第七十七話 囮冒険者パーティー黒猫
僕達はクロウに伝言を任せて、プッチモ王子から囮捜査をする許可を得た。
プッチモ王子ももう少しハルーシア侯爵の不正の証拠が欲しいと、連携することになった。
今でも罰する事は出来るが、この程度では罰金で終わりそうだと言う。
ハルーシア市は多数の人が様々な所から集まり、組織で犯罪を犯している雰囲気をプッチモ王子も感じている。戦争や大規模な魔物の進行がない今……今のうちに国内の安定を図りたいそうだ。
そのためには侯爵家が一つ潰れても構わないと考えているそうだ。
……
……
さて、僕達はミスリルゴーレム馬に乗り、ゆっくりと市内の観光を始めた。
この移動方法は当然目立ち、商人や貴族が僕達に声をかけてくる。
中には良い商人や貴族もいたが、殆どは威圧的に……貴族の権力を使い買い取ろうとした。
まーー買い取ろうとした貴族も良い方なのだろう。ただで献上しろと言う貴族が多かった。
そんな貴族を今の僕達は放置するはずもなく、不敬罪なんて関係ないとばかりに……まあ気絶程度でその辺に転がして置いた。
……
ある時は冒険者も市内で絡んでくる。冒険者ギルドでの騒動も知っているだろうに、絡んで来る奴らは悪い奴だろう。
挑発して武器を抜かせてから制圧し、こちらはホワイティアの部下に渡す。
……
市外でも集団に襲われていた。
だがミスリルゴーレム馬にも戦闘を行わせながら、恐怖を与えてホワイティアに引き渡す。
盗賊風な集団もハルーシア市近くで襲ってきたため、こちらも恐怖を植え付けて、良い集団と判断した騎士に渡す。
……
……
プッチモ王子の仕事が終わらないので、何日間か同じ行動を繰り返していた。
時々来る貴族の脅しも力業で解決しながら、捕まえた人をどんどんホワイティアや良い騎士に引き渡していった。
……
……
そしてクロウから決定的な証拠を掴んだと連絡があり、プッチモ王子からの伝言も受けた。
ハルーシア侯爵が指示をだし、違法奴隷にさせたり売買したりしている。危うく捕まりそうになる違法奴隷商を助けて見返りを得る。
自分に従わない商会を違法手段で潰す。
王家からハルーシア領土の発展の為に出されているお金を、隣国の有力貴族に横流ししている。
いずれはもっと上の立場になりたいと言う意思と、隣国との共謀の証拠をクロウが見つけたのだ……
クロウ……凄いね!
それに隣国か……今すぐ戦争などではないだろうけど、ファンフート王国の北東にあるバイアント王国……北西にはアルグリアン王国。
今回の共謀相手はバイアント王国……
僕達はまだ世界情勢までわからないが、何かハルーシア侯爵には利益があったり、バイアント王国にも思惑があるのだろうな。
だが今回は国家反逆罪……どれがこれに当たるのかはわからないけど、プッチモ王子が言うのだからそうなのだろう。
……
その後も情報がクロウから入る。
何でもいずれは王都に攻め込もうとしていた。
盗賊行為を裏で操り、徐々に自分の味方を増やしていった。
他にもあるが、これをハルーシア侯爵が主導で行えるのか?
バイアント王国が主導している予感がする。
……
まーーそれを置いておいて、僕達は僕達なりにプッチモ王子に貢献をしておく。
向かってきた者を叩き潰す。
冒険者ギルドでの諍いから五日間が経過したが、数百人は捕まえたり、失神させていた。それでも僕達は誰にも捕まらない。
……
で問題の今、五日目の夜……
ハルーシア侯爵は諦めたようだ……良い方向ではなく、悪い方向で……
ハルーシア邸とその周りに人が集まり始めた。騎士や兵士、冒険者や盗賊風な人……戦いが出来そうな人が集まっていた。
僕とプッチモ王子はクロウを通し連絡を取り合っていた。だから僕達も戦力を集め始めた。
あの時良い対応をしてくれた騎士や兵士。
冒険者ギルドはホワイティアに任せ、僕達とサーマン達にもう一組のプッチモ王子の護衛冒険者。
対立した戦闘員の数では、ハルーシア侯爵側は千人ほどの戦闘員かな。
対するプッチモ王子側は、三百人かな?
数だけで勝負が決まるわけではないが、ここで争ってハルーシア侯爵はどうするんだろう?
勝っても隣国まではここからまだ遠いし……
まーー負けたらもうハルーシア侯爵は終わりだし……
戦いに撃って出る利点は僕には理解出来ないが、何かがあるのだろう。
……
……
プッチモ王子が僕達にも来て欲しいと集合をかけた。
集まった人はホワイティアと騎士の代表者、プッチモ王子をハルーシア市まで護衛してきたメンバーがいる。
当然僕達も話し合いの席にいた。
その話し合いの中で僕達には一つお願いされた事があった。
「悪いがクロウをハルーシア侯爵が逃げないように、見張りに力を貸して欲しい。ラウールとサクラ達黒猫には苦労をかけるがどうか……逃げられると面倒だからな……」
そんなお願いだった。
まーー最近のクロウはプッチモ王子を嫌いではないし、今後の僕達の立ち位置を考えても、恩を売っておくのは良いだろう。
こうして何故か明日の夜明けから戦闘が始まることになった。
庶民は避難しお互いが戦闘の準備が出来るという不思議な戦闘が……




