第七十五話 ハルーシア市の冒険者ギルドはどうなった?
僕達にしか出来ない裏技で……いや一番偉い人を連れてくると言う正攻法で、僕達には何もおきなかった。ただ一日を無駄に過ごしただけだ。
プッチモ王子は今日もハルーシア邸で過ごし、鑑査をしている。僕達の出番はもう少しなさそうだ。
ただ今日からは襲われる危険性が高くなるから、クロウを貸して欲しいと伝言があった。
クロウも簡単に「良いよ!」と返事をしたから、姿を消した本物のクロウはプッチモ王子の肩にいるはずだ。
何かヤマトと似た雰囲気を感じるのかな?
さて昨日もソフィアは姿を消してサクラの頭に乗っていたが、今日も一緒に行動する。
すでに僕達は冒険者ギルドいて、怯えた受付に声をかけてホワイティアに取り次いでもらっている。
……
……
……
ちょっと待ち、僕達はホワイティアとギルドマスターの部屋にいた。
ナンスイの姿は見えない。
「ラウールさんサクラさん、昨日は申し訳ありませんでした。どんな謝罪をするべきかわかりませんので、何かご希望はございますか?」
んーーホワイティアが謝罪してくれたしな。
「「特にないよ!」」
と僕達は一緒に返事をした。
「ありがとうございます。せめてものお詫びに、私の友人と証明する物をお渡しします。この紋章入りのナイフを見せる事で、冒険者ギルドや一部の貴族はすぐに気づくと思います」
「んーーあっても絡まれそうだけど、ありがとう! ありがたく受けとるよ」
「いえ、こんなことでお詫びにはなりませんが、何かあったときに活用してください」
謝罪を受け入れると、ナンスイ達の処分について聞かされた。
ナンスイはもちろん冒険者ギルドのギルドマスターの役は下ろされた。ギルド員のままでいられるかは、この後の反省しだいと言う。しかしハルーシア市の冒険者ギルドは職員も冒険者も今までどうやって隠していたか不思議なほど、違法な行為をしていたようだ。
もうしばらくハルーシア市にいるから、帰りに声をかけるから送って欲しいそうだ。
もちろん僕達が連れてきたから、帰りも送るつもりだ。
そんな返事を返した後にホワイティアは僕達に忠告してくれた。
「しばらくは冒険者ギルドとしての業務が制限されるでしょう。これはラウールさん達が悪いのではありませんから、気にやまないでください。この状況を暴いてくれたと感謝しています。ですが気をつけてください」
何だろう?
冒険者ギルドはホワイティアが改善するだろうし。
「まだハッキリと……詳しくも聞き出せていませんが、このハルーシア市は冒険者ギルド以外の所もこのような状況にあるようです。昨日いたガイブンさんが所属する商人ギルド……領主と話に出されていましたが、領主だけではなく他の貴族も……。他にも兵士や騎士、複数の……いえ、組織と言った方が良いかもしれません。欲しいものは何がなんでも手にいれようとする」
はーーこんな状況にまたなるのか?
「ですからラウールさん達の強さはよーーーく理解していますが……油断しないでくださいね。今分かっているだけでも、妖精は狙われています。サクラさんの頭に乗っているでしょ今も……」
へーー分かるんだ?
「私の頭に乗ってるなんてよくわかったわね! ホワイティア……ティアは見えるの? エルフだから?」
「んんーー半分正解です。エルフでも見える人と見えない人がいますよ。私は見えると言うよりは、感じるだけですけどね」
あーーなるほど。ソフィアは魔法で姿を消しているから、それが見えるなんて変だしね。感覚か!
「おそらく私以外は気付かないと思いますけど、これも油断しないでください。それと話を続けますが、ガイブンさんは妖精を諦めていないようです。更には領主達貴族にも妖精の存在が伝わったようですから、権力にも気をつけてください。プッチモ王子と親しくとも、皆さんは準貴族ですから……」
「忠告ありがとう! だけど僕達は力で来られたら、力で返すから……結果的に善良な住民以外は壊滅するかもしれないけどね! この国にも未練はないよ。そんなに長く滞在している場所でもないし」
「……それは出来るのなら控えてほしいですね……私の知り合いにも声をかけておきます……。話を聞いただけですが、出来るのでしょうね……」
「まーね。」
「貴族が直接来なくとも、騎士や兵士が何かの罪をでっち上げる事も考えられますよ……。都民も巻き込んで来るかも知れませんので、ご注意を……」
「住民かーー。ここにはまともな人はいないの?」
「いるでしょうが、力の強い……声の大きい人が多くて、目立たないのでしょう……」
「そっか、そうだよね。今まで僕達が過ごした所でも、皆が悪人だと町として、都市として機能しないからね!」
「はい、私もそう思います……。では最後の忠告が……奴隷にされないように注意してください。不意打ちを受け、隷属の首輪、隷属の魔法を受けないように……。妖精だけではなく、お二人も十分に狙われる容姿ですからね」
おう、流石今世の僕達!
「ありがとう! じゃあ帰るときは教えてね!」
「はい。少し長くなるかもしれませんが、ギルドの長距離連絡の魔道具で、今まで滞在していた所には、連絡をしていますから。大きなギルドには便利な物もありますからね」
僕達は依頼を見ていても視線が集中することが嫌で、冒険者ギルドから出た。
あれほどホワイティアが忠告してくれたので、都市の中での活動は控えようかと考えた。




