<ハロルド・シェイ>『神々の角笛』L・S・ディ・キャンプ&F・プラット著。早川書房
ファンタジー作品には珍しい、2名の作家の共著作品。
その第一巻を簡単に紹介します。
まず最初に<ハロルド・シェイ>シリーズを紹介するのは、この作品が1940年にアメリカのファンタジー専門誌に載っていたという理由から。そしてその内容が、いわゆる「転移物」だからという理由が大きい。
──わたしが知る限りでは一番古い「地球人が異世界に転移する」という発想が盛り込まれた物語。
しかし、このハロルド・シェイを主人公にした物語は、転移したからといって、現代知識でちやほやされたりしない。
むしろ彼は冴えない外見の、頼りない心理学者にすぎず、異世界でも軽んじられる存在。──もちろん主人公としての見せ場がないわけではありませんが。
しかもハロルド・シェイが転移して来た世界は北欧神話の世界。オーディンやトールといった神々の存在する、戦いのある世界なのです。
そこではただの人間にすぎない彼は、むしろバカにされ、見くびられることのほうが多いくらいです。野菜(かぶら)を食べたがったことから「かぶらのハラルド(こちらではそう発音される)」などと呼ばれたり……
けれど彼は魔法使いとしてトールと行動を共にしたり、物語の展開を見守る存在としての役目を果たしていきます。
最後に彼がどうなるのか……
それは読んでのお楽しみ。
文章的にもそれほど難しい表現はなく、比較的読みやすく、想像しやすい内容で、会話文も多く、コメディっぽい部分もあります。海外の本格的なファンタジー小説にしては気軽に読める内容と言えるでしょう。
神話の世界に飛び込んだ軟弱な主人公のありよう。北欧神話を題材とした一風変わったファンタジーとしておすすめします。
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全4巻。
①『神々の角笛』
②『妖精郷の騎士』
③『鋼鉄城の勇士』
④『英雄たちの帰還』
読んでくれてありがとうございます。
日本のラノベやネット小説しか読んだことのない人は、ぜひ海外作品のリアリティのある作品に触れてほしい。
想像力をもってファンタジー小説を読まないと、その作品の本当の魅力はわからないものです。
世界観に引き込まれるファンタジー。それこそ本物のファンタジー小説です。