<エルリック・サーガ>『メルニボネの皇子』マイクル・ムアコック著。早川書房
ゲームなどの世界観にも影響を与えた作品の一つ。
まずは読んでみよう。
ファンタジー小説好きな人なら耳にしたことくらいはあるでしょう。「エルリック・サーガ」シリーズのことは。
(マイクル・ムアコックの作品は他作品とつながりのある世界観があり、たがいの物語の主人公たちが出会う「スターシステム」と呼ばれるようなものを採用したりしています)
プロローグにおいて、この物語の中で主人公が果たす行為について書かれており、それがなんとも危険な主人公であると思わせる書き出し。
本来は病弱で知的な人物であるエルリックを主人公にした物語。
その第一巻である『メルニボネの皇子』では、白子の皇子エルリックと従弟のイイルクーンの確執が書かれ、エルリックは裏切りによって死にかけるが、その才覚で生き残る。
この二人を中心とした話からはじまり、物語の中ではエルリックを手助けする混沌の神アリオッチや、海の王ストラーシァなどが登場する。
物語の後半でラッキールと出会ったエルリックは、魔剣「ストームブリンガー」と「モーンブレイド」の探索に向かい……
強大な力を秘める魔剣によって生かされ、それゆえに呪われた宿命に身を投じるエルリックの壮大な物語。
この作品に登場するキャラクターはどれも魅力的に、リアルに書かれています。
魔法や神々といった存在なども独特な雰囲気をもつよう構成され、ファンタジーの世界観を盛り上げます。
不明瞭な魔法のありようや、上位存在の「法」と「混沌」の神など、その後のファンタジーな世界観をもつ作品に大きな影響を与えた作品でもあります。
ハイファンタジーが好きな人なら必読と言える作品ではないでしょうか。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
全部で8巻。
①『メルニボネの皇子』
②『この世の彼方の海』
③『白き狼の宿命』
④『暁の女王マイシェラ』
⑤『黒き剣の呪い』
⑥『ストームブリンガー』
⑦『真珠の砦』
⑧『薔薇の復讐』
ちなみに挿し絵はあの天野喜孝さん。──そう、ファイナルファンタジーのイラストを担当している人です。
アリオッチとは「Arioch」のことで、復讐のデーモンとされています。
マイクル・ムアコックはこのほかにも多数の作品を書いています。中でもエルリックの物語ともリンクする『エレコーゼ・サーガ』、『紅衣の公子コルム』などもあります。
雰囲気の違うファンタジー作品を求めるなら『グローリアーナ』もおすすめします。