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しあわせのたまてばこ  作者: 月美てる猫
9/9

第一節 かずみが小学一年生になるまで ~もうすぐ一年生 その9

演劇の舞台は陸から海へと変わり、浦島太郎や「戦隊ヒーロー達」が登場する。劇は無事に成功するだろうか。


*投稿後の改稿は主に「禁則処理」によるもので、

 内容は変わっていません。


*このお話しは連載中の「しあわせのたぬき」  

 https://ncode.syosetu.com/n8347hk/

 シリーズもの別編です。


第一節 かずみが小学一年生になるまで


もうすぐ一年生 その9



 黒子の保育士さんに促され、かずみは他の魚たちと一緒に園長先生に追われながら外へと出た。

 何故かずみがそこで立ち止まっていたのかはかずみ本人にもタヌキ達にも、そのおじいさん自身にもわからなかった。一番前に坐っているおじいさんからタヌキ達が霊的な何かを感じることはなかった。ただ何となく「気になる」お互いが見つめ合っただけだろうか。


 園長先生が舞台前の真ん中に立ち、舞台へ振り返って舞台を見上げ、ロビンに、

「はっはっは、ロビンよここまでこれるか」と、叫ぶ。

 すると横の方から、農業フォークを持ってシーツを肩から袈裟がけにまとい、太いベルトをした神話コスチュームの健司がネプチューン役で出てきて、

「悪い魔法使いめ、勝負だ」といい、農業フォークを突きだす。

「はっはっは、ここまでおいで」そう言って園長先生が外へ出て行く。健司は、

「ロビン、海へ来てください。一緒に戦いましょう」と言い、哲也は

「僕カナヅチなんだ」と言い、灯台人間が、

「満月の夜になったら泳げるようになるかも」

 と、言って、舞台が暗くなる。


 舞台は夜の砂浜になる。子供達が舞台の端の方で騒いでいる。ハリコでくるまれたカメ役の航大が子供達に棒でたたかれている。ロビンの哲也が近寄り、

「カメをいじめちゃだめだよ」と言い、観客席の方を向いて、

「いじめはよくありませんよね」と言うと、観客席から拍手がわきあがった。

 カメの航大が、

「ロビンさんお待ちしていました。僕の背中に乗って」というと、腹這いの航大に哲也がまたがる。航大は四輪キャスターに乗っていて、キャスターをロープで先生が舞台の向こう側から引くと、カメに乗ったロビンが「海面を泳ぐ」ような様相になる。会場から拍手が起きる。


 場面が変わって海中の竜宮城をイメージさせるタペストリー、その前にヒラメのかずみが立っている。カメが、

「ロビンフッドを連れてきました」と言い、かずみが、

「カメを助けた優しい人ですってね」と言い、手招きをする。


 場面が変わって竜宮城の前。黒子の先生がヒラメの衣裳を剥ぐと、ヒラメは乙姫様になった。会場がどよめき、拍手がわいた。かたずをのんで舞台そでからはるかやタヌキ達が見守る。


「ここは安全な場所です。ゆっくりお休みください」そうかずみが言うが、場内が暗くなり、


「はっはっはっは、安全な場所だと、竜宮城などこなごなにぶっ壊してやる」と、魔物に扮した園長先生がやってくる。ロビンが

「出たなかいぶつ、これでもくらえ」と弓矢を撃つ動作をする。効果音の「カキィン」という音がして、

「なんだそんなもの、痛くもかゆくもない」

 舞台そでからクジラ、マンボウ、伊勢海老、ヒトデ、ネプチューンの健司がやってきて、健司が農業フォークで園長先生を軽く突っ突いたつもりだったようだが、

「お痛たたっ!」と園長先生は本当に痛がりながら、

「なんだそんなもの、痛くもかゆくもない」と同じセリフを吐く。カメの航大が立ち上がり、「よしみんなで変身だ」と叫ぶと、組体操が始まる。室内用のジャングルジムを土台にしてカメを先頭に真ん中にクジラ、その上に伊勢海老、マンボウが両脇について、マンボウがヒトデを肩車する。崩れないよう、黒子の先生がサポートする。

