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ファンタジー好きに紹介したい、海外ファンタジー小説  作者: 荒野ヒロ


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6/7

『闇がつむぐあまたの影』カール・エドワード・ワグナー著。東京創元社

いちおう<ケイン・サーガ>というシリーズ物としてのタイトルが付けられていますが、まだⅡ作目は翻訳されていないようです(3つの長編、3つの短編が書かれてはいる──それも、30年以上前に)。

 さて、カール・E・ワグナーと言えば、その代表作は<コナン・シリーズ>でしょう。もちろん探偵ではなく、バーバリアン(蛮人)のほうです。

 シュワルツェネッガー主演の映画で知った方も多いのではないでしょうか。「英雄コナン」の物語は。


 このケイン・サーガに登場する主人公ケインも、また見た目からして屈強な、とてつもない強さを持つ戦士として書かれています。

「本格ヒロイック・ファンタシー」と帯に書かれた本作。

 この作品ではないでしょうが、なんとワグナーが16歳のときにはケインを主人公にした物語を書いていたそうです。


 この小説をお勧めする理由。

 それは主人公を中心としたある意味「できすぎた」物語が展開されるからとも言えます。──ただここで言う「ご都合」とは、あくまで主人公の出生が大きな物語の中核に存在しているせいです。

 しかしそうした背景がありつつも、やはりこの物語は「本格派ファンタジー」だと言えるでしょう。


 カバー裏にある主人公の紹介文には、「世界を放浪する謎の剣士」とだけあります。

 このケインという人物は、はっきり言って悪人として存在し、(おそらくケインという名前は、聖書のカインから取られた。「自分の異端に反対した弟を殺し」という一文がある)なおかつ物語の中で、この名前を持つ二世紀前の海賊王<赤いケイン>に酷似した外見をしているとも書かれている──


 この主人公を招いた(皇帝の元後妻)魔女エフレルという存在によって、彼は魔女の復讐に手を貸すことになり、物語が動いていきます。


 物語の第二部では、このケインという男の壮大な出生の秘密が明らかになり、皇帝やそのおいレイジスなどの狂った関係なども物語を彩りながら、破滅的な物語が展開されます。




 圧倒的な主人公の存在感と、その物語を描く文章表現にも注目してほしい。

 これこそ異世界を舞台とする、格式ある格式ある文章!

 わたしはそう訴えたい。

 格調のあるファンタジー特有の文体は、異世界を表現するのに必要なものだということ。

(漢語的表現がやや多めで、必要以上に難しいと感じる向きもありますが)


 ハードな内容の物語(特にラストの怒濤どとうの展開が秀逸!)。

 危険な主人公が活躍する物語を読みたい人にはお勧めの一冊。

 ダークでリアルなファンタジーの雰囲気。

 戦いと魔術と神々の物語。その世界にどっぷりはまりたい人に。

ラブクラフトとの接点もあり、クトゥルフ神話の世界観との関連もあるワグナーの作品。この作品にもクトゥルフ神話の怪物を思わせる存在が登場します。

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