第九十一話 ダンジョン攻略の影響
ダンジョンから皆が一階に転移させられ、謎装置は皆の攻略階を一階と表示しているようだ。上に上がる階段も今は上れないようになっている。この混乱があり僕達はダンジョンの受付を無視できた。
更に怪しまれずに立ち去る事ができた。
……
以前泊まっていた宿が丁度空いていたため、そこへ僕達パーティーは泊まることにした。
ダンジョン最上階で疲れは癒されていたが、また違う休みがとれた僕達は、朝御飯を食べてから冒険者ギルドに来ている。
……
冒険者ギルドはまだ混乱の最中にあった。
僕達は冒険者ランクアップに必要な依頼達成をしようと思っていたが、ダンジョンの依頼はこの状況だからか真っ先に失くなっていた。
難易度が高いものは残っていたが、冒険者の列が長すぎて今日は諦めた。
……
そこでヤマトにもこの世界の雰囲気を味わってもらおうと、キバン市の外に出た。
外の魔物も増えていると言っていたので、クロウに頼んで魔物が集まっている場所まで案内してもらった。
案内された先は森を抜け、いかにも魔物が住んでいますという雰囲気の廃村? だ。
そこにコボルトが百匹は住み着いていた。
「じゃあ俺だけにやらせてくれ!」と言ってヤマトが廃村に走って行った。
小さな体だがものすごい速さでかけていく。そしてコボルトの気配がものすごい早さで消えていく。
……
「おうこの体でも十分だな! 動きも良し! 魔力も良し! 変化も十分に出来るから、他の生き物の見た目が良いときは言ってくれ!」とヤマトは疲れた様子もなく僕達に言った。
……
その後もしばらく冒険者ギルドの混乱が続いていて、僕達はキバン市の外を探索したり、プッチモ王子の耳に入らないようにファンフート王国もヤマトに見せて歩いた。
ヤマトも「ファンフートとは懐かしいな!」と言いながら昔の旅を思い出しているようだった。
……
そして僕達がダンジョンから戻って来て十日たち、ようやく冒険者ギルド内が落ち着いてきた。
僕達がダンジョンから戻り七日たったらダンジョンの二階に通じる階段が上れるようになった。一日だけ冒険者ギルドとアルグリアン王国の騎士が調査に入ったが、地形が変わっている以外は安全だと判断された。
おそらく長くダンジョンを閉めておくことの不利益を考えたのだろう。
だがこうしたからこそ今はダンジョンに行く冒険者と、冒険者ギルドに来る冒険者で別れ混乱時より空いた状態になっている。
……
「受付さん、僕達がAランク試験を受けるためには、どの依頼を達成にしたら良いかな?」と僕は冒険者プレートを渡した。
それを見た受付さんは少し考えていたが、手元にある資料を確認してから話しかけてきた。
「えーと、いくつかはあるのですが、あなた達は何処まで攻略していたの? 知ってると思うけど、ダンジョンが攻略されたのよね……どうやって本当に攻略されたかは確かめようがないけど……。だけどダンジョンが変化する前に、上階の素材が欲しいという依頼が出ていたのよ。それはどう?」受付さんがどう? と確認してきた素材を僕達は持っていた。
ちなみに十九階でとれる物だった。
「……あるのね……。あなた達の事はピップギルドマスターから少し聞いていましたけど……。何処まで攻略していましたか?」
「それはこの状況じゃあ内緒だよ。まーー大分上までは行ってきたって事で……。だから、今出ている依頼で素材や魔物の素材の納入なら大体は大丈夫だと思うよ」
僕がそう告げると受付さんは「ちょっと待ってて下さい!」と言って二階に走って行った。
……
……
そして案の定僕達は今ギルドマスターの部屋にいて、目の前にはピップギルマスが座っている。
「話しは聞いたぞテメーら! 何でも、上階の素材でも出せるみたいだな! ーーじゃあこれらの物は今納められるのか? 今日までかなりの奴らが依頼物を納めたが、これらが出てこなかった!」
ピップギルマスはテーブルに依頼票を並べた。
それらを僕が確認すると全て手に入れていた。
「ギルマス……。全て納められますよ。どうしますか? 全て出しますか?」と僕が言うと、ピップギルマスは驚いた表情をした。
「おう、本当なら頼む! 大分前からのやつもあるからな! 急かされていたんだ! で今すぐに納められるか?」
「良いけど……ここじゃあ狭いよ」
僕が狭いと言うと、ピップギルマスと共に広い解体場に移動した。
そしてマジックバッグに見せかけた鞄から取り出すように、亜空間収納から依頼物を全て並べた。
……
……
そして全ての依頼が達成された事になり、もう一度ピップギルマスとギルドマスターの部屋に戻った。
そこで手渡されたのがAランク試験を受ける資格があると証明された証明書だった。
他にも大分色々と聞き出そうとしていたが、ダンジョンが一回リセットされたことで、僕達はあえて何も答えなかった。
折角秘密に出来るから環境になったんだから……
僕達が何も答えないとわかるとピップギルマスは落胆していたが、諦めたのか無事に冒険者ギルドを出ることが出来た。
よしこれでAランク冒険者への道が開かれた。これ以上ここの貴族やギルマスと縁ができる前に移動してしまおう。
僕達はもう一泊したら王都に向かう事にした。