「シャキーン、シャキーン」と効果音を響かせながら、パーツの工作物と「安全ベルト」を黒子が装着していくと、それらしきロボットのようなものになる。先生が誘導してゆっくりと回転して観客に全体像を見せると、拍手がわく。健司が、


「海鮮戦隊うみレンジャー、必殺、ヒトデビーム」


 と叫ぶとヒトデのお面がチカチカと光り、テグスで釣り上げられて園長先生のカツラが高く飛んで、頭がライトでピカッと光る。園長先生が「やられたー」と倒れ込む。戦隊のフォームが解かれて、カメの航大が、

「悪い魔法使いめ、こうさんするか」と問う。園長先生は、「ふっふっふ」と不敵な笑い声を上げて、

「こいつがどうなってもいいのか」と、舞台そでから出てきた灯台人間を指さす。「王子様を魔法で灯台人間に変えたのさ」、灯台人間のひかるちゃんは、

「みんな、こいつをやっつけて」と言う。

「おっと、俺様をやっつけたら王子様はずっと灯台のままだぞう」と言うが、黒子が持ってきたハンマーを手に、黒子が用意した踏み台に乗って哲也が園長先生の頭をポンと叩く。カメの航大が体当たりする。ネプチューンの健司が農業フォークで突っつこうとしたところで、

「ちょっと待て、わかった、こうさんだ。灯台人間は乙姫様がキスをしたら元の王子になる。それではみなさんさようなら」

 そう言って、園長先生は観客席へおじぎをし、手を振りながら舞台そでへ戻る。拍手が沸く。

 場面が変わって竜宮城内をイメージしたセットに変わる。


 かずみが出てきて、

「みなさん竜宮城へようこそ。どうぞゆっくりとおくつろぎください」

 おくつろぎくださいが言えず何度も練習していたかずみだが、噛まずに言えた。はるかがほっとして笑顔になった。かずみがチラリと舞台そでの母を見た。


 ロビンが、

「乙姫様、王子様が灯台人間にされちゃったんだ。なおしてあげて」そういうと、乙姫様のかずみは、

「わかりました」と言って、灯台人間のひかるちゃんのハリコのほっぺにキスをすると、舞台が暗くなってまた明るくなったとき、灯台人間は王子様の衣裳に変わった。観客席から拍手が沸いた。


 舞台は宴会の様子となり、テーブルの中央にはかずみとひかるちゃん、そのわきに哲也、航大、健司、クジラ、マンボウ、伊勢海老、ヒトデが座る。舞台では魚のお面をかぶった園児達のフラダンスが始まった。


 舞台が暗くなって、

「宴会は何日も何か月も何年も続きました。ロビンフッドはこんな姿に変わりました」とナレーションが入る。そして薄明るくなり、哲也が居た席にスポットライトが当てられ、そこには太郎が居る。ロビンフッドの哲也は「漁民風のロビン」に変わった。


 太郎が、

「もうそろそろうちに帰りたいんですけど」と言うと、王子様のひかるちゃんが、

「わたしは乙姫様と結婚してここに残ります」と言い、


「王子は竜宮城に残り、王子が王様からもらうことになっていたお城をロビンフッドに譲ると言い出しました」

 とナレーションが入る。更に、


「ロビンフッドは浦島太郎と名乗ることとなり、陸へ戻って王様のあとをついで城主となることになりました。別れの日」


 場内が暗くなり、また明るくなる。竜宮城入口前で乙姫様が太郎を見送る。かずみが、

「これをおみやげに」と、風呂敷の「たまてばこ」を渡しながら、

「この箱はけっしてあけてはいけません」と言う。


「でもね、おみやげなのにあけちゃいけないのかなあ」

 と台本に無いことを言う。


 複雑な表情をしながらかずみはもう一度、

「この箱はけっしてあけてはいけません」

 と言い、太郎は、不承不承「はい」と言う。


 王子様が、

「国王には手紙を送っておきました。うーんと、いい王様になってくださいね」と言う。

 ひかるは最後の長いセリフをうまく言えて喜んでいる。


 太郎は、

「うーん、でもね、本当に王様になってもいいのかなあ」

 と、また台本にないことを言う。すかさずナレーションが入る。


「こうして、太郎は竜宮城をあとにして、陸に戻ります」と言い、黒子にうながされて太郎はカメの航大にまたがり、乙姫と王子に見送られながらロープに引かれて舞台そでへ行く。


