「与えるダメージが半分になるけど2回攻撃ができる」の何がダメだっていうんですか!!!
「うおりやあー!」
俺はそう声を上げて羽の生えた鳥のようなモンスターに2回攻撃を仕掛けた。その鳥のようなモンスターは悲鳴をあげてその場に倒れる。
「やっぱすげえなあ。その2回攻撃」
「だろ??」
鎧の仲間のその言葉に、俺は満足そうにそう言って鼻をこすった。
俺の仲間もそうだが、普通は1回しか攻撃ができない。なのだが俺は2回攻撃をすることができる。もちろん、それだけでは強すぎるので攻撃力が半分になるというデメリットが伴っているというわけだ。
「でも、ダメージ半分になるなら普通に攻撃した方がいいんじゃないの?」
仲間の1人の女がそう呟いた。そう、ダメージが半分になってしまうが故に与えるダメージ自体は同じなのだ。だから「意味がない」などとほざく奴もいるが、それは間違いだ。この2回攻撃だっていいところもある。
例えばクリティカル。攻撃をしているとたまにクリティカルと言って通常以上のダメージが出る。それが2回攻撃なら通常のより出やすいのだ。いいところはまだある。普通の1回攻撃ならミスをして避けられたらダメージを与えられないが、2回攻撃ならどちらかで当てればダメージは必ず入る。
まだいいところをあげたいが今のところはここまでにしよう。
「お前もこの2回攻撃のいいところがそのうち分かるさ」
「そう」
その仲間の女は赤い髪を手でふわっと持ち上げてそれだけを呟いた。職業的なものがあり、誰でもこの2回攻撃を扱える職業を選べる。のだが誰も選ぼうとはしない。選ばないのはみんな素人だからだ、と俺は思っている。
「さて、そろそろボスでも倒しに行くかな」
「そうね」
仲間が次々と立ち上がり歩き出す。それにつられて俺も歩き出した。俺の槍の力はこんなものではない。もっと見せつけてやらねば..などと考えながら俺は拳を握りしめた。
歩いてると洞窟があった。外からじゃ、中は暗くて見えない。土でできたトンネルのような形で上の方を見ると土からは木や草が生い茂っている。洞窟を明かりで照らし中に入る。中は仲間が照らしているライト以外は明かりがなくただ一本道が続いているだけだった。
「なんだ?ここ」
歩いていると変な場所に出た。広い場所で真ん中には黄色い星が描かれた台座に周りに無数の松明が置いてある。メラメラと燃える複数の松明のおかげで辺りがはっきりと見えるぐらいだ。
「ククク...よく来たな」
「お前は..!?」
奥から顔が鳥で体が人間の魔物の姿が現れた。こちらをみながら不気味に笑んでいる。
「ははは、お前らごときでは私には勝てないぞ!」
「なんだと?」
そういうとその魔物は「はぁー!」という大きな声を出して両手を高く上げた。するとみるみるその魔物の体が銀色にコーティングされていく。
「この体は防御力を大幅にあげる!お前たちの攻撃は1か0しか受けないだろう!!」
「なんだと!!」
攻撃をしてもダメージを食らっている様子はない。おそらくあの魔物の言う通り、そのあまりにも高い防御力で、ダメージはほぼ0で、もし攻撃が当たっても1ダメージほどだろう。
「ははは、俺に任せろ!」
俺は勢いよく攻撃を2回を行う。1回目はミスとなったが、2回目は1ダメージ!と大きく表示された。
「俺の攻撃は2回攻撃!だから攻撃を仕掛けられるんだ!」
「なんだと..!」
そう、俺の攻撃は2回攻撃。1度ミスっても2回目の攻撃でダメージを与えられるというわけだ。魔物の方も2回攻撃は想定してなかったようで少し焦りを見せている。しかも1ダメージなので攻撃力半減もデメリットとならない。
「チッ、これまた厄介な...!」
「いいぞ!行け!!」
「てめえは厄介だな..」
魔物はこちらに向かってくる。なんというか、活躍しているという実感が湧いてきて高ぶりを抑えきれないが、それをなんとか頑張って抑えて攻撃を剣で受け止める。この戦いが終わればきっとみんなも2回攻撃の良さを解ってくれるだろう。
「今の俺って最高?」
「小賢しい真似を!!」
「こういう奴はHPを犠牲にしている!数回叩けば!!」
「グッ..!貴様あ!」
そう言いながら俺の方に向かって黒い弾を発射する。それを真っ二つに斬って魔物の方へと攻め込んでゆく。
「鋼鉄斬り」
仲間の女がそれを放つと100というダメージを出して魔物は悲鳴を上げ始め消滅した。
「いや、こういう奴に大ダメージ与える技あるから」
「...え??」
拍子抜けした。鋼鉄斬りはその説明の通りダメージが入りにくい相手に大ダメージを与える。なのでわざわざ2回攻撃でちまちま削るなんかよりも効率は良いと言える。その技の登場に、俺は出番を全て奪われた気分になった。いや気分というか完全に出番を奪われている。
「やっぱりそれ意味ないんじゃない?」
「いや、でもクリティカルも...」
「ずーっと思ってたんだが言いたくなかったが、それはこれでいいからな」
金色の腕輪を取り出してはめた。これはクリティカルが出やすくなるという腕輪でギザギザと王冠のような形に赤や青の石がはめ込まれている。
アイデンティティをことごとく潰された俺はハーッと息をついて剣を地面に投げ捨てた。そして苛立ったような声で
「もう冒険やめる!!!」
と言って洞窟の外へと歩いて行った。