ瀬はどこか落ち着き無さそうだった。流石に怖かったのかなと少し口角が上がった。
「んで話ってな―
―ピロリロリン―
着信音が一通、夜の街に響いた。
親からだろうか。相手を確認する。
「一ノ瀬」。
俺の思考は一瞬止まった。確かに目の前には一ノ瀬がいる。
しかし、俺にかけてる様には見えない。そもそも目の前の一ノ瀬から着信の音はしないのだ。
「ごめん、ちょっと電話」
そう言って一ノ瀬の様子を探ってみた。
「うん!わかった!」
まるで他人事の様だった。そして、一ノ瀬が帰り際、帰ったら電話すると言ってた事を思い出し俺は確信した。
こいつは一ノ瀬じゃない。
分かった瞬間俺は全力で後ろに走った。親指が緑色のボタンを押す。
「やっほ〜着いたy……」
「一ノ瀬!今どこだ!」
俺は走りながら電話に出た。いきなり大声を出したので一ノ瀬も驚いていた。
「い、家だけど、どうしたの!?」
やはり家に着いていたようだ。後でかけ直すと言い、俺は電話を切り、後ろを振り返る。
「待ってよ!どうしたのいきなり!」
と言いながら俺を追いかけてきてる。そんな事はどうでもいい。俺は逃げる事にだけ集中した。
「待ってよ天野クン!天ノクン、マッテヨ」
明らかに声が変わったのが分かったのと同時に、いつも幽霊に感じる感覚とは全く異なる、明らかに危険だと体がそう反応している感覚が体をよぎった。
「マッテマッテマッテマッテマッテマッテマッテマッテマッテマッテ」
だめだ。追いつかれる。
分かっていても足掻くしかなかった。あと一歩。
あ。
重心が段々前にかかり、視線が下がっていき、頭に大きな衝撃がかかった。視界が徐々に暗くなり、真後ろまで来ている事だけが分かった。
「ツーカマエt…………」
微かにその言葉だけ聞こえ、途中で途切れた。死んだのかな俺。心臓の鼓動と鈴虫の音だけが聴こえる………
「……い…………おい……」
誰か呼んでる。誰だろ、あ、ちょっと目開いた。……… 人…?
仕事帰りのサラリーマンかな救急車とか来るのかな。ん?なんか段々小さく…狐?
狐!???
びっくりして飛び起きた。見間違えじゃない。狐だった。
「やっと起きたか、お前中々ヤバいやつだな」
喋った!?狐が?やっぱり転んだのだろう。傷口を触ってみた、うん。痛い。夢じゃないこれ。
「もしかして助けてくれたとか…?」
「助けた訳じゃない。こっちの事情で霊を殺してるだけだ」
霊を殺す?除霊って事で良いのかな、てかこの狐が?
「それにしても中々厄介な奴に目付けられてるなお前。それにオイラのことも見えてる。多分その内死ぬぞ。」
「そ、そうなのか?やばいじゃん俺」
やはり今の一ノ瀬は霊だったらしい。あいつが電話かけてくれて良かった。今頃俺はあの神社で殺されてたと思う。
「これからどうすればいいんだ俺?お祓いかけ行けば治るか?」
「そんなぬるいのじゃ無理だ。現に今の奴も結界から出てる。それにお前は生まれながらにして呪われてる位のの幽玄を持ってる。それがまた霊を惹き付ける。時間の問題だ」
んじゃ無理じゃん。死ぬじゃん。てか幽玄って何?呪われてんの俺?てかこいつは味方?謎すぎるんですけど。
「でだ、1つ提案がある。俺がお前を守ってやる、その代わりお前の幽玄をよこせ。」
「幽玄?ってのそんなに必要なのか?なんで皆これを狙うんだ?」
「それはいわゆる霊界の力の根源みたいなもの。幽玄が多ければ強く、少なければ弱い。頂点に立つ霊は王そのもの。思いのままに出来る。だから己の力を上げるため、霊は皆幽玄を欲しがる。人間は皆元から持っているものだ。だが稀に大量の幽玄を持った人間が生まれる。正にお前みたいにな。まぁ人間界で言う『霊感』だと思って貰っていい。」
ほーん。とりあえず俺が凄い奴ってのは分かった。あっちの世界も色々大変なんだな。
「幽玄は本来、霊同士の争いで争奪し合う。が、取られた方は死ぬと言うリスクがある。」
「大体分かった。つまりリスクが無く、且つ効率的に幽玄を集める手段は人間から幽玄を奪う。つまり殺すって事か。」
「中々察しが良いじゃないか。つまりはそういうことだ。」
やはりこの見解で合ってたようだ。
「お前は幽玄で何をしたいんだ?」
「霊の存在しない世界を作る。」
今までとは少し違った、真剣な顔に見えた。静かな街がより真剣さを引き出していた。あまり深くは詮索しないでおこう。ちょっと怖い。
「だからお前に手伝って欲しいんだ。悪霊のいない、ただ平和な世界の為に。」
こいつは良い霊なのかもしれない。また今日のような事があるのなら少しでも安全な方を選ぶのが妥当だろう。ほかの霊に殺されようがこいつに殺されようが同じだからな。
「お前に賭けてみるよ。その話載るよ」
「決まりだな。」
これから俺はどうなるんだろう。そもそもなんで死ぬ前提の話なんだ、??
がんばります