第九十二話 アルグリアン王国の王都に向けて
宿に一泊した僕達は冒険者ギルドにより、今回の報酬を受け取った。その後ギルマスに会わせられそうになったが、王都に急いで向かうと話して回避した。
他に縁があった人達にも特に挨拶はせず、僕達は皆でキバン市の外にいる。
……
「さあじゃあ行こうか! ちなみに僕達のゴーレムでもゆっくり行くと数日はかかる距離だけど……ムカデ型と馬型のどっちで移動する?」
「俺はムカデ型で行きたいぞ! 流石に馬型に俺達全員は狭いだろ!」
「あーー確かにね。皆で一頭の馬に乗ると、バランスが悪いね。じゃあ目立つけどムカデ型で行こう!」
僕達は話し合ってムカデ型ゴーレムに乗り、人もいるが街道を進むことにした。
キバン市から少し離れてムカデ型ゴーレムに乗り込む。一応少しは気を使ったのだ。
……
……
街道を道なりに進むだけなので、半日たっても特に何もない。
何台かの馬車を追い越した時は警戒されたが、それだけだった。
……
……
一日目の夜になったが僕達のムカデ型ゴーレム馬車は自動運転だから、一ヶ所に留まって夜営はしなかった。
人形ゴーレムを出し人が乗っているように見せ、夜でも構わず先に進む。
街道沿いだから魔物もそこまで強くないし、この馬車には追いつけない。
何事も起きずに次の日の朝になった。
……
……
ムカデ型ゴーレム馬車は中も広くなっていて、調理も出来るので、移動しながら皆で食事もしている。
そんな快適な旅も全てが順調にとは言えず、前方で強い魔物に襲われている人の気配を感じた。
「皆も気付いた! 我先に行ってくる!」とクロウが言って先に移動を開始した。
「クロウが急いだなんて、襲われている人はヤバイんだね。僕達も少し急ごう!」
僕達は走った方が速いので、ムカデ型ゴーレム馬車をしまい移動をした。
……
急いで向かった先ではクロウが結界魔法で誰かを守っていた。
まーー守られてるのは良いとして、敵対している魔物が……
何だあの姿は……ホブゴブリンのように筋骨隆々なゴブリンだが……顔が人間だ!
イケメンとは言えないが、ある程度整った顔にちょこっとの髪の毛……感じる気配はオーガより強い。
「クロウ、その人は大丈夫? 一人しかいないけど、やられたわけではないよね!」
「大丈夫! 我が来たときにはこの小さい人が一人だけだったよ! 他にはいなかったよ!」
「で、この状況はなんなんだ?」
「我が来たときにはもう迫られてたよ! あのゴブリン人間? あれがヤバイと思って急いだよ!」
クロウも認めるヤバさかーー。強さはそこまでではないけど、不気味な感じだね。
それにクロウが助けた小さい人は、人間族で成人しているだろうけど……小さい。
女? 髪も短いし分かりにくいけど……百四十センチ程? 金髪の短髪……顔も整ってるけど……強くもありそうだけど……
「一先ずは魔物の動きを止めないとね。ソフィア、ヤマト! 動きを止めてもらってもいい? サクラはクロウの側にいてよ」
「「「了解!」」」
僕達は役割分担をした。
ソフィアはその他の魔物……普通のゴブリンを三十匹程動かないように、土の魔法で拘束した。
ゴブリン人間はヤマトが相手になる。
サクラは人間族の女に話しかけて事情を聞いている。
そして僕は、見てる!
……
ソフィアはもちろん簡単に魔物の動きを止めた。
ヤマトはゴブリン人間と話をしている。
「おい! お前は何だ! 人間か? ゴブリンか?」と黒猫が話してるなど、慣れていない者からは違和感が満載だろう。
だが相手も負けてはいない。
「おでは人間以上の存在なんだな。ホブゴブリンも超越したんだな。そうおでは魔人なんだな。おでに力をくれた人間もそう言っていたんだな」
……魔人?
こんなのが……マジで!
おっと……
魔人はもっと格好良いだろうよ……
まーー魔物と人間で魔人と言えばそうかもしれないけど……
「ほう? 俺は猫! 獣だ! 魔人が獣に勝てるかな?」
ヤマトも獣って……
文字だけなら惨敗だよ……
「おではその辺の冒険者にも負けないんだな! くらえだもん!」ゴブリン人間はそう言ってクロウを殴ろうとしたが、能力が違いすぎた。
クロウは攻撃をひらりと避け、一瞬でゴブリン人間の動きを止めた。
「ラウール! こいつはどうする? 俺は長い間生きていたがこんな奴は見たことがないぞ! ……冒険者ギルドに連れて行くか!」
「んーー、どうしようかな……んーーよくわからないけど、きっと貴重だよね…………よし! ムカデ型ゴーレム馬車牢屋バージョンも出して、王都に連れていこう」
僕の返事でゴブリン人間は話すことも防止され、取り出した牢屋に入れられた。
それでソフィアは動きを止めたゴブリンを一掃し、討伐部位以外は消し去った。
……
あとは助けた女だったが、サクラが声をかけるがまだ放心状態だった。
だから仕方がなく移動用のムカデ型ゴーレム馬車に乗せて、一緒に移動を開始した。
おそらく進んでいた方向は王都だろうから、馬車の中で事情を聞いていこう。
僕達は皆で移動を再開した。




