第七十三話 ハルーシア市の冒険者ギルドギルマス
「これは何が起きているんでしょう? 私が大切なお客様と話している時に……誰か説明しなさい!」
冒険者ギルドの奥から現れたのは神経質そうな女の人だった。
……
……
受付の人をはじめ、冒険者ギルドにいる誰もが何も言葉を発することができない。
そのためかサーマンが自分の身分を明かし、先程までの出来事を説明した。
……
……
……この話を聞いたハルーシア市の冒険者ギルドギルドマスターであるナンスイ・フェアテアは目元がピクピクしている。
「説明を聞いて現状は理解しました。……しかし、他のところでCランク冒険者になった冒険者ごときが、私の冒険者ギルドをメチャクチャにするなど……」
そしてタイミングを見計らっていたのか、お客様と言われていた人物だろう……ガイブンが僕達の前に姿を現した!
おいおい……ここでお前かーー。
僕達のイライラも頂点に達するか!
「ふん! お前らかーー! ナンスイ、こいつらは妖精を持っている! だから冒険者ギルドの修繕費の代わりに、妖精を取り上げろ! こいつらも冒険者ギルドは除名になりたくないだろう。……お前らは金が欲しいんだろ!」
……はーーーー。あれを見せても金がだと! それにサーマンがナンスイには説明しただろ! 言質はとってるぞ!
「俺は口を挟むぞ! ーーこいつら黒猫を見捨てようとしたのはあの受付だ! ……もしこいつらが弱ければ、慰みものになっていたぞ? ……ハルーシア市の冒険者ギルドはどうなっているんだ? 場合によっちゃあホワイティアに言うぞ!?」
流石にトップに言われるのは避けたいのか、ナンスイは何かを言いたそうにしたが言わない。
だがそこで話し始めるのがガイブンだ。
「おいおい、契約書に記名が無かったから妖精を俺に渡さなかったろ? だったらお前が言う証拠も証拠にならないだろう?」
……ここで意趣返しかーー
はーー何もかも状況が違うのにめんどくさい!
「ねーサーマン? この冒険者ギルドの建設費と、休んだ場合の休業保証はどれくらい? あとは冒険者は一度除名になったり、やめた場合はまた復帰できる?」
ややサーマンは戸惑っている。
「冒険者ギルドは建てるまでの期間によるだろうが、建物で二億エーンか? 他には魔道具の料金も足されるだろうな。……休業保証? よくわからんが、休んだときの分の稼ぎか?…………これはわからん!」
サーマンは冒険者の立場だからわからないか……
「ナンスイギルマス? 一日冒険者ギルドを閉めたらどれくらいの利益がなくなるの?」
「……何故答えなければいけないのだ? 冒険者ごときに答える事ではない」
だろうね。
「サーマン、復帰は?」
「……同じ大陸では出来ないはずだ。除名になる場合はほとんどが犯罪者だから、復帰する状況にならないからな! だが、他の大陸で一からやり直す事は出来るはずだ…………だが早まるなよ! お前らはプッチモ王子の依頼で今は動いているんだからな!」
プッチモ王子……この名前が出ると流石にナンスイとガイブンの眉間にも皺がよった。
「あなた方はプッチモ王子様の依頼を受けているのですか? それであれば私に依頼受注証明をしなさい」
あーーめんどくさい。
だが僕達はナンスイに依頼受注証と、今回持ってきているプッチモ王子から貰った書類を渡した。
もうこれもどうなっても良いやと言う気持ちで……
だが予想外に僕達に返事がなかなか返って来ないし、書類もどうにもされない。
……
……
……
「わかりました。プッチモ王子の依頼が継続されている事を確認しました。……冒険者ギルドの破損については話し合いを継続します。しかし一方の言い分だけで決める事は出来ません。……しばしお待ちを……」
そう言うと件の受付と冒険者を連れて冒険者ギルドの奥に移動した。
何の権利があるのかガイブンと共に……
……
……
……
……
かなりの時間が経過した。
流石に僕達の興奮も収まり、サーマンと王都での出来事を振り返っていた。
あとは冒険者ギルドから出ることが出来るようにしたら、全員が冒険者ギルドから出ていった。
そうなると新たに冒険者ギルドに入ってきた、僕達に関する出来事を知らない冒険者がまた嫌な視線を僕達に向けてきた。
はーーーー早くして欲しいな。
しかし通常業務に戻った他の受付が僕達の事を話したのか、段々と視線が僕達から逸らされる。
出きるだけ僕達を見ないように、他の人が絡まないように、新たに冒険者ギルドに入ってくる冒険者には伝言ゲームのように話が伝わっているようだ。
……
……
……
……
更に待つことしばらく……サーマンは酔いつぶれそうだぞ!
サーマンも何だかんだSランクなんだな。
この状況で泥酔出来るとは……本物の強者はこんな感じなんだろうな。
はーー何時まで待てばよいのか……
流石にこの状況ではやることがなくなった。




