第七十八話 プッチモ王子対ハルーシア侯爵
……はい鬱憤が貯まっていました……
……やや反省します……
……
僕達は最前線に位置しハルーシア侯爵邸へ攻め込む準備をした。
即席の防御壁はあるが魔法的な防御はない。んーー簡単に突破出来そうなんだが?
「ラウール……一発派手に魔法で開幕の合図を頼みたい! 景気づけに派手にやって欲しいんだが?」
プッチモ王子が僕とサクラにそう言ってきた。今クロウはハルーシア侯爵邸に潜伏しているから、僕達の側にはソフィアだけがいる。
「派手にってどれくらい? 人に被害を与えるの? それとも建物? あーー証拠も確保している?」
「あーー証拠は十分確保済みだ! んーー派手にと俺が言ったが……建物? 人相手ではなくて、建物かな。ハルーシア邸でも良いし防御壁でも良いぞ! こちらの士気を上げたい!」
士気を上げるか……んーー?
相手をどんな状態にしたら士気が上がるか?
「丸裸? ねえサクラ、建物を無くしちゃうと良いかな?」
「そうね、遮蔽物が無いと相手は焦るだろうし、こちらは攻め込むのが容易になる……良いわね! ソフィアは何か良い案はある?」
……
「私はこれをされる相手は可愛そうだと思える魔法がありますが、ちょっと聞いてもらっても良いですか?」
そう言ってきた僕達に告げてきた魔法、作戦は……僕なら心が折れる! そんな作戦だった。
プッチモ王子は僕達に任せると言い、ソフィアの作戦を伝えたが、青い顔をして「うわ……」と声を出した。
やられる方は嫌だなと言いプッチモ王子から同意を得て、開幕の一発は僕達に任せられた。
……
……
正面には戦闘員と建造物。
クロウは隠れているから作戦を伝えておいた。
「じゃ!」
雰囲気で魔法の詠唱が開始された。
「「「我らの敵となるものよ恥じろ 我らは消し去る 目の前にある無機物 目の前の物質 全てが消え去り恥じらいのもと屈むが良い! ……消去……」」」
……
……
目の前のハルーシア侯爵の戦闘員がいる範囲をクロウの魔法で囲んだ後、僕達の魔法が相手に効果を発揮する。
初めにハルーシア邸が上から順に消え去っていく。
敵は消えていく壁や床に焦り建物から飛び降りる……あーー落ちて怪我をした人もいるな。
徐々に消え去っていくハルーシア邸だったが、全て無くなる……
……
次に防御壁だが、これも光に包まれた後に消え去る……
更にはクロウが包んだ範囲の地面が均等にならされ、バリアフリーな状況になった。
……
……
最後に人が装備している物……
武器が消えた……
鎧が消えた……
兜が消えた……
下に着ていた服が消えた……
老若男女関係なく、装備している物が消え去り、本来見られたくない姿の集団が目の前にいた……
……
……
「「「きゃーー!」」」
とごつい男までも可愛らしい声をだし、大事な部分を隠し屈んでしまった。
何を可愛い子ぶっているのだ!
……
ソフィアはあの時言った。
「一部分を残して消してやりましょう。誰でも無防備な姿になると、心が折れます。それも大勢の視線がある中でそんな姿になるとどうです? 更にこれだけは残してあげましょう……靴……。全裸に靴だけの集団など何と屈辱な……」
僕はそれを聞いてソフィアの考え方が、やっぱり僕達の家族だなーーと感じていた。
……
……
ここまで来ると後は簡単だった。
プッチモ王子の軍勢が全裸の集団を一気に捕縛していく。
何か秘密兵器もあったが、僕達が先に消してしまい、秘密のまま活躍の場はなかった。
ハルーシア侯爵はプッチモ王子自らが屈服させた。まーーその前に心が折られていたから、抵抗はなかったが。
僕達はハルーシア侯爵が捕まったのを見て、その場から離れた。
そして……知られたら罪になったかもしれないが……密かにガイブンを処分した。
……どうやったかは誰にもわからないだろうし、誰も発見できないだろう。
これだけは自分の手でやりたかったからやったが……後悔した……
……
……
ハルーシア侯爵の反乱未遂事件はこれで解決した。
未遂で終わったのは僕達がここで色々とやってしまって、ハルーシア侯爵が動き出す前に滅ぼしてしまったからだが……
ハルーシア侯爵の悪政で領土の治安も乱れ、不正を働く者が得をして、正直者が馬鹿をみる今の状況。これもしばらくすると改善されるだろう。
僕達はここまでやってしまったからか、ファンフート王国は一旦離れ、旅に出ようかと考えている。
ガイブンのこともあって、ファンフート王国に留まりたくない。それにプッチモ王子とも何となく顔を合わせづらい。これが後ろめたい気持ちがあると言うことなのか……
……
このあと少ししたら王都に戻る。その後に報酬などを貰い、後は僕達がいなくても何とでもなる状況まで戻るだろう。
……
「さーーサクラ、僕達は冒険者だよね? なのに今は冒険者とちょっと違う状況になっていると思うんだ。だから旅立とうよ! 今度こそ冒険者らしく生きていけるように」
「そうね、こんな貴族同士の争いは、終わってみてからも達成感がないわ! 国が良くなるのはみんなの為になるんだろうけど、私達は冒険者活動がしたいんだからね!」
「我は何処までもついていくよ!」
「私はまだ冒険者らしいラウールもサクラも見ていませんね。早く魔物相手に無双したり、生き生きとやりたいことをやる皆を見たいです」
僕達の意見は統一された。
次こそ冒険者黒猫だ!




