表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

82/167

第八十一話 ダンジョン都市手前

「助けは必要ですか?」僕はそう馬車に向かい確認した。


……


「お願いします! 私達を助けて……」とか細い声で返事があった。



「じゃあ遠慮なく、Bランク冒険者パーティー黒猫がこの状況を変えます!」と辺りにいる人に聞こえるように叫んだ。

これで状況は確認できたろう。僕達は目で合図し走り出す……魔法を使うよりは接近戦の方がまだ実力をわかってもらえるだろう。


そんな思いを持ちながら僕達はリザードマンを……全て切り伏せた。

……今回の僕の武器は片手剣で、サクラは大鎌だった! ……クロウは手を出さなかった……



……

……


自分達が苦戦したからか、なかなか声が出なかった騎士と冒険者だが、多少時間がかかったが護衛のリーダーらしき騎士が話しかけてきた。



「……こ……この度は……ありがとう……」


んーー固い



「いえいえ、何か危なく感じたので、勝手ながら介入させていただきました。……大分お亡くなりになった人もいますが……」



「……いや……大切な方を守れたのだ……くっ! ……すまん……まだ……」


……

……


なかなか割りきれていないような騎士だが、この人間味がある方が好ましい。

だけど先に進まないから、話を進めようかな。



「僕達は先に進みますが、今何か手助けは必要ですか? ……ちなみに行き先はダンジョン都市、キバンですが……」


……

……



僕がそう言うと、少し間が空いたが馬車から声がかかった。



「ありがとう……ございます……。私はシランス・メンドリンと申します。冒険者様……助かりました……」



「シランス様! 貴女が悪いのではありません! ……このクライス……一生の不覚……すまん冒険者のお二人……助かったぞ……」



何かクライスさん? は丁寧だな。

それにシランス様? も冒険者相手に素直にお礼が言える人なんだな。



「いえ……何か危なそうだったので介入させて頂きました。……ただ間に合わず亡くなられた方には申し訳ありませんでした。」



僕達がそう言うとクライスさんもシランス様も「助けていただいてそれは……」と責め立てる事もなかった。


だからシランス様に少し話をしてみたが、シランス様は隠すことなく? 答えてくれた。


何でもダンジョン都市で領主の代官をしている、ロドリー・メンドリン子爵の長女だそうだ。

シランス様は趣味、興味に生きてしまい誰とも結婚しなかった。

父であるロドリーはそれを尊重し、次からの子に家督を継がせる予定だそうだ。


まーーそこは別にして……今回シランス様は珍しい本が隣町に入荷されたという情報を得て、護衛を引き連れ買いに出掛けたそうだ。


……それは貴族らしい行動? 取り寄せたらいいんじゃないかと思うが……。

その本を無事に購入して帰りだったそうだ。

最近魔物が多く、強くなっていたのは知っていたが、これだけの護衛がいたら大丈夫だと思っていたらしい。


しかし結果的にこのような状況になって、か弱い雰囲気が漂っていた……


それでこれからだがキバン市まではまだ安心できないと言うことで、僕達に護衛依頼を個人で出したいそうだ。



……



「んーー僕は良いと思うけど、サクラも良い? 目的地は一緒だし……」


……

……


なかなかサクラの返事が聞かれない。



「……私も良いわよ……ただ……ラウールもそれで良いの? ハルーシア市であった出来事で、ラウールが何か思い詰めているのは知っているけど……。今誰かと新たに縁が出来るのは大丈夫?」



……サクラは何か……僕の事を考えてくれていたようだ。



「大丈夫だよ。もうこれから先は無理って状況になったらサクラには話すよ。……これくらいなら大丈夫だよ」



「……そう、うんわかった。ラウールがそう言うなら反対はしないわ。」



僕のこの言葉を聞いた後は、サクラはもちろんクロウもソフィアも同意してくれた。


クロウは今は話さないし、ソフィアは姿も見えないんだけど……



……



僕達はダンジョン都市キバンに向けて進んだ。

途中で魔物に襲われても僕達が先に倒した。


夜営もあったが亡くなった護衛の代わりに僕達の誰かがカバーした。

僕達だけならクロウがいたら十分だったし、今は隠しているミスリルゴーレム馬で移動していたら、今頃はキバン市の宿に泊まっていたんだろうけどね。


……

……


そんな状況でもゆっくりと目的地に近づき、もう一日もあればキバン市に到着するとクライスさんに言われた。


……


「すまぬなラウール殿。この度は助かったぞ。大切なシランス様を危険にさらし……その後も危険な状態のまま移動をせぬばいけないところだった」



「いえいえ、これは僕達も放ってはおけなかったので……。もし貴殿方が悪い人……僕から見て悪であればここまでしませんでしたよ」



「……フム。……ラウール殿から見て我々は善か?」



「んーーそこはハッキリとは言えないけど、悪には思えませんけどね。」



「……フフフ……そうですか……」



何かこのクライスさんは僕達が見た目が子供でも対等な会話をしてくれる。

この会話から察しろ、察したらこの先はあなたは何を言う……大人な会話を久しぶりにした気がする。



うん、もうすぐダンジョン都市キバンに到着する。

僕達がここで楽しむため、冒険者ランクは一つでも上げておきたい。これは前世でも実感した……高ランク冒険者はなんだかんだ言っても良い肩書き……これは最低限手にいれておかなければ。



僕はクライスさんとの会話の余韻と、今後の僕達の行方を考えながら心地よい眠りについた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