 次の幕で、陸地をイメージした景色になり、カメから降りた太郎があたりを見渡す。

「すっかり景色が変わっている。ぼくのうちはどこ?」

 と言う。代官役の子がやってきて、

「あなたは誰ですか」と問う。

「浦島太郎」と言うと、

「浦島太郎はこんな顔をしています」と、先生が描いた似顔絵を見せる。ナレーションが入り、


「王子様から何十年も前に来た手紙を代官は太郎に見せました」


 途方に暮れる姿はそれなりに郷愁が漂い、いい味を出している。代官はいなくなり、浜辺にひとりしゃがみこんで、太郎は玉手箱のつつみを解き、箱を開けると、ドライアイスの煙があたりに漂い、練習した通り、中に入っていたヒゲを取り出し手鏡を取り出して、


「おじいちゃんになっちゃった」

 と、観客席を見る。

 笑い声と拍手がわく。


 ナレーションが入り、

「それから太郎はお城へ入り、王様になってあたりを平和におさめました」


 舞台は城内のイメージになり、代官役の子がやってきて、玉座に坐る太郎に冠をかぶせる。そして太郎が、「これでめでたしめでたし」と言って幕になり、皆が集合して挨拶をするはずであったが、


「みんな、僕、やっばり王様は園長先生がいいと思います」と、言い出す。


 舞台裏であんぐりと口を開けている先生とはるか。シーンと静まり返る場内。


「だって悪いやつになったり、みんなに悪口言われたりしてかわいそうだよ」


 一番前に坐っていたおじいさんが立ち上がって拍手をする。


 すると、つられて場内のみんなが拍手をした。


 慌てる舞台裏。園長先生がやってきて、あわてて王様の衣裳を着て、舞台に入ると、玉座の太郎は立ち上がり、席を園長先生に譲る。園長先生が玉座に坐ると、太郎は冠を園長先生にかぶせる。

 先生たちの手まねきでオールキャストが舞台に立ち、予定されていた全員でのご挨拶となる。両脇の先生がクスダマの紐を引き、クスダマが割れるとさらに盛大な拍手になった。


 舞台脇ではタヌキ達がベロベロに涙している。体育館を取り囲むように見守っていた鳥やリスや大ダヌキが感激の涙を流している。

 舞台脇から観客席の様子をはるかが見ると、崇と築島が涙をハンカチで押さえている。そして、「和政さんも・・・」和政も目をハンカチでぬぐっていた。


 和政が家族を失ったのは3年ほど前、息子の学芸会前日のことだった。


 学芸会が終って三々五々、父母らが退席をし、多くは子供らと一緒に帰宅をしていく。観劇かたがた警備をしていた精霊達も徐々に姿を消す。クマさん編集局くまちゃんと犬のわんこちゃんはキグルミのフリをして舞台裏からちらちらと観劇をしていた。崇と築島の様子をじっと見つめ、密かに敷地内から抜け出していく。


 崇が築島との別れ際、

「築島さん、孫娘のはるかの協力をしてやって頂けませんか。あなたの理念に沿わない場合は無理にとは申しません」

 築島は、

「こちらこそお願いします。ただ、そちらの社内でもめごとになるようでしたらこちらから無理なお願いはしませんので」

「正直申しまして、社内での理解、賛同を得られない場合はあり得ます。以前からのいきさつもございますから。ただ、はるかがあなた方と一緒に仕事をしたいと考えていることについては社内での調整を私なりに努力します。何卒よろしくお願い申し上げます」

 と、崇は深々と頭を下げた。


 はるかは舞台そでや屋外のテントで先生たちの跡片づけを手伝っていた。母親たちが次々にねぎらいの言葉をかけてくる。ゴザとパイプいすを片付けるのを手伝おうとはるかが体育館に入ると、一番前に坐っていたおじいさんと目が合い、お互いに会釈をする。

「すばらしい会でしたね」

「はい、そうですね」と、どこかで会ったことがあるだろうか、と考えながら、その優しいまなざしを見て、もう一度お互いにおじぎをする。

「さっきね、浦島太郎君と乙姫様にもとてもいい劇だったよって言ってきたんですよ。いやあ、今日は楽しかったなあ、それでは」

 おじいさんは鼻歌を歌いながら体育館を出て行く。

 

 おじいさんを見送りながらふと、和政が早足で動き回る姿を見る。出演していた子供に名刺を渡している。

「とてもいい演技でした。私はこういう者です」

 よほど今回の演劇が気に入ったのだろうか、と、和政の様子がほほえましく思えた。


「あの・・・、乙姫様のお母さん」


 声をかけてきたのは太郎君のお母さんだった。

「このたびは息子が大変ご迷惑をおかけして」

「あの、なにか?」

「台本に無いセリフをいろいろと・・・」

 太郎君のお母さんは太郎を連れてほうぼうの先生、母親に頭を下げて歩いていたようだ。みんなで決めたシナリオを無視したことはルール違反であり詫びや反省の余地はあるかもしれないが、ストーリーはつながっていたし、おそらく誰も気に留めたり責めたりはしないだろうと、はるかは思っていた。

「大変いい会になりました。観客の皆さんそう思っていると思いますよ」

「そう言っていただけますと救われます。ありがとうございます」

 太郎が、

「おばさん、ごめんなさい」

 と、やや涙目で頭を下げる。そこへ、

「いやいや、太郎君、私を王様にしてくれてありがとう」

 園長先生がやってきてしゃがみこんで太郎君に声をかけた。

「僕ね、悪い魔法使いもいい人になれると思うんだ」

「ああ、その通り、太郎君の言うとおりだよ」

 園長先生は立ち上がり、

「お母さん、私の記憶に残る最高の舞台でしたよ。いやあ、太郎君もロビン君も乙姫様も魚も動物も兵隊も村民もみんなよくやった、感謝、感謝ですよ」

 太郎の母親が、

「園長先生、ありがとうございます」

 とおじぎをする。うんうんとうなずきながら、園長先生は園舎へと引き上げていく。

「それではこれで」と太郎の母親と太郎は幼稚園を出て行く。


 片づけもおおかた終わって、台本作りを一緒にし、ナレーションを担当した若い先生がかずみと一緒にやってきた。かずみは衣裳を脱いで私服に着替えている。先生ははるかに「どうもありがとうございました」

と、礼を言い、

「ここは私達で片づけますから、かずみちゃんとお母さんは、もうおうちの方へ」と言い、そして、

「さきほど『ひより工房』の方からお誘いがあって、もしよろしかったらサクラの植樹会にご一緒いただけませんか、って言われたんです。かずみちゃんのお母さんにもって、チラシをもらったんです」

 と、手に持っていたチラシを一枚渡される。この先生は名前をさゆりと言った。植樹会の会場で託児を任せられる人を探している、とのことで引き受けることにしたという。かずみが、

「木を植えるの?私も行きたい」

 珍しくかずみが自己主張をする。植樹会の日は自分も休日なのでかずみを伴って行こうと思った。さゆり先生が一緒なら自分も嬉しいがかずみも楽しいだろう。野生動物の保護や植樹、それに工芸品の製造販売と、幅広い活動をしている彼らと交流する機会でもある。さゆり先生と待ち合わせ場所などを確認し、

「先生さようなら」

 と、かずみが挨拶をして、はるかとかずみは手をつないで体育館の外に出る。


「かずみちゃんのお母さん、さよなら」

 ロビンフッド役の哲也君が手を振っている。まだロビンの衣裳を着ている。なかなかの名演技だった。

 元々女の子に人気がある彼だが、


「かずみ、ロビンの哲也君、かっこよかったね」

「ううん、でもちょっと・・・」

「ちょっと・・・苦手?」

「うん、ニガテ」


「あら、そう、ネプチューンの健司くんは?強くて優しそうな子だよね」

「ううん、そうかなあ、園長先生を刺してたよ」

「そうか、園長先生痛そうだったね」

「うん、痛そうだった」


「カメのあの子、サッカーのケガはよくなったのかな」

「航大くんでしょ?ずっと床で寝てカメの練習してた」

「一生けん命カメさんになりきっていたよね」

「でもちょっとニガテ」


「そう、太郎くんは?おもしろいよね、でもやっぱりニガテかな」

「うん、よくわからない。いつも幼稚園でおかしなことする子」

「あら、そうなの。今日は台本にないこと言っていたけど園長先生がほめてたよ」

「でもよくわからない」

 太郎はどうやら「トラブルメーカー」のようだ。先生たちも舞台そででこぼしていた。個性的で一種独特の雰囲気を持つ。


「じゃあ、ひかるちゃんは?」

「ひかるちゃん好き」

「そう」

 そう言ってつないだ手をブンブンと振りながら二人で笑う。


「はるかさん」

 息をはずませ、後ろから和政が追いかけてきた。

「ロビンの彼、もう先に行きましたか?」

「あ、ちょっと前に手を振って」

「そうですか、よし」

 そう言って早歩きで進みながら振り返って、「それじゃあまた」と手をあげ、

 ロビンの哲也君を追っていったようだ。


 和政は演劇に出演した主だった子に名刺を渡していたようだ。この学芸会に参加して何か考えが浮かんだのだ。つまり、将来の社会を支える、というより、将来の「会社」を支える若手の育成である。幼少の頃から「ビジネスの基本」や建築士や宅地建物取引士の資格取得に必要な知識を学ばせようという考えだ。実際、この学芸会に参加した園児のうちの6名は一旦は彼の部下となる。そのうち、ひとりは破門となり、ひとりは自主的に会派から抜けるのだが。


 学芸会は無事に終わった。タヌキ達はほっとし、そしてかずみの成長を喜んでいた。多少の人為的なトラブルはあったが観客は喜び、感動をし、会場の誰一人として嫌悪感を抱いた者はいないと確信した。霊力は使わなかった。恣意的に誘導的に魔力を使って会を成功へ導こうなどという無粋を思いつく者はなく、魔力で会を台無しにしようという悪意などもなかった。ただし、霊力を使った者がただひとりいた。一番前に坐っていた老人の姿をした者だ。クマさん編集局くまちゃんと、イヌのわんこちゃんが舞台裏へ潜入したのを見て、普通の人間ならば「キグルミ」に見えるよう会場全体に術をかけて二人の行動を安堵させていた。彼の正体はタヌキ達にも築島や崇にも誰にもわからない。彼は人間的な行動を心掛け、一番前の席に陣取り、会を盛り上げて会を成功に導いてくれた。崇も築島一族も大人の行動を心掛けていた。 

 事件事故めいたことは何も起きず、平和で楽しく、人々の想い出になるであろう一日となった。


 ただ、何かしらの不安が頭をよぎる。かずみの運命を左右する「魔力を秘めた男の子」が誰なのかがわかった。そのことをはるかに伝えるかどうか。はるかには酷すぎはしないか。

 ただタヌキ達は思う。自分達が警戒の姿勢を見せることでいずれにしてもはるかはそのことに気が付くだろうと。ただし、かずみは自分のチカラで危機を乗り越えることができるはずだとも。




学芸会は無事に終わりました。秋から冬に向かい、幼稚園を卒業して小学校へ入学するその前に、かずみの人生を左右する出会いが訪れます。


*このお話しは連載中の「しあわせのたぬき」  

 https://ncode.syosetu.com/n8347hk/

 シリーズもの別編です。

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